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渡る狭い、狭すぎる!?世間に鬼はなし

隣の家との境に植えてある山茶花、昨年から色々とやる気が失せて剪定をサボっていたのでよく花がついた、というか咲き乱れた。訳あって昨年から妻と離れて暮らしていて、この秋は「愛」について深く、いやホンの少しだけ考えたくて、恋愛小説を読みたいなぁと思っていた。そんな時、この本を本屋で見つけ、表紙の色と「隣」という文字もあってか、ふと、このピンク色の山茶花を思い出した。

題名からは何となく近しい人々の恋模様を綴ったものかと想像してたが、6人というかなりの大人数の女性それぞれの視点で物語が同時進行していく恋愛小説だった。ちょうど今の冬至あたりから冬を越し春を迎えこどもの日あたりまでの半年間の話で、数ページごとに視点(物語の主)が変わる。読みやすさと分かりにくさが混在する。

しかも、その6人が微妙に繋がっているのだ。よく、時代を隔てて、例えばそれぞれの親が若い頃に恋人だった、というその子どもたちの物語などはあるが、同時代、しかも東京のある同じ地域、同じ業界の人たちが、主に「不倫」「浮気」を通じて「相関図」にひとまとめとなるのがこの本だ。

自分が住んでいるような田舎(足利市)の狭いコミュニティなどでは、実は誰ちゃんのパパと誰ちゃんのママが...とかあるかもしれないが、舞台は人口1400万都市東京だ。世間が狭い、狭すぎる。でも、何となくこれと同じ構造のものを見たなぁと。そう、今テレ東でやってる「スナック キズツキ」だ。恋愛ものじゃないけど。

毎回、原田知世扮するトウコママのいる「スナック キズツキ」に訪れる、悩みを抱えた人たちが繋がっているのだ。まぁ、元々そのスナックに立ち寄れるぐらいのご近所さんたちなのだが、意外と世間とはそんなもので、そんな狭い世界だからこそ濃密で観察しやすく、ドラマにも小説にもなるのかもしれない。だから、ちょっと自分のスナックにやって来たこの6人が、時にはお酒飲みながら愚痴ったりしているのを、トウコママのような気持ちで見守るように本を読み進めてた。

でも、その6人が繋がっていることが徐々にわかってくるのは物語の後半で、そこからは畳みかけるように「あーそういうこと!!」という展開で一気読み。自分は男なので女性の主人公たちにガッツリ感情移入することはなかったが、ただ女性たちの強さにはとても惹かれた。ホントくずばかりの男性の登場人物と違い、最後には前向きに生きようとする。ひかりの言葉を借りれば「好きだと思える自分になればいい」のだと。やっぱ己の人生は主体的に生きないとだよね。そんな彼女たちを取り巻く世間には、きっと力になってくれる人がいるだろう。青子にとってのヨウや莉里にとっての美智子、美智子にとっての義母や別れた淳哉が。いや、いてほしい。

山茶花と椿の違いは、枯れる時に花びらだけ落ちるか花ごと落ちるかだ、と先日TVでやってた。

自分の今までの恋愛は、花びらを落とすだけでやり過ごす山茶花だったか。妻に対しても全身全霊を捧げるような愛がなかったのかなぁ。ふと、スタレビの「トワイライト・アヴェニュー」の歌詞「恋は 逃げちゃだめね たとえ 痛手がふえる日がこようと」が頭に流れる。

だから、ヨウや知歌やひかりのような「死なばもろとも」の椿みたいな恋に少し憧れるのかもね。

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