『あちらにいる鬼』井上荒野
瀬戸内寂聴の不倫相手の娘が書く、父と母と愛人。
瀬戸内寂聴さんが亡くなり、新聞で井上荒野さんの文章を読んだ。この追悼文によると、寂聴さんと彼女の父親が不倫をしていたらしい。さらに、そのことを題材にした小説を荒野さんは書いているらしい。一体どんな物語なのだろう。
話は、男の妻と愛人の両方の視点で交互に語られる。男女の仲になるきっかけ、男が語る嘘の数々、また別の女。
妻も愛人も、その後成長し小説家として記した娘も含め、存分に生きていて「女ってすごい」と思う一冊。厄介としか言えないどうしようもない男に巻き込まれてしまったら、壊れてしまう女性もいるのに、彼女たちは全員飲み込んだ。つよい。
『あちらにいる鬼』井上荒野