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東京に来て映画館は一つじゃないと知った

東京に来るまで、訪れたことのある映画館は一つだけだった。

子どもの頃、親に連れられていく映画館。もしくは友だちに誘われて、話題の映画を観にいく場所は決まって「TOHOシネマズ」

もしかしたら覚えていないだけかもしれないけれど、それ以外の映画館を訪れた記憶が全くない。それほど、映画館=TOHOシネマズという図式が頭の中で自然と成り立っていた。

東京に越してきてからは、仕事の関係で映画を観る機会が少なくなってしまったけれど、今年はたくさんの映画を劇場で観ることができた。週に一本くらいのペースで、映画館へと足を運んだ。

そして何より、東京に来てからは、TOHOシネマズ以外の映画館でも映画を観るようになった。

さまざまな都市にひっそりと佇む小さな映画館。しかし、ひとたび劇場内に足を踏み入れると、それぞれに個性があって、独特の世界観をまとっている。

アンティークな外観に包まれた「下北沢トリウッド」では、放映された当時、忙しくて観ることのできなかった『リバー、流れないでよ』を鑑賞した。

下北沢トリウッドの外観。文字のフォントも好き。

素朴で朴訥とした館内の雰囲気を感じつつ、ヨーロッパ企画が作りだす独特な世界観の虜になる時間。

観賞後、作品の余韻に浸りながら、ゆらゆらと下北沢の街を練り歩くのも楽しかった。

渋谷の「ユーロスペース」は、オシャレな打ちっぱなしのコンクリートビルにあるミニシアター。1階はブックカフェになっており、上映前にゆっくりと過ごすこともできる。

そんな「ユーロスペース」には『箱男』を観るために訪れた。アンダーグラウンドな場所に位置することもあって、インディーズの珍しい作品も多数、上映されている。

ユーロスペースで上映されていた作品たち

実際に映画で使用された段ボールも展示されていて、時代を感じさせる精巧なつくりに目を惹かれた。(なぜか撮るの忘れてるけど)

「アップリンク吉祥寺」は吉祥寺パルコの地下2階にあるミニシアター。館内はレトロな内装で、どこか異国に迷い込んだような気分に浸れる。

カウンターではクラフトビールや伊良コーラなど、映画館では比較的珍しいドリンクも販売されており、鑑賞のおともにちょうどいい。

当日、観た『チャチャ』の世界観もどこか「アップリンク吉祥寺」に馴染んでいるような気がして、この作品をこの場所で観れてラッキーだなと感じたことを思い出す。

そして、何といっても「テアトル新宿」を初めて訪れたときの感動が忘れられない。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』を観るために新宿までやってきて、名前は聞いたことあるけど…くらいの気分で地下への階段を降りていく。

目の前に広がった光景。そこには、作品に対する愛の詰まった展示と温かな雰囲気が漂う空間があった。

キャストのインタビュー記事や制服などが飾られている

ただ映画を観るためだけではなくて、その場所で作品に込められた作り手の想いと情熱に触れながら、これからも思い出に残るだろう愛おしい時間を過ごせる。本当に忘れられない映画体験になった。

その後も『僕のお日さま』『アット・ザ・ベンチ』など、気になる作品が上映されるたびに訪れている。お気に入りの映画館。


何より、こんなふうに映画館と作品が紐づいて、一つの映画体験となって自分の記憶に刻まれていることが嬉しかった。

実際「この映画を観たいから」だけでなく、「この映画館で観たいから」と、観にいく作品を選ぶのもおもしろいかもしれない。

まだまだ訪れたことのない映画館も多いので、2025年はもっとたくさんの場所で映画との思い出を作れれば。

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