ありふれた言葉のタイトルに惹かれる【音楽編】
最近、世の中に並べられているタイトルはとても奇抜になっている。
それはひとえにタイトルという存在が、人々の注目を集めるためのとても重要な要素になりつつあるから。
このnoteにしてもタイトルが気になるものがあれば記事も見たくなるし、自分自身も色々と試行錯誤しながら内容に見合ったタイトルを考えている。
そして、それはどんな分野でも当たり前で、ゲスの極み乙女が「私以外私じゃないの」と歌うならば、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか」と銘打つ物語が紡がれるのを見れば分かるように、タイトルの奇抜さは嫌でも人の目を引く。
しかし、そんな奇抜なタイトルが流行る中、あえてありきたりでシンプルな言葉を用いたタイトルというものに、自分は不意に惹かれてしまうのだ。
という事で今回は
そんなありふれた言葉を用いたタイトルの作品を
音楽編と小説編に分けて紹介していこうと思う。
今回は音楽編。
携帯電話/RADWIMPS
今や知らない人はいないんじゃないかと思うほど
国民的バンドとなった「RADWIMPS」
変幻自在なサウンドと確固たる世界観、そしてハイレベルな楽器隊が織りなすリズミカルな楽曲。
魅力を挙げればきりがないバンドだけども、その中でもひときわ目立つのがフロントマンであるボーカル野田洋次郎が生み出す言葉遊びのような歌詞。
彼が紡ぐ叙情的でいて、時に変態的な歌詞は
誰にも真似できない唯一無二のもの。
実際、楽曲タイトルも一工夫加えたものが多く「有心論」や「君と羊と青」など、元の意味となる言葉に違う漢字をあてたり、言葉自体を分解しているタイトルも存在している。
それに対して
この「携帯電話」という楽曲はとてもシンプル。
「携帯電話」という存在を様々な言葉に例える。
友達であり、歴史であり、寂しさでもある変な箱。
今や誰もが普段手にしている「携帯電話」というモチーフひとつで、ここまで歌の世界観を膨らませることができるのが野田洋次郎と言う人間の凄いところ。
こんなものがなければ 今日も君がいないこと
思い知らされることもなく 生きていけたんだろう
最後まで一通り聴けば分かる通り、この曲のタイトルは「携帯電話」以外ありえない。題名当てクイズとして出題されても答えられる自信がある。
教科書/ザ・マスミサイル
先ほどとは打って変わって、力強い歌声から放たれる、心にまっすぐ響くこの楽曲の名前は「教科書」と言う。バンドの名はザ・マスミサイル。
自分だけの曲げられない信念を「教科書」に例えたこの曲は、ある意味現実で使われている教科書のイメージを覆すように歌われる。
「教科書通り」という言葉があるように、どこか堅実でお堅いイメージを抱かせるこの言葉をあえて使うことで、聴いてる者は自分が正しいと思い込んでいた常識から解放されるような気持ちにさせられるのだ。
君にマニュアル通りの教科書なんかは必要ないでしょ
最後に言い放たれるフレーズが突き刺さる。
かっこいい。完全にパンチライン。
ライター/WOMCADOLE
タバコに火をつけるためのものと
思われがちの「ライター」
実際、それ以外の用途で使われるのをあまり見たことないが。
そんな「ライター」を戦う心に火をつけるための着火剤として例えたこの曲を歌うのは、滋賀県発のロックバンド「WOMCADOLE」
ボーカル樋口によって叫ぶように歌われるまっすぐなこの歌詞は、負けることに慣れ、次第に戦うことすら諦めていく人の心をもう一度奮い立たせる力がある。
ライターこの恐怖を燃やしてくれないか
小さな心の鍵をあけろよ
終始、己を叱咤激励するように歌われる歌詞の中でも、自らの弱さを認めたうえで立ち上がろうとするこの一節が自分には最も心に響いた。
聴いてると何でもいいから「やらなきゃ」という気持ちになるので、後回しにしがちな億劫な行動をとる前に聴くのがおすすめ。
天気予報/羊文学
気だるげだけども、どこか懐かしさを感じる
「羊文学」が紡ぐこの曲の名は「天気予報」
ニュースキャスターが日々、淡々と伝えるもの。
だけども、自分たちの生活になくてはならないもの。
皆がどんな風に思っているかは知らないけども、自分にとっては「天気予報」という言葉のイメージとして、これほどまでにぴったりな曲はないと思っている。
子供の頃見た天気予報 雨降りのマークを集めて
晴れている空は嘘つきと ママと笑ったあの日のこと
個人的にこのAメロで流れるフレーズが好き。
子どもから見たら予言のごとく伝えられる「天気予報」は不思議に映るのかもしれない。
僕らの時間軸に流れる「天気予報」
決して晴れの予報が出ているからと言って雨が降るわけではないし、その逆もまたしかり。
将来はいつも不安定でどうなるかなんて分からないし、現実を流れる時間だって自分が夢見た未来予想図をなぞれているとは限らない。
ただ、この曲は決してネガティブなことばかり言っているわけではない。
むしろ「予想のその先にある未来をつくっていく」ための「今」を、確かに生きていかなければならないのだと思わせてくれる。
いつか来る時代に憧れた彼らの火を
ワクワクするような未来で繋ぐかい?
未来を更新していくためには
今日を積み重ねていかなければならない。
ただの無責任な言葉ではないからこそ
心にすっと入ってくる。
スプーン/藍坊主
最後に紹介するのは「藍坊主」というバンドの「スプーン」という曲。
この曲では家族をテーマに、当たり前に思える幸せを「カレーライス」に例えて歌われている。
しかし、この曲のタイトルは
「カレーライス」ではなく「スプーン」なのだ。
「ただいま」とスプーンに話しても
疲れた自分が映るだけ
「おかえり」が 待っている台所が
こんな こんなに幸せだったなんて
この楽曲で「スプーン」という言葉が使われるのはこの一節だけ。なおさら「何でだろう?」と不思議に思うかもしれない。
ただ、個人的な意見になるのだけども、この曲にとっての主役となるのは「カレーライス」ではなく「スプーン」の方なのだ。
当たり前のように身近にあった幸せを「本当は当たり前なんかじゃない」と気づけなかった。
「おかえり」が待っている台所が
こんなに幸せな場所だと思ってもみなかった。
そんな「スプーン」に写った後悔する自分こそが
この曲を象徴していると思うから。
実際に口にすると恥ずかしくなってしまいそうな、素直なありのままの気持ちを歌ってくれるのが藍坊主の良いところ。
ちなみにMVはコミカルで面白いので、一度視聴してみて欲しい。何となく癖になる。
最後に
という事で「音楽編」はここまで。
好きな曲も紹介できて大満足。
次回「小説編」に続く。
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