好きなものが繋がる瞬間
最近、ポッドキャストで好きな番組がある。
それが「又吉直樹の芸人と出囃子」と言う番組。
漫才コンビ「ピース」の又吉さんが、他の漫才コンビとともに「出囃子」について語りながら、彼らの音楽遍歴を深掘りするポッドキャストで、今までオズワルドやニューヨーク、男性ブランコなど、数々の漫才師たちが出番前に流している音楽について語っていた。
そもそも「出囃子」とは、芸人や演者が舞台に上がる際に流れる音楽のことで、漫才が始まる前のオープニング曲のようなものでもあり、それぞれの漫才師たちの個性が顕著に現れる部分でもある。
特に印象深かったのは、アキナの出囃子であるET-KINGの「纏」や蛙亭の出囃子である神聖かまってちゃんの「砲の上のあの娘」で、彼らの特徴を音で表現しているような、とてもぴったりな出囃子だと思った。
そんな風に、音楽と漫才と言う異なる分野において「出囃子」という一面で文化が交わり、その重なった一部分で生まれるこだわりや会話がとても興味深くて、様々な芸人さんのエピソードを夢中で聴いていた。
そして、この番組中に、漫才コンビオズワルドのボケを担当する畠中さんがすごく印象に残る発言をしていた。
自身が好きだと思っていたアーティスト同士が、互いにそれぞれのアーティストをリスペクトしていたり、好きだと発言したりしているのを知って、良いなと思うというもの。
その気持ちが、すごく自分の中で共感できたのだ。
自分も、今まで全く関わりのなかった好きなもの同士が、何かの拍子に交わることがあった時、不思議とテンションが上がるから。
例えば、自分が好きなGalileo Galileiと言うバンドが、同じく好きな羊文学の曲をTwitter上でカバーして歌った時があった。
今まで、別々に好きで聴いていた二つのアーティストが不意に交わって、好きな気持ちが線となって繋がっていく。
それに、自分の好きなアーティストもこの曲が好きだと分かると、自分の中でも何だか特別な曲になっていくような気がして、その後はこの曲を繰り返し聴くようになっていた。
また、それは、音楽やアーティスト同士だけで起こる現象ではない。
最近、久しぶりに漫画を読んで面白いと感じていた田島列島さんの「水は海に向かって流れる」と言う作品がある。
もう恋をしないと決めた女性と歳が10個も離れた高校生の主人公が個性豊かな登場人物たちとともに日常を過ごすヒューマンドラマで、適度にユーモアが混じった会話劇と人物に寄り添った心理描写が特徴的な作品。
この「水は海に向かって流れる」が実写映画化されるにあたって、主題歌を担当するアーティストが「スピッツ」だということが、この間発表されたのだ。
スピッツも昔から大好きなアーティストだったのだけど、ちょうど読んで気に入った漫画の主題歌をまさか担当することになるとは夢にも思っていなかったので、驚きと嬉しさが同時に込み上げてきた瞬間だった。
何となく、自身が好きなものと言うのは雰囲気が似ていたり、良いなと思う感性が同じだったりするので、好き同士が繋がる確率も高いのかもしれない。
それでも、こうやって実際に好きな作品と好きなアーティストがタイムリーに繋がる瞬間を目撃すると、作品に対しても勝手に溢れんばかりの親しみを覚えてしまう。「その気持ちわかるよ」って言いたくなる。
それに、そうやって「好き」と「好き」が繋がる瞬間というのは、不意に訪れた時ほど嬉しさが倍増するし、繋がったあとは、それぞれの「好きなもの」がより一層好きになれたような気がするのだ。
これからも、多くの作品やアーティスト、コンテンツに出会うだろう。
だから、それと同時に、好きになったもの同士が思わぬ場所で繋がる体験も増やしていきたいなと思っている。
今年はたくさん新しい出会いが訪れることを願って、興味があるものには積極的に触れていきたい所存。