経験学習を加速させる1on1
1on1の重要性とロミンガーの法則
ビジネスにおいて、部下の成長をサポートする上で1on1は重要なツールですが、その根拠を深く理解するために、まず「ロミンガーの法則」を紹介しましょう。ロミンガーの法則は、学びの70-20-10モデルとして知られており、人が仕事を通じて効果的に学ぶためには、70%の経験学習、20%の他者からのフィードバック、そして10%の研修や書籍などの学習によって成り立つとしています。この法則は、多くのリーダーシップ開発プログラムや人材育成の枠組みで用いられていますが、特に70%が経験学習であるというところが注目ポイントです。
経験学習サイクルと1on1の役割
そして1on1は、経験を振り返り、他者の視点を得て内省する機会を提供します。経験学習の視点から見ると、単に「経験」するだけではなく、その経験を「意味づける」ことが学びを深める要素になります。
ここで、コルブの経験学習サイクルに話を進めましょう。コルブの経験学習サイクルは、経験から学ぶプロセスを「具体的な経験」「内省」「抽象的な概念化」「積極的な実験」の4つの段階に分けています。このうち、特に「内省」と「抽象的な概念化」の段階が学びを深化させるための鍵となります。
1on1と内省・概念化の重要性
1on1やコーチングは、この「内省」と「概念化」の段階において非常に効果的です。多くのビジネスパーソンは忙しい日常の中で、経験を内省する時間が十分に取れないことが多いです。しかし、1on1の場では上司やコーチがその経験を問いかけることで、より深く内省し、その経験を抽象化して次の行動に繋げるサポートができます。例えば、部下が失敗したプロジェクトについて話すとき、その失敗の原因を一緒に分析し、そこから得られる教訓を抽象化して、次にどう活かすかを考えるプロセスこそが、内省と概念化の実践です。
学びの深化と行動への結びつき
こうした内省・概念化のプロセスが強化されることで、部下はただ目の前の課題を解決するだけでなく、次の挑戦に対して新しい視点を持つことができます。その結果、学びがより深まり、行動に結びつきやすくなるのです。まさに、1on1はただの進捗確認や問題解決の場ではなく、経験を振り返り、次の行動に向けた新たな理解を生むための場と言えます。そして、このプロセスが徹底されることで、個人の成長が加速し、組織全体の成長へと繋がっていきます。
まとめ
このように、ロミンガーの法則と経験学習サイクルを通じて1on1の重要性を捉えると、単なる会話の場ではなく、深い学びと成長を引き出すための貴重な機会であることが理解できます。特に内省と概念化の領域において、上司のコーチング、問いかけやフィードバックは、部下の視野を広げ、自己の成長に対する理解を深める鍵となるのです。