どんなに苦しい時も 君は笑っているから 挫けそうになりかけても 頑張れる気がしたよ~読書note-24(2024年3月)~
地獄のような2月を乗り切ったら、天国のような3月が待っているのではと期待したが、そんなはずもなく地獄は続く。昨年4月以降のほぼ一年分の売上不振が響いて、支払いが色々とずれ込んでいるので、入っても入っても金は飛んで行く。コンドルかよ。
そんなどうしようもない3月も、次男の大学卒業とTV業界への就職が我が心に射しこんだ唯一の光だった。卒業式前の3月中旬から既に働き始めて、担当が朝の情報番組になったとのこと。前日から泊まり込みのこともあるらしく、「昼夜逆転の生活は大変だけど、ずっと憧れていた、やりたかった仕事なので楽しい!!」とのLINEをもらう。親としてはこんな嬉しいことないんじゃない?
33年前の自分の新社会人としての船出は、生保会社に入社したのに、2週間の研修を終えたら、いきなりショッピングセンターとオフィスビルを管理運営している関連会社への出向だった。最初に上司から指示されたのは、「an-an」「non-no」「JJ」などの女性ファッション誌を読むことだったし、初めて担当した仕事は、世界卓球(幕張で開催)の選手団をこのショッピングセンター(新浦安)に誘致することだったし。マジで「俺、何やってんだろう???」って。
やりたかったことに携われている次男は幸せだ。とにかく身体だけは気をつけてと願うばかりで、いつか大好きなバラエティーや音楽番組を担当できることを祈っているよ。
そんなこんなで、3月は2月より1冊増えただけの3冊だった。なかなか増えんのう。
1.スイート・ホーム / 原田マハ(著)
辛い時は本を読んで癒されたい、とにかく心があったまる物語を読みたいと思い、昨年ゴッホ関連のアート小説ですっかりファンになった原田マハさんの作品で、以前から気になっていたこの本が本屋で目に留まったので購入。
あぁ、結婚する前にこの本を読みたかった、家庭を築く前に。そんな感想を抱くほど、ここには温か過ぎてちょっと引くくらいの!?家族の絆が描かれている。4つの短編連作集で、4つ目は更に5つの話に分かれている。舞台はいずれも、宝塚をモデルにした阪急沿線の緑豊かな郊外型のニュータウンで、そこの小さな洋菓子店「スイート・ホーム」を中心に話が展開される。
その洋菓子店の長女・香田陽皆(ひな)の奥手で純粋な恋とその家族の絵にかいたような幸せの風景を描いた表題作「スイート・ホーム」、母と同じ料理研究家の道を選んだ未来(みき)先生が年下のスイーツ男子の辰野君に恋する「あしたのレシピ」、夫を亡くし傷心のいっこおばちゃんの立ち直りと次女・晴日(はるひ)の結婚が絡む「希望のギフト」、そして更に違うご近所さん達が登場する最後の「めぐりゆく季節」、食べたことないけど、どれも「スイート・ホーム」のケーキのような甘くやさしい味の物語。
今、妻と別居中の自分は、「スイート・ホーム」を築くのを失敗したのだろうか。同じ家に居ながら、どこで気持ちのすれ違いがあったのだろうか。それに気づいてからも、それを修復することだって出来たのではないだろうか。近くの「スイート・ホーム」のようなケーキ屋さんで、妻の好きなチーズケーキを買って帰ってたら、「昨日はごめん」とケーキが二人の仲を取り持ってくれたのでは…
なんで近所にケーキ屋さん無いの???
