自家現像 ~必要にせまられて~(決意編)
自家現像。
最近になって・趣味で・フィルムで写真を撮る人なら、一度は聞いたことがあるかもしれない。
自家現像。
自分で・フィルムを・現像する。
自家現像ができると撮影が安く済むよとか、趣味なら一度はやってみなきゃとか、色々な文脈で語られる行為。
しかしながらハードルが高い。
面倒げな薬品を使い、暗室やらタンクやらを用意して、気を使ってあれこれせねばならない。
そのハードルの高さたるや、ただフィルムで写真を撮ることとは段違いだ。
そんなこんなで、気にはなりつつも自家現像に手を出すことはなかった。
が。
しかし。
必要に迫られたのである。
始まりは1台のカメラだった。
ヴェスト・ポケット・コダック
ヴェスト・ポケット・コダック。
1910年代から30年代にかけて「ベストのポケットにも入る」という触れ込みで発売された、小さくて可愛らしいカメラである。
これを入手した。なぜか? 使ってみたかったからである。ニコンFM2(1980年代)、オリンパスペンD3(1960年代)と来たら、もっと古い物も触ってみたい、という謎の知的好奇心だ。
触ってみたいみたいと思いつつ、古すぎて入手は諦めていたのだが、なんとメルカリに出品があるのを見つけ、早速ポチ。こいつは127フィルムという、所謂ブローニーフィルム(120フィルム)より小さなフィルムを使う。このフィルム、そこいらにはもう販売していない。120フィルムを切って使うか、それとも、と考えていたら、なんとこれまたメルカリに出品があるのを発見。
こうして、メルカリの力で本体とフィルムが揃った。手の中に90年前。しかも動いて撮影できる。感激だ。
1930年代の物とは思えないほど状態のいいのに歓喜したり、シャッターを数度切った時点で壊れてひと難儀あったりしたが、そこは省略。
感激はいいのだが、このフィルムの扱いでやらかしてしまった。
ノッペラボーのフィルム
120フィルムや127フィルムといった、カートリッジ(パトローネ)に入っていないフィルムには、撮影済みのフィルムを留めるシールがついている。
で、このフィルムはフィルム本体ではなく、シールの方にメーカー名が書いてあった。
このシール、120フィルムならそれなりの大きさがあるのだが、如何せん127フィルムのそれは小さい。で、うっかりそれをちぎってしまった。
するとどうなるか。
フィルムがメーカー名も何も書かれていない、ノッペラボーになるのである。
現像してもらえない
事態の重大さに気づかぬまま、フィルムを現像に出そうとした。
が、返答は「メーカー名などが分からないのでお受けできません」
そりゃそうだ。処理方式もわからない謎のフィルムを現像液に突っ込んで、変な物だったら他のお客さんのフィルムまで駄目になってしまう。大罪だ。
ちぎれたシールは粘着が悪くなってしまい、フィルムにくっつきそうにはない。
ううむ、どうしたものか。ネット上でやってくれそうな現像店を探すか。
そろそろ面倒くさい
ここでそろそろ面倒になってきた。ネット上で現像してくれる所を探して、それでも無理だったら無駄足である。足は近所のコンビニまでしか使わないが。
因みにこのフィルム、モノクロである。
よし、自家現像してみるか、と考えた。
うまくできるようになれば、普段使っている120フィルムでの撮影が安く済む、という皮算用もあった。120フィルムの現像代は高いのだ。金の話が多いnoteで申し訳ない。
こんな情けない経緯をもって、自家現像を決意した。