イメトレ漫談

 来週はいよいよ共通テスト本番やね。君らもぼちぼち緊張感が高まりつつある頃やと思うけど、本番に向けてイメージトレーニングしておくことが大切やで。よくあるのがな、試験終わって翌日自己採点結果もってきて、思うような結果が出せなくて落ち込んでる生徒が、「隣のやつが貧乏ゆすりが激しくて……それでなんかこっちの机も微妙に揺れて集中力が乱れて……」みたいなことを言うのね。いや、わかるよ。そりゃ貧乏ゆすりで集中力を乱されるのはわかるし気の毒なんやけど、俺から言わせると、そんなもん事前にイメージトレーニングしとけよ、と。貧乏ゆすりごときが「予想外」の時点で準備不足なんよな。

 俺はもう、こと受験については慎重すぎるくらい慎重なタイプの小心者やから、できるだけあらゆる想定を事前にしておくわけ。試験会場が寒すぎたり暑すぎたりしたらどうしよう、みたいなのは勿論、テスト中に尿意ないし便意を催したらどのタイミングでトイレに行こうかとか、もしも鼻血が出てしまったらティッシュを詰めて急場を凌ぐかそれともトイレにいって洗面台で流しきってしまうかとか。

 問題内容についてもそうで、勉強てのはどこまでいったって、勉強不足の部分が見つかり続けるものやから、不安は消えへんわけやけど、今自分が解けない覚えていない分野の問題がもし試験当日にドンピシャで出たときに、悔しい思いをするのかそれともこの分野が出されたらしゃあないと開き直れるのか、そういうことを想定して、残りの期間何を勉強するのかとか考えるべきなんよ。それで今開き直ったんやったら、それが当日に出たとしてもガタガタ言わない。そういう覚悟をもって勉強するんや。

 で、隣の席のやつ問題ってのは確かにあって、自分の力ではどうしようもないことやから、せめて気持ちの準備だけはもてるように色んな事態を想定しておくべき。咳とか貧乏ゆすりとか頻繁にトイレに立つとか独り言が聞こえるとか鉛筆音がやたら大きいとか、そのへんは事前に想定しておいて仮に当日にそんなやつが隣にいても気にせえへんようにしておこうな。

 俺はそうやって色々と想定した結果、もし隣のやつがゲロ吐いたらそのときはもう諦めようと思ってたわ。さすがにゲロ吐かれたときまで平常心を保てる自信はなかったから、そのときはもう運がなかったと思って点数が下がるのは受け入れようってな。

 で、俺はこういう話をこの時期に毎年お決まりのように話してるんやけど、逆に受験終わってから元生徒たちから実際のエピソードを聞くこともあるんやけど、この前ある元生徒から衝撃の話聞いてさ。

 センター1日目の国語の時間、隣のやつが突然倒れたんやって。何やろな、緊張なんか、解けないショックなんか、原因はわからんけど、突然ふーっと横に倒れて、そのままバターン!って床に倒れたんやって。慌てて試験官とかその子の周りに駆けつけて、その子運び出されてそのまま試験終わるまで帰ってこんかってんてさ。ほんまにそんなこと起こるんかいなって、で、その俺の生徒はどうやったん、パニックにならんかったんかいや、て聞いたら、倒れた瞬間はビックリして、多分一分くらいは頭真っ白だったんですけど、でも先生が言ってたケースに比べたらまあまだマシか、私に実害は生じてないからまあいいか、てすぐ冷静になれて、普通に解けました、やって。

 いやいや、それはゲロ吐かれるのと大差ないゲキヤバアクシデントやんかって、そのときは思ったんやけど、まあほんま、試験いうのは何が起こるか分からんし、何が役に立つかもわからんもんやね。

 願わくば、「先生に教えてもらったあの解法のおかげで解けました!」とか「授業でめっちゃ言ってたことがそのまま出て助かりました!」みたいな反応を俺は期待するけど、ゲロ吐かれる話でも役に立つという先例ができちゃったからな、今後も毎年この時期は受験生にゲロ吐かれたら諦めろって、話をする羽目になったわけや。君らも気の毒なことやな。

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