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最近、気になるタイアップソングについて語りたい(2025年1月クール編)

作品とセットで語られることが多い「タイアップソング」

ただ、タイアップソングは物語に寄り添いつつも、アーティストが独立した作品として創りあげた音楽でもあって、その絶妙な塩梅を楽しめるのが良いところだなと思っている。

個人的に、去年の10月から始まった秋作品のタイアップソングが好きで「いっちょnoteを書くか!」と意気込んでいたのだけれど、まんまと時期を逃してしまった。

しかし、タイアップソングについて(欲を言えば作品についても)語れる場所がほしいと常々思っていたので、ここいらで旗印となる記事を掲げていこうと決めて今に至る。

というわけで、今回はそんなnote。(敬称略)


コントラスト/TOMOO【アニメ『アオのハコ』EDテーマ】

一度、聴いたら忘れられない歌声と、何気なく届けられる歌詞のワンフレーズが印象的なTOMOO

2025年の5月には日本武道館でのワンマンライブの開催も控えており、国民的アーティストへの階段を驚くべきスピードで駆けぬけている。

その快進撃はとどまるところを知らず、去年、ドラマ『全領域異常解決室』のメインテーマとして「エンドレス」が選ばれたのも記憶に新しいなか、新曲「コントラスト」は現在放送中のアニメ『アオのハコ』のEDテーマに抜擢された。

少年ジャンプで連載中の『アオのハコ』は、高校生のキャラクターたちがひたむきに部活に打ち込む姿と、まっすぐな想いと複雑な感情が入り交じる等身大の恋模様が描かれる。

今日はまだ届かない
近くにいるのに

「コントラスト」/TOMOO

「コントラスト」では、そんな青春まっただなかの登場人物たちが過ごす”日常の一コマ”を淡い色で切り取りながらも、実際にアニメで流れるEDムービーを見てみると、メインキャラクターのひとりにスポットを当てていることがわかる。

あらためて歌詞を読めば読むほど、ぜんぶが彼女の目線から映しだされた日常の一コマだったんだとわかる。言葉では伝えられない距離も、隠しきれない想いも、彼女が「君」と過ごした日々につながっている。

冴えた朝の空気に 気づけば背中を探してる
やけに伸びた背筋は 今日も君のせいだった

「コントラスト」/TOMOO

ドラムのキックが胸の鼓動のように聴こえるのも素敵。高校生たちの等身大に寄り添いながら、青春の甘さも苦さも余すことなく閉じこめる。

「エンドレス」でも感じたけれど、作品に登場するキャラクターに対する心情の深掘りがすばらしい。個人的にMVの「Behind  The Scenes」が好きなので、早く「コントラスト」ver.も観てみたい。

Wash Away/Balming Tiger【ドラマ『東京サラダボウル』メインテーマ】

今クールのイチオシドラマでもある『東京サラダボウル』

緑色の髪がトレードマークの国際捜査係の警察官・鴻田(奈緒)と、中国語の逐語通訳を仕事にする有木野(松田龍平)が東京で起こる外国人の関係するトラブルを解決していく。

ただ、決してそれらを”外国人犯罪”と一括りにすることなく、一人ひとりが異国の地で抱える悩みや人間関係に向き合いながら、彼らは懸命に東京の街を奔走する。

鴻田とアリキーノのバディが結束を深めていく様子は微笑ましくもありつつ、世界各国の食文化にも触れることができるのもドラマの魅力のひとつ。

ただ、サソリの串焼きやカエルの唐揚げなど、全部が全部食べたい料理だとは限らないけども。それにしてもバインミーって美味しいよね、本当に。

そんな食のバラエティに富んだドラマの主題歌を担当するのが「韓国の多国籍オルタナティヴK-POPバンド」と称されるBalming Tiger

こんなにも作品とマッチするのかと思うほど、音が聴こえてくるだけで『東京サラダボウル』の世界観に浸ることができる一曲だ。

(From head to toe) 
Everything is different
Everyone is struggling

「Wash Away」/balming tiger

歌詞に目を向けてみても、この作品が提起しているテーマを掬いあげつつ、彼らの想いがダイレクトに伝わってくる。

人種も国籍も関係なく、お腹は空く。そして、誰もが日々、何かと戦いながら暮らしている。話す言語は違えども、分かり合える瞬間はきっとある。

国際色豊かな料理の数々に彩られた物語。
ぜひ、頬張ってでも堪能してほしい。

話そうぜ/Aki【ドラマ『晩餐ブルース』EDテーマ】

今季のドラマのなかでも、特にほっこりさせられているドラマが『晩餐ブルース』。それぞれ異なる悩みを抱えながらも、夜のご飯をともにする”晩活”を通して、久しぶりに再会した高校時代の友人とゆったり仲を深めていく。

