初任地さいたまから大津へ転勤、映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』でにわかに注目を浴びた両県共通の“魅力“を語ります!
こんにちは。大津支局の岡田篤弘です。
昨年11月23日に公開された映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』。実は密かに公開前から注目していました。
なぜなら、今は滋賀県勤務ですが、半年前まではさいたま支局にいたからです。
『翔んで埼玉』続編のタイトルが明らかになった6月。Instagramのストーリーズで「これは、見たい」と投稿すると、同僚の記者から「これはあなたのための映画だね」と返信が来ました。
今回はどんなストーリーが見られるのだろう…そう淡い期待を抱きながら鑑賞しました。
共同通信の転勤事情
私は愛知県出身。埼玉県や滋賀県とは何の縁もない学生生活を送っていました。大学生時代のコロナ禍で映画観賞にハマり『翔んで埼玉』を家で見たときはまさか埼玉県で勤務することになるとはつゆ知らず。関東では埼玉ってこんなに「ディスられて」いるんだなと思った記憶があります。
共同通信に入社して配属先を伝えられ、その場で軽く抱負を述べるのですが、そのときも埼玉の印象が何も思い浮かばず、「大学が寒い地方(北海道)だったので、暖かいところにいけてよかったです」と言ったような…
共同通信では、入社から3年の間に原稿を見るデスクが常駐している支社局(札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の各支社と横浜、神戸などの支局)、それ以外の支局をどちらも経験することになっています。
さいたま支局にはデスクがいましたので、1年か2年後には異動することに。関東の支局なので、次は関西に住んでみたいなあと思っていたところ、伝えられた異動先は「大津支局」でした。
「岡田くん、5月から、大津支局ね」
(…いいけど、滋賀って行ったことないぞ…?どうやって行くんだ?)
というのが、正直な感想です。
交通の要所か、通過ポイントか
マップを見ると、滋賀県の県庁所在地の大津市は京都市の隣にありました。
埼玉県と滋賀県、住んでみて思う似ている点は、交通の要所となっている点です。
浦和駅(さいたま市)から新宿駅(東京都)へは約30分、大宮駅では東北・北海道新幹線、上越新幹線、北陸新幹線の全ての車両が停車し、どこへでも一本で行くことができます。
一方の滋賀県。万葉集の時代から京都・奈良に近く交通の要衝として知られていますが、現在でも大津駅から京都駅は10分、梅田駅(大阪府)は新快速で40分ほどの利便性。さらに、滋賀県草津市の草津ジャンクションでは名神高速道路と新名神高速道路が分岐。米原市の米原ジャンクションで北に行くと北陸道が走り、今も近畿各県と北陸・東海を結ぶ重要な地域となっています。
新聞のシェアをみても、県庁所在地の大津近辺は京都新聞が、東海地方に近い彦根市や長浜市などは中日新聞のシェアが大きいなど、関西と中部が入り交じったような印象を受けます。(参照:日本ABC協会23年度上期普及率、部数(滋賀県))
でも、どちらの県も遠出するときの通過ポイントに過ぎず、旅の目的地になりにくいのは事実。
やっぱり影が薄い…
埼玉は東京に近く、横浜ほどおしゃれでもなく、千葉ほど名所がない(笑)滋賀は佐賀と字体と響きが似ていたり、県庁所在地の大津市も三重県の県庁所在地・津市とかぶる、第二の都市・草津市も群馬県の草津温泉と間違われる…(笑)やっぱり影が薄く、友人が埼玉や滋賀に駆けつけてくれることは、まずありませんでした…
あふれる郷土愛とプライド
しかし、この映画『翔んで埼玉』が画期的なのは、失礼ながらあまり注目されてこなかった県に焦点を当てていることではないでしょうか。
近くに大都市があり、これといった特徴も観光名所もない。でも、そこで取材すると、住民の地元への息づかいを感じることができました。
他の都道府県民からしたらどうでもいいであろう浦和と大宮の争い。今は浦和にある県庁の移転先でもめていた記憶があります。猛暑の熊谷でも「このくらいはまだ、余裕です」と語って百貨店に入っていくおばあちゃん。
「琵琶湖以外何もないよ」と言いつつも、他の魅力も紹介してくる(ラーメンの来来亭など)人。ある滋賀県出身の取材先には、「どこの支局の記者や?大阪とか京都じゃないよな」と、言われたことさえあります。
皆が、郷土を愛しているからこそ、その土地にプライドを持っているのです。
この映画においては埼玉、滋賀両県ともにディスりを受ける立場にありますが、埼玉県が「本当にダさいたま!?」と、滋賀県が「琵琶湖以外に何もないのか?」と評して、それぞれの県に関する意見を募集しました。いじられ慣れているからこそ(?)なせる業なのかもしれません。
きっとこの映画を見た関東・関西圏以外の人は、最初『翔んで埼玉』を見た大学生の私のように、「滋賀って、関西ではこんなにディスられているんだな」と思うでしょう。だからこそ、魅力が伝わる。関東・関西圏以外の出身の人でも、発見の多い映画かもしれません。
住めば都、魅力十分
実は最近、先述した交通の利便性などを踏まえ、にわかに埼玉・滋賀両県の魅力が急上昇しています。
「suumo住みたい街ランキング2023関東版」によると、首都圏版3位に大宮駅、12位に浦和駅がランクイン。関西版でも、7位に草津駅(滋賀県草津市)の名が。じわりじわりと、存在感を示し始めているのです。(リクルート調べ)
他県から見て何もなくても、住んでいる人にとっては魅力十分。私も夏場はよく、琵琶湖畔でお酒を飲んだり、散歩したりしました。近くに湖のある生活は、そこだけオアシスのように感じます。
クリスマスマーケットも、横浜や都内は混みますが、さいたま新都心ではそこまで混みません。京都の嵐山や清水寺で紅葉を見ようとすると人の多さにげんなりするかもしれませんが、滋賀の石山寺や日吉大社では独占で紅葉が楽しめるんです。大都市に比べて派手ではないからこその2県の表情にも、取材していて気づきました。
にわかに上昇する埼玉・滋賀両県の知名度と魅力。どちらの支局でも取材した記者として、映画の評判から起こる埼玉・滋賀ブームを気にしてみたいと思います。
共同通信の47リポーターズでは原作者の魔夜峰央さんにもインタビューしています。