生きて死ねば それで終わりじゃないでしょう
2022年2月11日、くるりの25周年記念ライブ「くるりの25回転」@有明ガーデンシアターを観た。
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バンドの歴史をたどるようなライブだった。
ばらの花とか人気曲でも細やかなアレンジが加わっていたり、ライブで聴きごたえのあるアルバム曲(moning paper とか、惑星づくりとか、アナーキー・イン・ザ・ムジークとか…)も演奏してくれて「やっぱりライブは最高だな」と終始じんわりしていた。
特にグッときたのは、本編最後の「ソングライン」。
曲の終盤、普段ならそこで終わるところで、岸田さんが弾き語り調で2番のサビをもう一度歌った。
もともと心に刺さっていた歌詞だが、さらにふかーく刺さった。いや、刺さったというより、歌い方が優しすぎて沁み込んできた。
「ソングライン」は2018年に発売されたアルバムの表題曲。
CD音源やいつものライブとは異なり、上記の歌詞を2回も繰り返す意味。
改めて岸田さんから語りかけられている気持ちになった。
ちょっと戻った日常はあっても、失ったものは多い。閉塞感も残るし、2年より前のような活気はまだ戻らない。
気軽にいろんな人と会ったり話したりができる状況でもなくて、寂しさとか理解し合えなさがましましの世の中。
そんなこんなで気持ちもちょっと斜め下向きになりがちになりやすい。
そんな中でも、人と会えない息苦しさはあっても、なんだかんだ結局ひとりやないやろ、人生ただ生きて死ぬだけやないやろ、の言葉にハッとさせられ、顔を上げる。
こんな世の中でも、人と人の間で生きて、日々の営みがある。
孤独だと思って塞ぎ込んでも、顔を上げて見渡せば気に掛けてくれている人がいる。
生きて死ぬの間には日々が詰まっていて、したいことをしたり、しなかったり、料理作ったり洗濯したり、勉強したり、出勤したり、子供を育てたり…。
当たり前のことなのだが、当たり前すぎて言われないと気づかないことなのかもしれない。
しかもそれが強い言葉じゃなくて、聴き手の入りこむ余白を残して語りかけてくれるのが、くるりの好きなところ。
なんだか暗い気持ちとか、「ああこんなこと考えてる自分嫌だなぁ」と思う瞬間とか、言いたいのに言い出せない時とか、掃いても出てくるホコリのようなもやもやを「ええんちゃいますか」とそのままあっていいものとして置いといてくれる。
置いといたうえで、そんな自分を連れて歩いていけるような歌をくれる。
飛んで行ったり、歩きだしたり、走ったりする。
悲しんでもいいし、どこに行ってもいい。
戻ることも、嘆くこともない。
あくびでも出ようものなら、まぁいいさ。
安心な僕らは旅に出ようぜ。
今の苦しさとか哀しみの中でもやさしく差し込む光のようなライブだった。
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