相手の心
「俺の言う通りに仕事進めておけば良いから。余計なことは考えるな。」
先輩と一緒に働く時は決まってこう言う。
相手を服従させるかのように。
またそれは自分が絶対だと相手に思い込ませるように。
でも僕には僕の考えがあるし、もちろん先輩も良い所はいっぱいある。
時にこの先輩の仕事の進め方がすごく納得出来るとき、すごいなと思う時もあるけど、逆になんでこんなに威圧的で固執的なのかと疑問に思うことが多々ある。
もっと良い方法があるのであれば、それをどんどん取り入れれば良いのに。
そうすれば自分も相手も楽に仕事が出来るし、ストレスを感じない。
ふと冷静にこの先輩がなぜこういう言動をするのか考えた時に、この先輩のちょっとした表情が浮かんできた。
それは先輩の上司に叱られている時、顔は引きつっているし、その場からすぐに立ち去りたがろうとする。明らかに自信を失くしている表情。
その場から立ち去るとイライラしているのがもろに分かる。
そうか、この先輩も自分自身に自信がないのだ。
だから僕のような後輩には強く出て、相手に服従させることで自分の立場を守ろうとする。そう考えれば僕にこれだけ威圧的なのも理解出来る。
僕も今までこの先輩に威圧的にされてつらかったけど、この先輩も本当は立場がなかったんだ。
でもだからと言って他人に威圧的にする行為ってどうなんだろう。少なくとも僕は一切尊敬出来ない。正直言ってみっともない。
自分に自信がないのと相手に威圧的にするのは別問題だ。
ちょっと試してみようか。
「でも僕の上司から事前に言われているんですよ。やり方は先に説明しておくからそれ通りにしてくれって。だから先輩から仰って頂くのはすごくありがたいんですけど、僕は言われたやり方でしないと怒られるんですよ。どうしましょう?先輩が今言ったやり方でしますか?もし上司に指摘されたら僕の代わりに言って下さいね。」
「えっ、い、いや、それは・・・。仕方ない、今回は上司に言われたやり方でやってくれ。」
「分かりました。」
思った通り先輩からすると想定外の出来事だったんだろう。不安定になった表情が見て取れた。
そうか、今までは相手の言動を全部受け止めていたけど、本当は相手にも課題があって、それを隠そうとすることも多いんだ。
でもそうやって相手の言動を冷静に考えるのって、僕にとってはなかなか難しい。どうしても相手の勢いに負けてしまう。
今は心に余裕があったから・・・、そうかじゃあ心に余裕がある状況を出来るだけ作れば良いんだ。そうすると相手の真意も測ることができるし、相手が裏側で抱えている課題も見えてくる。
もしこれが自分も余裕がなかったら、とてもじゃないけど相手のことを冷静に見れなくなってしまう。
だからまずは自分に余裕を持つこと。それには自分の苦手な人を出来る限り寄せ付けないこと。それからスケジュールを立て込みすぎないこと。
そうすることで自分の心の余裕を保つ。
なんかこれからちょっと明るい気がする。