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私の読書感想文③~『ヒロシマ 消えたかぞく』
朝から、書店で涙した。心の中でも泣いた。
『ヒロシマ消えたかぞく』(指田 和/著 鈴木 六郎/写真 ポプラ社)
今年度の小学校高学年の課題図書になっている写真絵本だ。
おかっぱ頭のかわいい女の子が、優しく笑いながら白い猫をおんぶしている表紙の写真。引き寄せられるようにページをめくる。
この表紙の女の子は公子ちゃん。お父さんの鈴木六郎さんは広島市内で理髪店を営んでいる。お母さんと、兄の英昭くん、弟の護くん、妹の昭子ちゃんの6人家族。
六郎さんは写真を撮るのが趣味。にぎやかな家族生活の何気ない1シーンを、慈愛にあふれた視線でカメラにおさめている。
ピクニックのときの、はじけるような公子ちゃんの笑顔。一生懸命勉強に取り組む、英昭くん。たらいのおふろで気持ちよさそうな、生まれたばかりの護くん。
どの写真も、ほんわかとした温かさと愛を感じる。家族の絆。無償の愛。小さな幸せ。
当時は携帯電話もゲームも何もない。でも子どもたちは、自然の中で、家庭で、大きな愛に包まれながら、本当に心豊かに、楽しく、のびのびと、幸せに暮らしていたのだ。
あの日に原子爆弾が投下されるまでは。
6人は、永遠にこの世の中から消えてしまった。平凡ながらも、明るく、楽しく、平和に生きていたのに・・・
この本は、戦争の悲惨さ、愚かさだけでなく、改めて「日々の小さな幸せ」「普通に生きられる喜び」を気づかせてくれた。現代のモノや情報の洪水に生き、少し疲れている私たちに、警鐘を鳴らす1冊だと思う。
私たちが、今、こうして命をつないでいられるのも、多くの人々の犠牲のもとで成り立っているのだと、感じずにはいられない。感謝を忘れてはならない。
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