親子編 75回目 七拾七

「国籍留保届」が出生から3か月以内に届出せず、

しかも、その届出をしなかった理由が

「責めに帰することができない事由」でない場合

出生の時にさかのぼって日本国籍は喪失します

前回の「責めに帰することができない事由」の部分でも

ありましたが、何年も届出をしていなかったり、

忘れていたり、知らなかったりという場合には、

国籍を喪失する形になります。

が、しかし、それであっても、やはり「国籍」

というのは、非常に重要なものなのです。

その個人の人生を左右するものなのです。

そこで、法律では、この状態であっても、

さらに国籍を喪失した人のための救済措置を設けています。

そもそも、外国で出生し、

日本国籍以外の国籍も取得したいうことは、

その土地で生活をしている可能性が高いということです。

その土地に根付いている可能性も高く、その国、もしくは

第三国の国籍も取得しているわけですから、

「日本以外]

で今後の人生も歩んでいく可能性が

十分に想定され、日本という国の中での

生活をする可能性が低いと思われます。

その場合には、いたずらに重国籍状態を放置するわけには

いきませんから、喪失という制度があるわけです。

そのような人であっても、「日本」で生活をするという事に

なった場合には、一度は失った国籍を「再度」「取得」する

ことができる制度があります。

これが「国籍不留保者の国籍再取得」です。

国籍法17条

第12条の規定により日本の国政を失った者で18歳未満のものは、

日本に住所を有することによって、日本の国籍を取得することが

できる。

とあります。

12条、すなわち「国籍留保届」の未届出で国籍を喪失した人は

日本に住むことで再度、国籍を取得することができる。

とあります。

もともと、日本国籍の日本人が外国にいることで喪失した

国籍なのだから、日本で住むということは、日本の地との

つながりが強いことになります。

また、今後も日本で住む可能性が高く、そのうえで日本の

国民としての権利義務の対象とする。わけです。

そのための再取得制度です。

やはり、「国籍」というものが非常に重いものであるわけですから

ここまでしてでも、自国民というものの権利を保障するわけです。

ただし、なにがなんでも国籍を再取得できるとなると、

モラルハザードが起きますし、いつでもとなれば、

行政側としても管理しきれず正確な国民の把握という事が

できません。ですので、国籍再取得の場合は、条件があります。

①国籍不留保による日本国籍を喪失したこと。

(国籍留保届未届出)

あくまでもこの救済措置の対象者は、

国籍留保届の未届者です。

喪失後その者が他の外国籍を取得していたとしても本条の対象と

なると解されています(「改訂国籍実務解説」51項)

(小池信行 吉岡誠一 国籍の得喪と戸籍実務の手引き77項)

②18歳未満であること

この要件は、国籍再取得の届出時に18歳未満であることが

条件になります。

③住所が日本にあること

日本に住所を有することは、永続的に日本に居住する意思をもって

生活の本拠を日本に有していることを意味します。

一時的な居所・滞在はこの要件を満たしません。

(「改訂国籍実務解説」52項)

(小池信行 吉岡誠一 国籍の得喪と戸籍実務の手引き77項)