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『そして誰もゆとらなくなった』 朝井リョウ
『桐島、部活やめるってよ』で新人賞を受賞、現在、日本経済新聞でも小説を連載している朝井リョウ。彼のエッセイやラジオが本当にくだらなくて、私は大好きだ。
『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』に続くエッセイの三作目。今回はウンコの話が多い。朝井さんは大変にお腹が弱い。(整腸剤メーカーがスポンサーになって、腹よわの星野源氏と対談などをしてほしい)私も幼少期から頻尿でトイレの場所を視界の片隅でいつもチェックしているが、朝井さんのそれは並外れている。人の糞便の話なんぞ普通なら聞きたくないが、朝井さんの手にかかるとスリリングな悲喜劇になる。
トイレ関連のほか、朝井さんが大好きな余興の話(結婚式や祝い事で仲間と共に全力で準備や練習をして本番に臨む。そして本番では思わぬ失敗をする)や、「やっておいたほうが良いとされること」をクリアするために、本心ではやりたくないことをしてひどい目にあう話、甘いものへのただならぬ想いなどが、見事な文章で書き綴られている。基本的に読まなくても人生に差し支えはない内容で、ただ、面白いだけ。ブフゥ、クスクスと声を出し、私は人様に見せたくない姿でこの本を読んだ。幸せだった。悩みごとがある人も、この本を読んでいる間は少しは自由になれるのでは。
朝井さんは「ただただ楽しい気持ちだけを受け取る」さくらももこさんのエッセイが大好きで、頭をからっぽにできるエッセイ集を書きたかったのだそう。その目的は達成されている。朝井さん、アンタさくらさんの後継者だよ、と思う。さくらさんと朝井さんによるくだらない話の往復書簡とか、読みたかったなァ。
『そして誰もゆとらなくなった』朝井リョウ