見出し画像

「駅」に宿る想いを曲に

少し意外かもしれないが
「駅」と「音楽」の親和性は高い。

例えば、駅の発車メロディなどは近年、様々なアーティストの楽曲が使われるようになっている。

我らが地元、関西の私鉄「阪急電車」が走っている「十三駅」では、2019年からくるりの岸田さんが作曲された発車メロディが流れている。

また、東京の地下鉄メトロでは、千代田線の「乃木坂駅」で乃木坂46の「君の名は希望」が、日比谷線の「秋葉原駅」でAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が発車メロディに起用されていて、それぞれ駅名に由来する選曲となっている。

こんな風に、誰もが使う「駅」と言う身近な場所においても、音楽は密接に関わり合っているのだ。

そして、その中では「駅」で繰り広げられる想いを宿した楽曲と言うのも、数多く存在している。

と言うわけで、自分の好きな「駅」に因んだ楽曲
いくつか紹介してみようと思う。

萱島駅/Unblock

まず最初に紹介するのは、大阪府寝屋川市で結成された3人組ロックバンドUnblockによって、彼らの地元に存在する駅の名を冠して作られた「萱島駅」と言う曲。

大阪北東部から京都府南部まで長く伸びる沿線を走る「京阪電車」が通り、寝屋川市を流れる寝屋川の真上に位置するのがこの「萱島駅」

この曲では、そんな「萱島駅」と言う場所に
歳を重ねて大人になって帰ってきた「僕」の心境が綴られている。

約束を破っても何処にも行かない人の元へ
夕方5時3分着 みどりの電車は僕を乗せて

冒頭から、遠く離れた場所で挫折を経験し、戻らないと決めた街に心ならずも戻ってくる「僕」の心境が嫌と言うほど伝わってくる。

しかし、そんな心が擦り減った状態で帰ってきた場所にあるいい意味で変わらない温かさのようなものが、この歌詞からは感じられるのだ。

昔からの地元の友人たちも、駅へとたどり着く時刻も
緑の車体が特徴的な「京阪電車」も。

その場所にいた時には、何でもない存在であったものたちが、何事もなかったかのように「僕」を迎え入れてくれる。

そんな懐かしい街を象徴するように描かれる「萱島駅」「僕」「あなたがくれた声」を思い出す。

時間はもう戻らないけども、あと少しだけ前へと進んでいこうと思わせてくれる。そんな曲。

赤い電車/くるり

お次は、先ほど「十三駅」の発車メロディを作曲したと紹介した岸田さんが作詞作曲を手がける京都府出身のバンド・くるり

緑色の京阪電車と打って変わって「赤い電車」と名付けられたこの楽曲は、実は岸田さんの地元である京都ではなくて、東京から神奈川までを繋ぐ「京浜急行電鉄」からの依頼で作成された楽曲になる。

赤い電車は羽田から 僕らを乗せてひとっ飛び
でかい東京 どこへでも どこまでも行けるから

小気味いいリズムで刻まれるベースやドラム、シンセサイザーの音はもちろん、まるで本当に電車に乗って揺られているかのように感じられる、岸田さんの心地よい歌声から放たれるメロディが素敵な楽曲。

ゆったりと進んでいく電車。
でも、どこへでも連れて行ってくれるような広がりがあって。

普段はあまり意識することがないけども、この曲を聴いていると、電車と駅、それを繋ぐ路線によって日本中が繋がっていることを、改めて教えてくれるような気がする。

ちなみにこの楽曲には、ベスト盤に収録されている「赤い電車{ver.金沢文庫}」と言う少しアレンジが加えられた楽曲もあるので、聴き比べてみるのも面白いかもしれない。

岸田さんの電車への愛が詰まった楽曲なので
ぜひ「京浜急行電鉄」に乗った際には聴いてみては。

京都線/PK Shampoo

深いリバーブのかかったギターの残響音、耳に突き刺さって離れない歌声が印象的な「PK Shampoo」から紹介するのは「京都線」と言う楽曲。

MVでは、一瞬画面が壊れたのかと思うほどカラフルで情報量の多い映像が映し出されているが、歌詞をよく見ると、忘れられない「君」を想いながら夜が明けていく情景が儚くも映し出されるラブソングとなっている。

君がいない夜って何してたんだろうな
思い出せないまま夜明け

冒頭から「君」との思い出が具体的に羅列され、彼女のことを忘れられない想いをはっきりと再確認させられた後で、この歌詞を持ってくるのはずるい。

「君」は電車に乗って遠く離れた場所に行ってしまった。
それでも、夜が明けるまで考え込んでも、忘れることはできない心境。

曲名の「京都線」はおそらくJR京都線がモチーフになっているのだけど、歌詞の中には部分的にしか登場していない。

それでも「京都線」と言うタイトルだけで、ここまで背景のストーリーを浮かび上がらせることができる。作詞を担当するヤマトパンクスさんがメロディに沿って大事に扱う、そんな言葉たちが自分はとても好きだ。

この曲以外にも「PK Shampoo」には心に突き刺さる楽曲が数多くあるので、この楽曲が心の琴線に触れたならば、ぜひとも他に好きな楽曲を見つけに行って欲しい。

最後に

「駅」は人と人とが別々の目的を持って行き交う場所。
見知らぬ人や様々な思惑が際限なく交錯する場所。

だからこそ「駅」と言う場所では様々な物語が生まれるし、音楽にもその場所に宿る想いが反映されていく。

今回紹介した曲以外にも
たくさんの「駅」を舞台にした曲があるはずだ。

いつも乗っている電車で、いつも通っている駅で
ふとした時に、そんな「駅」に宿る想いが込められた楽曲を聴いてみて欲しい。

きっと今までとは違った景色が見えてくる。

かもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集