並行在来線は詰んだのか・上
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来月北陸新幹線の金沢ー福井間が開業するのと同時にこの区間の在来線が第3セクターに移管されること、
建設中の北海道新幹線では並行在来線の扱いが未だ決まっていないこと、
佐賀県が同意しないため西九州新幹線の新鳥栖ー武雄温泉間が未だ着工できないこと、
などなど整備新幹線のカウンターパートである並行在来線という制度の是非がかつてないほど議論されている。
そこで北陸新幹線敦賀開業を控えた2月最後の土日に、一度整理しておきたいと思う。
まずものすごく古い話からすると、東海道新幹線は既に輸送力が逼迫していた東海道線のバイパスとして戦前から既に考えられた。
折角やるなら南満州鉄道の運営で得たノウハウを使って世界最強の鉄道にしようとして、結果的に当時の世界最速210km/hでの運転を実現した。また、輸送力を確保するために在来線よりも巨大な車両になった。
その後の山陽新幹線や東北新幹線の仙台までについても、輸送力増強が大きな名目だった。
しかしながら仙台ー博多コリドーから外れた地域の目は、新幹線の輸送力よりもその速さに惹かれていた。
そうした立場の代弁者である田中角栄は当時まだ返還されていなかった沖縄を除く全国津々浦々に新幹線を通すことを考えた。
沖縄に新幹線を通す発想がないのはこのため。
需要が供給を生むという従来の考え方ではなく、供給によって需要を生むという考え方をしたわけね。
そして今みたいに新幹線と引き換えにローカル線を無くせ、なんてことは考えなかったし、
車や飛行機が鉄道を代替するとも考えなかった。
ぜーんぶ造ればいい。その分だけ日本は成長していく。みんなが豊かになっていく。よっしゃよっしゃ😁
そう考えたわけね。
その考え方を反映して鉄道や道路をガシガシ造った挙句、国鉄も道路公団も行き詰まったわけだけど、
ローカル線の建設を優先したために、新幹線については仙台ー博多コリドーを除けば仙台ー盛岡間と自身の地元新潟だけしか国鉄時代に新幹線を通すことができなかった。
そして国鉄が分割民営化されると今後の新幹線整備に暗雲が立ち込め始める。
JR各社はこれ以上新幹線を造られたら困るよと言い出し始めた。
理由としては新幹線自体が儲からないというより、全国の路線は特急があってこそ成り立っているのであり、客単価の低いローカル列車だけでは在来線は成り立たないというわけ。
要するに分割民営化時の輸送密度4,000人または貨物4,000t以上の路線だけを残す(部分的な例外はあるにしても)という前提が新幹線を通すことで崩れてしまうわけね。
それとは別に運輸省(現国土交通省)としては、フランスTGVが線路の幅が同じであることを活かして在来線へ自在に乗り入れてることに触発され、国鉄時代から日本でもそれをやる研究を進めていた。
日本でそれをやろうとすれば、新幹線と在来線の幅が違うためどちらかに合わせるしかない。
そこで在来線の線路の幅を新幹線に合わせるミニ新幹線の検討が始まり、奥羽本線の福島ー山形間が嚆矢となり山形新幹線と呼ばれた。
山形新幹線は大成功でいつも激混み。山形ー新庄間も追加され、別途盛岡ー秋田間の秋田新幹線もできた。
ただし、山形新幹線の翌年にはスペインのマドリーーマラガ間で幅の異なる高速線AVEと在来線を直通する列車が登場したのだから、周回遅れ感はあった。
ミニ新幹線は工期、運休期間が長くなること、在来線のネットワークがぶっ壊れるという難点もあった。
また、前述のように新幹線は在来線より大きな車両を使うけれど、この車両では在来線には入れないので、在来線サイズの車両を開発する必要もあった。
さらにいうと通常の新幹線車両とミニ新幹線車両を連結して走る技術も求められた。
在来線サイズということはそれだけモーターを小さくしないといけないし、空気抵抗とか全然違うし、すごい技術なのよこれ。
