大文字山で5月の風と京都人の優しさを感じる休日【京都移民日記】
朝7時に起きられなかった。だから大文字山に登ることにした。
5月もそろそろ終わり。梅雨前にやっておきたいことをいろいろ考えて、京都トレイルに行きたいと思っていた。
京都の周囲をぐるっと一周できるトレッキングコース、それが京都一周トレイルだ。比叡山に行ったときに少しだけこのトレッキングルートを歩いたのだが、良く整備されていてとても歩きやすく、気持ちがいいルートだった。だから晴れている間に行ってみたいと思っていた。
思っていたのだけど。昨日は仕事が遅番で12時~21時までの勤務で、一週間の疲れもあり、朝起きられなかった。7時に目覚ましをかけたけどもう全然無理だったので目覚ましを消した。
結局10時に起きて、外は青空。
だから、大文字山に行くことにした。
大文字山は通称で正式には如意ヶ嶽という。みなさんご存知の五山送り火の「大」の山である。
高さ472m。低い山ではあるが、山の良さを感じられる山だ。頂上までの上りは1時間、と書いているサイトもあるし2時間と書いてあるサイトもある。
私は休憩を一回入れて1時間で登頂した。高校の頃からときどき山に登っているから、中級者くらいだが、それくらいの時間だった。子どもたちも登るような登りやすい山である。
山に入ったとたんに涼しい風が吹いてきた。緑があるだけでだいぶ違う。
大文字山の見晴らしがいいところは2か所ある。一つは山頂、もう一つは火床だ。
山頂は大阪・奈良方面に開けている。天気が良かったらあべのハルカスとか見えるんだろうか?といいつつあべのハルカスは「高い」以上の知識がない、どんな形なんだろう?
火床はこちら。大文字山の文字をなぞって置かれている火床が集まっているところが京都市内の見晴らしのいい場所になっている(だから遠くから「大」が見える)。京都人にとっての大文字山の山頂は火床、と書いている文章を見た。
一度山頂まで行ってから火床に戻り、腰を下ろす。ぼけーっと街を眺める。すると、前に立っていたおじさんが「神聖な場所なのに…」とかぶつぶつひとりごとを言っている。地元の人からしたらそう思うよな……と思いつつちょっと距離を置くことにした。
下から登ってきた男性の登山客にそのおじさんが話しかけている。「鹿ケ谷(ししがたに)から来たんですか?」目の前で話始めたのでなんとなく聞いてみたら、おじさんは、自分は毎日登っているが観光客が多すぎて道が荒れている、と男性に話している。
実際そうなんだろうな。もともとのルートから外れた左右のルートもしっかり踏みしめられていた。低い山なのにキャパを超えている感じはする。
とはいえ、自分自身もほぼほぼ観光客みたいなものなのでちょっと緊張する。やっぱりおじさんには近づかないようにしよう。
と思っていたのに下りの道ですれ違ってしまった。しかも声をかけられた。
「鹿ケ谷の方に行くんですか?」
すれ違ったところからは銀閣寺に行くルートと鹿ケ谷に行くルートがある。私は鹿ケ谷方面を目指していたけど、「鹿ケ谷」という地名を知らなかったのであわあわしていたら「銀閣寺に行くなら自分もそちらへ行くから案内しよう」と言ってくれた。私は鹿ケ谷に行きます、と伝えたら
「鹿ケ谷の方は一か所ロープのところがあるから気を付けて」
と教えてくれた。そして別れた。
観光客が道を荒らしている、という気持ちと、目の前にいる道に迷ってそうな観光客に対しての気持ちは別なのだ。とても親切で紳士的だった。ちょっと離れておこう…とか思ってごめんおじさん、私が間違っていた。京都の人の良さをまた一つ見つけてしまった。
登山口から登って休憩して降りて4時間くらい。朝起きれなくて天気がいいのに罪悪感を感じるはずだった1日が、景色の良さとちょっとした人とのやり取りがあり楽しい1日になった。