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我が悲願は紛うことなく成就するなりけり(Xiomi Mi Band 5入手)

 私は力強く宣言する。
「我が悲願は紛うことなく成就するなりけり。」と。

 私の働いている会社では社員の誕生日を祝うという福利厚生がある。年始に誕生日ペアの決まり、相手の誕生日には紹介文やお祝いメッセージを作成し、総務が全社に一斉メールを流す。そして五千円を上限とした予算で誕生日プレゼントを用意する。
 私の誕生日は来月。だって乙女座なんだもん。しかし、もう誕生日プレゼントを手にした。本来なら相手に用意してもらうべきものなのに、お盆休み中に自ら勝手に注文した。
 故に、「もう既に自分で用意したので誕生日プレゼントを買ったのでお構いなく」と誕生日ペアの方にSlackにて報告するのが、休み明け最初の仕事であり、次の仕事は会社の明朗な経理に貢献すべく、領収書を手に立替経費申請をすることなのであった。

 なぜ、己が誕生日まで待てなかったのか。
 限界と思われていた線を突破したからである、体重の。全てがコロナのせいであることは否定し難いが、絶対に超えたくない線であった。
 私は日頃からダイエットへの意識は高い。常日頃からコカ・コーラスダイエットを毎日のように実践してきた。
 コカ・コーラダイエットとは何か。あえて今日コカ・コーラを飲むことにより、罪悪感を己に芽生えさせ、その反動力にて明日から過酷なダイエットに邁進するという精神的な負荷の高いダイエットだ。
 私はこのコカ・コーラダイエットを毎日のように実践した。しかるに、体重は常に右肩上がり。成長著しい新進気鋭さは、未だ我が腹部に宿っているのか。
 我がコカ・コーラダイエットの破綻は明らかであった。従って、毎日体重計に乗り、己が体重をスマホに記録し始めた。
 記録は楽しい。記録の幅は広がり、マシュマロ女子のごとき数値を叩き出している体脂肪も記録する。自動的に歩数もカウントしてくれる。
 この日々の記録をさらに突き詰めたい。スマートウォッチだ。スマートウォッチにてリアルタイムで我が身体の状態を知り、そのフィードバックを元にみるみるうちに肉体改造。ミスターマッスルの名を欲しいままにして、上半身裸、パックリ割れたシックスパックを見せつけ、丸太の如き左右の二の腕には美女がぶら下がり、雑誌ターザンの表紙を飾ることとなる未来への布石を打つのだ。

 そういうわけで、一ヶ月くらい前から無性にスマートウォッチが欲しくてたまらなくなり、しかしApple Watchは高すぎるし、もう少し安くても金の出所はどこだと妻に追及される未来が見えるのに家の予算で買うほどの蛮勇なんぞなく、煩悶としていた。
 そんな時に出会ったのが、Xiomi(シャオミ)という中華メーカーがつい先日発売開始したばかりのスマートウォッチ、Mi Band 5である。
 中国から直輸入すると送料も含めても四千円ほど。しかし到着までは一ヶ月近く掛かる。楽天では五千八百円で販売しており、一両日で届く。会社の誕生日を少し前倒しすると、持ち出し八百円で今すぐ手に入る。
 夏休み最終日。不治なる重篤なサザエさん症候群にて枕を涙で濡らしながら、清水の舞台から飛び降りて注文すると、明るく元気。大学一年生の罹患する四月病のごとく、早く会社が始まらないかとワクワクした気分となった。立替経費精算をしたいので。

 誕生日ペアの志村さんにゲラゲラ笑われつつ、経費申請は一ヶ月早いのではという疑念も挟まれることなく無事に通過し(昨年同じようなことをして本福利厚生を施行している総務の杉浦さんに確認して、「まあ一年に一回ならいつでもいいんじゃない」と言質を取っていたので当然であるが)、その翌日に、Mi Band 5が届いた。

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 最新のアップルウォッチに比べて十分の一の価格であるにも関わらず、一日も充電も持たないアップルウォッチと比べて、最大十四日持つ充電。そして、ワークアウトのトラッキングはもちろんのこと、心拍数の計測、ストレスレベルや、気にしていた睡眠の質までトラッキングできてしまう。

 この安さでトラッキング精度は高い。会議が全くなかった昨日のストレスレベルはリラックス状態であり、一方本日財布がかなりの時間見つからなく焦って探していた時のストレスレベルは九十九であった。

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 睡眠のトラッキングも入眠時間と起床時間はほぼ正確に思え、そして七時間以上寝ているのに、「深い睡眠」が四十分ほどしかないと記録され、だから昼間いつも眠いのかと改めて痛感したのである。

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 テンションは上がり、届いてから三日間、目標八千歩をゆうに超えて一万歩以上歩いている。今日は一万六千歩以上だ。十三キロだ。昼休みにウォーキング、終業後にウォーキング。
 体重はみるみるうちに減少。早くも限界突破前の数値に戻った。この調子だ!
 あゝ、買ってよかった。
 中華メーカーということで、我が体重は中国共産党の知るところとなるかもしれない。だが、大食い批判をした習近平主席のことだ。我が体重の減少を知ったとしたら、賛美するに決まっているのだ。
「ダイエットという我が悲願は紛うことなく成就するなりけり。」

 端的に言うと今の私は躁である。
 私は飽きっぽい。私は現実を直視できる人間だ。すぐに揺り戻しが来る。
 家から一歩も出ず、歩数は三百程度。体重の留まることない右肩成長。
 しかし、それでも私はMi Band 5を購入してよかったと確信している。どんなにひどいトラッキング数を突きつけられたとしても、微塵も動じることのない強靭な精神力が身につくのだ。
「威風堂々いう我が悲願は紛うことなく成就するなりけり。」

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