在来線ネットワークの破壊を埋める方法としては通常のレールは2本で構成されているのに対して3本にすることで新幹線と在来線を共用させるデュアルゲージ案もあったのだけど、
メンテナンスが複雑になることや、降雪地帯では雪が詰まりやすいこともあり、部分的にしか採用されなかった。
ミニ新幹線のリスクである長期運休と在来線ネットワークの破壊を避けるべく、スペイン方式にも目をつけ、すぐにライセンスももらっている。
ただ、西九州新幹線でこれを試そうとして技術の壁にぶつかり頓挫してしまったことは記憶に新しい。
ミニ新幹線の逆パターンも構想された。
新幹線用の路盤に一旦在来線の線路を敷けば、在来線のバイパス線として一定の速達効果は出ると考えられ、こちらはスーパー特急と呼ばれた。
でも実際にスーパー特急として日の目を浴びた区間はなかった。
ミニ新幹線、スーパー特急に対して、これまで通りの新幹線はフル規格と呼ばれるようになったのだけど、どの地域もミニ新幹線やスーパー特急を拒否した。
ただ、スーパー特急との直通を企図して在来線としては高価格で建設された北越急行ほくほく線や、元々新幹線と在来線の共用として建設された青函トンネルでは、高度な規格を活かして一般的な在来線特急よりも速く走ったため、この計画の成果はゼロとはいえない。
ミニ新幹線、スーパー特急、フル規格といった手法の間で、運輸省〜国土交通省、大蔵省〜財務省、JR各社、沿線各地、政財界などで議論は揺れに揺れ、山形新幹線と秋田新幹線以外は膠着し続けた。
しかしながら1998年の長野オリンピックはそんな時間の空費を待ってくれなかった。
最初は高崎ー軽井沢間はフル規格、軽井沢ー長野間はミニ新幹線という案が考えられたけれど、結局全線フル規格にすることになり、
そこで整備新幹線の引き換えに並行在来線を分離するというアクロバットが出てくることになる。
高崎ー長野間は国が建設、保有してJR東日本に有償で貸し付ける。その代わりにJR東日本に並行在来線である信越線を手放すことを認める。
信越線を今後も走らせたいなら、沿線自治体が設立する第3セクターを別途設立しなければならない。
整備新幹線の建設と並行在来線の分離は地元自治体の同意があって初めて行なわれる、というスキームを作り上げた。
不思議なことに高崎ー横川間はJR東日本があっさり残した。
高崎の通勤圏であり、特急が無くなってもパンデミック期間を除き輸送密度が国鉄分割民営化時の存続基準である4,000人を超えていること(既にこの区間の貨物列車は無くなっていた)、上越線や両毛線と共通運用したら大した経費にならないこと、そして何よりも時間がないなかで長野県だけでなく群馬県と余計な交渉をしたくなかったのだろう。高崎を地盤とする大物政治家の影もチラつくけどね。
そして碓氷峠を越える横川ー軽井沢間の廃止は判断が正しかったかはさておき、市場原理で考えれば仕方のなかったことだろう。
さて、峠を越えた軽井沢ー長野間は特急が無くなっても沿線人口には恵まれ、かつ西上田から先は貨物列車も走り、特急がなくとも分割民営化の存続基準を大きく上回るはずなのだけど、中央西線からの特急しなのが走る篠ノ井ー長野間を除いて並行在来線として分離されることになった。
むしろこれ恵まれているが故なんだよね。
仮にこの区間が特急がなければ分割民営化の廃止基準に該当するようなら、長野県は経営分離に対して首を縦に振らなかった可能性が高い。
前例をつくりたくてやったわけね。
そしてこの急造されたスキームが東北・北海道、北陸、九州・西九州においても展開されていくことになり、そのなかで様々な矛盾が生じてきている。
まず、好摩で分岐する花輪線は新幹線になーんの関わりがないはずなのに、盛岡ー好摩間で並行在来線を通らされるために二重初乗り運賃を払わされてしまっている。これは間違いなく花輪線を衰退させている。