そんなドラマの主題歌として選ばれたのが、シンガーソングライターAki「話そうぜ」。切なさを帯びた歌声と〈話そうぜ〉の言葉がストーリーの最後に流れるたびに、他愛ない話をする時間の大切さが身に沁みる。

明けない夜があったとしたら
どんな夜を過ごしてるだろう

「話そうぜ」/Aki

歌詞の冒頭のように、登場人物たちが互いを慮りながら”晩活”を楽しみにしている姿を観るだけで心が安らぐのに、彼らが作る料理を眺めていると、とことんお腹が空いてしまう。

それにしても人が料理している姿って、なんでこんなに落ち着くのだろうか。作りたくなるよりも、落ち着くが勝る。

主人公たちの目線から追いかけると、歌詞のすべてが愛おしくなるのだけれど、特に〈今日もくる/それくらいには明日を待ってる〉という歌詞が良すぎて。

自分も毎週、同じくらい『晩餐ブルース』の放送を心待ちにしていると、声を大にして言いたい。

へび/ヨルシカ【アニメ『チ。 ―地球の運動について―』EDテーマ】

これまで数々のタイアップソングを手がけてきたヨルシカ。話題のアニメ『チ。 ―地球の運動について―』では、なんと2クール連続でEDテーマを担当している。

前期の「アポリア」に続く楽曲のタイトルは「へび」。なんとも意味深なタイトルだけれど、それぞれの歌詞に共通しているのは、想像と発見からなるメタファーの多さだ。

芽吹く苔のベッドを転がった あの頃みたいに
カタバミはこんなに柔いのか

「へび」/ヨルシカ

アニメ『チ。 ―地球の運動について―』は、地球を中心として惑星が廻っていると信じられている時代で、地動説を証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語。

想像もつかない神秘に包まれた宇宙に浪漫を求める彼らが、抽象的な物事について想像を働かせる様子は、まさにメタファーで表現される歌詞のようにも映る。

〈ブルーベルのベッドを滑った/春みたいだ〉〈ぼやけたよもぎの香りがする〉など、自然を歩くなかで出会う何気ない発見も、どこかアニメの世界観と地続きのような気がした。

「晴る」や「アポリア」でも感じたけれど、ヨルシカが手がけるタイアップソングの歌詞に登場する、ファンタジー感あふれる言葉のチョイスが好き。ずっとファンタジー作品のタイアップやってほしい。

声/羊文学【ドラマ『119 エマージェンシーコール』メインテーマ】

これまでアニメ『呪術廻戦』2期「渋谷事変」のEDテーマとなった「more than words」、『【推しの子】』第2期のEDテーマに選ばれた「burning」など、数々の人気作品のタイアップを担当している羊文学

Gt.Vo塩塚モエカの透明感あふれる歌声に、シューゲイズサウンドが轟音で鳴り響く。まさかこんなにも世間を賑わせることになるとは思わず、ただただ今の活躍が嬉しい。

そんな羊文学が今期、担当したのは、消防局の司令管制員(ディスパッチャー)を主人公にしたドラマ『119 エマージェンシーコール』のメインテーマ。

助けを必要としている人からの電話を受けて、現場に赴く消防隊員へとバトンをつなぐ通信司令センターを舞台とするドラマに、タイアップソングとして書き下ろした楽曲のタイトルが「声」であることに、まず心が揺さぶられる。

シンプルだからこそ重みのある言葉。そして、電話の向こうから聴こえる「声」に耳を澄ませることは、ドラマでもストーリーのカギを握っている。

あの日くれた言葉 いつも考えてる
小さな戦いなの、日々は言うほど簡単じゃない

「声」/羊文学

特に主人公である粕原雪(清野菜々)にとって、上司である堂島真一(佐藤浩一)からもらった言葉は、彼女の信条を支える大切なものだった。

〈私は怯えても呼び返す/何度でもこの声で〉とサビで歌われるのを聴くと、より登場人物たちの葛藤がリアルな温度感で伝わってくる。

シンプルなギターのストロークで始まるイントロも良い。作品のラストからエンディングの曲入りに定評のある羊文学なので、このドラマでも「声」が流れるタイミングに注目したい。


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