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今さら聞けない「自由で開かれたインド太平洋」

大上段に構えるタイトルをつけたものの、すいません、特にその道の専門家というわけでもなく、単なる素人の政治経済ウオッチャーです・・・

とはいえ、この「自由で開かれたインド太平洋”戦略”」はとてつもない可能性を秘めていると、素人ながらに思っている。その割に国民の間での認知度があまりに低いため、少しまとめてみようと思った。

自由で開かれたインド太平洋戦略は、いったい何が凄いの?

この構想は、かつて麻生さんが「自由と繁栄の弧」と評した外交戦略にルーツを発する。その後、安倍さんが「セキュリティ・ダイヤモンド」構想としてアップグレードし、それがやがて「自由で開かれたインド太平洋戦略」へと発展した(ある時期から「戦略」という言葉は外れているが、本稿ではあえてつけておく)。

ざっくりと言えば、インド洋・太平洋は船が自由に行き来できるという約束を守ろうね、その方が世界経済のためにいいよね、ということである。(その経済的自由は、軍事力によって担保されている)

安倍さんがトランプ大統領にその構想を話したところ、「イイネ!」となり、トランプさんがさかんに「インド太平洋戦略」を口にするようになった。

やがて、アメリカの「太平洋軍」の名称が「インド太平洋軍」に変更された。つまり、日本発の外交戦略が、アメリカの安全保障戦略に影響を与えたのである。

日本発のアイデアが、世界最強国家の安全保障戦略に影響を与えたことなど、有史以来初めてのことなのではないだろうか?

現在、その構想はさらに前へと進んでいる。日米豪印4か国からなるQUAD(クワッド)同盟構想だ。パワーバランスから米国が主導になることは当たり前のことだが、ある意味で日本が「そうなるように少しずつ働きかけてきた」ものの集大成なのだ。

第二次世界大戦において、世界から孤立してフルボッコにされ焦土と化した敗戦国・日本を思えば、隔世の感があると言えるだろう。少なくとも、私はそのように思う。

自由で開かれたインド太平洋戦略は、一体何の役に立つの?

中東から日本に原油を運んでくる、いわゆる”シーレーン”の安全性を確保するということであるが、やや概念的で分かりにくいので無理やり日常生活に置き換えて考えてみよう。

日常生活のためにはスーパーマーケットに買い物に行かなければならないが、家からスーパーマーケットまでの道のりは基本的には安全性が確保されている(=シーレーン)。ひったくりや強盗が出るかも知れないが、それには警察が出動し犯人は法律によって裁かれる(=武力による安全性の担保)。これって当たり前のことだけど大切なことだよね、ということである。

ところが、大金持ちがそのスーパーマーケットまでの道のりの土地の権利を買おうとしているとなったら、あなたはどう思うだろうか?もちろん、今までのルールがずっと適用されるのならば、日常生活に大きな影響はないだろう。

しかし、個人の土地になってしまった場合、どうなるかはわからない。勝手にそこを通ることはできないし、場合によっては警察権も制限されるかも知れない。そういうことを防ぐために、スーパーマーケットまでの道のりは、ずっと自由に誰でも通れるようにしようねという取り決めが、自由で開かれたインド太平洋の矮小化した例えである。

つまり、自由で開かれたインド太平洋とは、私たちの当たり前の生活を守るための、国を挙げた取り組みなのである。

世界覇権の観点からみたインド太平洋戦略

では、インド洋、太平洋はこれまでもアメリカ軍の活動範囲だったわけだが、どうして改めてそういった取り組みが必要なのだろうか?

それには、弱体化しつつあるアメリカ合衆国と、強大化しつつある中国のパワーバランスが関係している。

このシーレーンは中国にとっても重要なものである故に、中国としては自分たちの影響下に置きたい。その流れの一端が、南シナ海の埋め立てであり、一帯一路による港湾整備である。

つまり、強大化しつつある中国は、いわば弱体化しつつあるアメリカの世界覇権に挑戦をしている。世界覇権とは、ざっくりと言えば「オレ流ルールでやれ!」ということである。

もしも、中国ルールでこの海域の交易が取り仕切られることになったら、世界はどのように変わるだろうか?

2010年の尖閣諸島の漁船衝突事件と、それに続く尖閣諸島国有化によって、中国は日本に対する経済制裁を行った。ということから類推するに、もしもシーレーン覇権が中国にうつれば、中国に逆らうことでシーレーンを封鎖されるという恐怖にさらされることになるだろうということは、想像に難くない。

そういった流れを押し返すために、弱体化しつつあるアメリカを支える仕組みの一つが、自由で開かれたインド太平洋であるという意義もある。


自由で開かれたインド太平洋の重要性を、野党は認識しているのか?

ということで、自由で開かれたインド太平洋戦略とは、「私たちの当たり前の生活を守るため」の枠組みであり、それは「日本がリードして作り出そうとしている世界秩序の一つ」でもある。

これは凄いことだと思う。

憲法改正や拉致問題は解決できなかったが、安倍政権の最大の置き土産なのではないかと個人的には考える。

この重要性が、どれほど広く認知されているだろうか?

一般国民があまり知らないのはやむを得ないと思うが、国会議員の中でも十分に理解が進んでいないように思えるのが大きな問題だ。

野党議員も流石に「外交の基軸は日米同盟です」ぐらいは言うようになったが、はっきり言って微分・積分まで進んでいるのに「九九は重要です」と言っている程度のものに、私には思える。(もちろん、九九も重要なのだが・・・w)

石破さんはもう少し踏み込んで、「アジア版NATO」に言及しているが、すでに日米豪印のQUAD同盟のNATO化の話はアメリカから出ている。さらに、QUADでサプライチェーンを再構築しようという動きが出ていることも、見事としか言いようがない(=経済面での米中デカップリングへの対応)。

野党は、本当に政権を担う覚悟があるならば、少なくともこれくらいのことは理解した上で国会論戦をして欲しい。


同盟のある国は栄え、同盟のない国は衰退する

さて、そもそも日本は平和国家なので、「同盟国」なんて必要ありません、という考えの人も世の中にはきっといるだろう。その考えの是非はここでは議論しない。

戦史研究家でもあるアメリカの元国防長官のジェームズ・マティス氏は、「同盟のある国は繁栄し、同盟のない国は衰退する」と述べている。

これは、少なくとも国会議員は全員肝に銘じなければいけない言葉なのではないだろうか。

いい・悪い」の問題ではない。単に、「それが歴史の事実だ」ということである。

QUADのみならず、英国との準同盟関係も進行している。

戦前、日本は国際的に孤立し、誤った同盟相手を選択することで破滅した。そして戦後の日本外交も本当に下手くそだった(経済一流、政治二流と揶揄された)。しかし、気が付けば、今、日本は割と世界の真ん中にいる。国家の繁栄のために、自由で開かれたインド太平洋は断固推進する!野党もそれくらい言ってもかまわないと思う。

自由で開かれたインド太平洋に関する外務省資料

(画像は写真ACから引用しています)


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