まあこの事例は分割民営化の時点で四国の予土線でも起きた話ではあるけれど、その後も飯山線における長野ー豊野間、七尾線における金沢ー津幡間、そして来月からは九頭竜線(越美北線)における福井ー越前花堂間もとばっちりを受けることになる。
それでもJR東日本やJR西日本は県庁所在地などのオイシイ区間を第3セクターに与えるので良心的なのかもしれない。
JR九州は沿線人口の比較的多い福岡、熊本、鹿児島近辺は露骨に残して、沿線人口的に厳しい八代ー川内間のみを経営分離するから、そこを譲受した第3セクターは極めて経営が厳しくなっている。
これを見た佐賀県、長崎県はローカル区間の経営分離に強く反対して、両県がインフラを保有してJR九州が30年間運行を続けるという今までにないかたちが取られるようになった。
さらに佐賀県は新鳥栖ー武雄温泉間については新幹線建設自体に反対しており、フリーゲージトレインが頓挫した結果、西九州新幹線はミッシングリンクになっている。
並行在来線に当たらないようにするため、久留米から佐賀空港を経由するルートを模索するなど本末転倒な状況に。
並行在来線の経営分離ということでは北陸新幹線が敦賀から新大阪へ延ばす際に湖西線を分離することを滋賀県が強硬に反対している。
新幹線は滋賀県を通らない予定なので滋賀県に大したメリットもなく、説得は相当難しい。
滋賀県は新幹線を敦賀から米原に延ばすことを画策しており、このスキームを逆手に取って抗戦するつもりなのだろう。
北海道では建設中の新函館北斗以北で、人口的にどう考えても儲からない並行在来線の受け取りを沿線自治体が拒否するという事態が起き、国やJR貨物が大慌て。
また、ドライヴァーが足りないため、バス転換もバス会社から難色を示されており、議論が棚上げになっている。
また、この動きを見て先行して分離した木古内ー五稜郭間の存廃論議も出てきた。そちらが旅客列車を放棄することが許されるならこっちだってやってられるか、というところだろう。
鹿児島県でも、もう欠損補助をしないという声が出ており、並行在来線の運営放棄ドミノが起きそうな予感。
福井県では敦賀での新幹線と在来線の乗り換えが不便であることから、大阪や名古屋からの特急を福井までは残すという動きもあったけれど、並行在来線の仕組みに潰された。
並行在来線の大事な財源である貨物調整金は総半数からの比率で決まるため、本数を増やせば増やすほど経営が悪化するという、誰も幸せにならないものが福井県民の純粋な願いを足蹴にした。
そして並行在来線の1期生にして優等生と思われていたしなの鉄道が、今のままでは設備が過大だとして単線化を示唆している。
もちろん悪い話ばかりじゃない。
例えば、積極経営かつ地域ぐるみで路線を守る意識の高いあいの風とやま鉄道は、この度JR西日本から城端線と氷見線を譲受することが決まった。
並行在来線各社の観光列車はJRのままでは生まれなかっただろう創意工夫が見られるし、特にえちごトキめき鉄道はアイディアマンの社長が次から次へとユニークな企画を打ち出している。
そうした各社の積極策と創造性には敬服するけれども、X(twitter)に跋扈している整備新幹線推進論者達が喧伝するのとは裏腹に色々とギクシャクしているのも事実であり、
元を返せば、長野オリンピックのために議論を尽くさぬままスキームを急造し、それをそれぞれ事情の違う各地に当てはめているため齟齬が出ているということになる。
このままいけば人口基盤の弱いところから徐々に路線が衰亡していく。バスのドライヴァーもいないから公共交通自体がなくなり、ライドシェアしかなくなるのかもしれない。
あるいは新幹線ネットワークが思うように拡がらず、日本全体が壊死していく。
この悪循環をどこかで止めれる方法はないのか。
明日はそれを考えていきたい。
それじゃあバイバイなまらステ💚💚💙❤️厚沢部煮切でしたっ✨
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