なんてけったいな名前! に込めた意味
京都洋酒研究所ーなんてけったいな名前! 大抵の人はそう思うだろう。
おおよそBarだなんて思えない。おそらく「京都ということは、サントリーの研究所?」くらいか(実際にサントリーさんには洋酒研究所というところがあるようだ。)
どうしてこんなけったいな名前がついたのか。今日はそのお話。
ところで、人はどうしてお酒を飲むのだろうか。
おいしいから?
酔いたいから?
楽しいから?
悲しいから?
それとも何かを忘れたいから?
どれも正解。どの気持ちも良く分かる。でもお酒ってそれだけだろうか。本能に任せて飲み、酔いどれるだけでは見逃してしまう、実はもったいないものをたくさん含有しているのだ。
例えばこんな風に、切り口を変えて考えてみてはどうだろう。私の好きなスコッチウイスキーを挙げてみよう。
ウイスキーを作る蒸溜所によってどう違うのか。
同じ蒸溜所でも蒸留年によって違いはあるのか。
蒸溜所が元詰めとなる「オフィシャル」ものと、瓶詰め業者が樽ごと買い取って自社で詰める「ボトラーズ」ものはどうか。
「ボトラーズ」各社ごとの違いはあるのか。
同一蒸溜所でも詰める樽によって違うのか。
もっと深く掘り下げてみよう。
瓶詰めされた時期による違い。
開栓する時期による違い。
加水による変化。
加水する水の温度や氷を入れることによる変化。
加えるのが水かソーダかによる違い。
入れるグラスによる違い。
加水する水やソーダの水質による違い。
一緒に合わせる食事やつまみとの相性。
挙げ出すときりがない。
また人間の味覚というものは不完全なもので、同じウイスキーでも直前の食事やその時の気分によって味わいは変化してしまう。「このウイスキー、こんな味だったっけ?」というのはよくあることだ。しかし悲しむなかれ。プロのブレンダーになるのでもなければ、それを肯定してしまおう。その時々の変化を「1瓶で何度も美味しい」と楽しんでしまおう。
このようにスコッチウイスキーだけをとっても多種多様な要素を拾い出せる。そこに目を留めると今まで気づかなかった新たな世界が広がるのだ。特に当研究所のメインである“「ボトラーズ」のシングルモルトカスクストレングス”というものは、ウイスキーを宇宙に例えると我々の住む銀河系のようなものすごく偏った立場のニッチな世界なので、今までウイスキーに抱いていたイメージがコロリと覆されるような体験をすることも多々ある。
洋酒とは、誰もが、どんな切り口であっても、何かしらのテーマをもって深く掘り下げて追求できる対象となり得るものなのだ。私が四半世紀の間、日々洋酒に対して行ってきたのはこのような作業だった。そのような作業を通じてどっぷりと洋酒の魅力にハマったのだ。
これを研究と言わず何という?
そんな洋酒の魅力の奥深さをできるだけ簡単に、最短で、皆さんにお伝えできたら。楽しさを分かち合えたら。より深い愛着を持ってもらえたら。そういう想いを “研究所” に込めたのだ。
今夜も晩酌に一杯、いきますか。
ぜひ一度、五感を研ぎ澄まして「頭で」飲んでみてほしい。
新たなお酒の世界への扉が開かれたなら、それこそ私の本望である。
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