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駄菓子屋の心得
どれだけ成長して大人になったとしても
お菓子を選ぶ時と言うのは胸が高まってしまうものだ。
スーパーやコンビニのお菓子コーナーでは、定番とも言えるお菓子がずらりと揃っていて、季節限定の味ともなるとついつい手が伸びてしまう。
四季とともに移り変わるお菓子コーナーは見ていて飽きないし、昔から知っているお菓子を商品棚の隅っこで見つけたりすると、ちょっと嬉しかったりもする。
そんな風に、お菓子が集まる場所というのは
どこか人の心を浮つかせる力がある気がするのだ。
特に、懐かし匂いを漂わせながら、カラフルなパッケージに包まれたお菓子が所せましと並ぶ「駄菓子屋」と言う場所は、童心を取り戻すには十分すぎるほどの魅力に溢れている。
自分が小学生の頃、学校が終わった放課後に友達と集まる場所といえば、近所の駄菓子屋だった。
少ないおこづかいを握りしめて駆け込んだその場所は、様々な種類のお菓子を堪能できる空間であり、子どもたちの憩いの場でもあった。
駄菓子屋で買うものと言えば
今思い返すと、可愛く思えるようなものばかり。
きなこ棒、カルメ焼き、10円チョコ、うまい棒などなど。名前を聞くだけで懐かしい気持ちが溢れてしまう。
個人的に、この「ペペロンチーノ」が懐かしすぎて、今、無性に食べたくなってしまった。ちなみに、自分はパスタで食べる派。
そして、そんな昔懐かしの駄菓子たちの中でも
特に思い出に残っていた駄菓子があった。
それは「ヤッターメン」という名の、10円で買える「ベビースターラーメン」のような駄菓子。
ちなみに言うと
めちゃくちゃ味が好きというわけではない。
おそらく、普通に「ベビースターラーメン」を買った方が遥かに美味しい。「ベビースターラーメン」も言葉にしただけで無性に食べたくなってきた。
では、なぜ「ヤッターメン」をわざわざ買うかというと「ヤッターメン」には当たりくじがついているからだ。
当たりと言っても、最高で100円程度のもので、今の感覚からすると、なんであんなに毎度のごとく買ってたんだろうとは思うのだけど、あの時の子どもたちはみんな「ヤッターメン」で当たりを出すことに夢中になっていた。
100円が当たった時の盛り上がりようは、現在、開催されているワールドカップの熱狂に負けずとも劣らないというのは言い過ぎだけど、その日の気分を最高潮まで引き上げてくれる力はあった。
もはやあの瞬間こそが、自分が人生の中で最初に経験した博打だったのかもしれない。あの場所にいた子どもたちはみんな、完全に勝負師の眼をしていたから。
◇
「駄菓子屋」はお菓子を売っている場所。
それはいつまで経っても変わりない。
でも、それだけではなくて、お菓子や駄菓子を見ながらどれにしようかと悩んでいる時間、友達と相談して駄菓子を分け合いっこした時、当たりくじに祈る瞬間、どれもが「駄菓子屋」を「駄菓子屋」たらしめている魅力だと思っている。
そして、「駄菓子屋」で最も大事にしたいことこそが
「駄菓子屋」と言う空間で一喜一憂する時間なのだ。
これからも、そんな駄菓子屋の心得を胸に刻みながら、あの頃の気分に戻ってお菓子を選んでいきたいと思う。
それにしても、駄菓子屋にいるおばあちゃんは何であんなにも愛おしいのだろう。おばあちゃんの存在も「駄菓子屋」には欠かせない。