2.完全無罪 / 大門剛明(著)
7月に大好きな広瀬アリス主演で、WOWOWでドラマ化されると聞き、これはその前に原作を読んでおかねばと購入。WOWOWとミステリーの相性は凄く良いので、これは期待できるなと。大門剛明さんの本は初めてか。
21年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された大手法律事務所の新米弁護士・松岡千紗が主人公で、実は千紗はその一連の事件で監禁された少女の一人だった。今でも事件当時の悪夢にうなされる彼女が、誘拐殺人で無期懲役となった平山容疑者とどう向き合い、過去を乗り越えて行くのか。そして、平山は本当に無罪なのか、だとしたら真犯人は誰なのか、二転三転するスリリングな展開がたまらない。
冤罪事件には、警察の捜査方針の過ちが付き物であるが、本事件も違法な取り調べだけでなく、証拠品の捏造やら、もうやりたい放題。犯人はこいつだと決め打ちしたら、そのまま突っ走るしかない。我が足利市での連続幼児誘拐殺人事件もそうだった。無実の菅家さんを犯人に仕立て上げ、何度も目撃情報のあったルパン男を放置し、その後の同様の事件を防ぐことが出来なかった。
まぁ、そんな警察の中にも、この本の終盤では千紗と共闘する有森元刑事のように、真犯人を見つけ出したい、真相を究明したいと考える人間もいるだろうから、自浄作用を期待したいものだ。それにしても、「冤罪」って何なんだろうね。こんなにもむなしくやるせないものが、この世に存在するのかと、改めて考えさせられる本だった。
3.犬は知っている / 大倉崇裕(著)
今やすっかり「劇場版名探偵コナン」の脚本家として名を馳せた大学時代の友である大倉崇裕君、この春の最新作「100万ドルの五稜星(みちしるべ)」も脚本を担当したようだ。
そんな彼のミステリーの新作、いやぁ、まいった凄い所に目を付けたなぁと。TV化もされた彼の代表作「警視庁いきもの係」シリーズでは様々な動物が出てきたが、今回は我々に一番身近な動物である「犬」を主役に持って来るとは。
犬といっても普通のペットやただの警察犬ではなく、「ファシリティドッグ」という病院で患者に寄り添い、恐怖や苦痛などの精神面の負担を和らげるために働いている犬だ。初めて知った!!そんなファシリティドッグの「ピーボ」が小児科病棟で子ども達を癒す傍ら、特別病棟に入院する余命わずかの囚人患者の心を開かせ、彼らが隠していた事件の秘密を聞き出す。
もちろん、犬だけではそんなこと出来ないので、ピーボのハンドラーである笠門巡査部長が常にバディとして行動する。聞き出した患者の秘密を元に、事件の再捜査を開始するのだ。大倉君の作品は、「死神さん」とか「いきもの係」シリーズとかバディものがとても面白い。今回も犬と人間だが、互いを信頼し補い合い、良き相棒となっている。
全5話からなるが、自分は大倉君の「福家警部補」シリーズとかの倒叙ミステリーのファンなので、第4話の「犬が見つける」が一番好きかな。ここでは囚人患者ではなく、小児病棟の男の子から事件の目撃情報を聞き出し、犯人のミステリー作家をピーボと笠松で追い詰める。
それにしても、犬には不思議な力があるなぁと。もし弱り切っている今、ピーボが傍にいたら、あることないこと!?全て話してしまいそう。そして、ピーボが時に見せる凛とした姿は、自分が昨年のNo.1に挙げた馳星周さんの「少年と犬」の多聞を彷彿させる。あぁ、また犬を飼いたくなった!!
次男の最新の様子を妻に聞くと、仕事で怒られてばっかりらしいが、めげてはいないとのこと。そうだよな、新人は怒られながら仕事を覚えて行くんだもの。俺も新入社員の頃、先輩に怒られて、というか自分の不甲斐なさに泣きながら仕事してたのを思い出した。
でも、めげてない、というのが救いだ。長男も次男も俺に似て!?人当たりが良い。いつもニコニコしていて好印象の青年だ。「ヘラヘラすんな!!」と時に怒る人がいるかもしれない。でも、そんなの聞き流せばいい。「笑う門には福来る」「和顔愛語」、どんなに辛くとも、笑顔を作ることで自分自身を穏やかに、そして周りを和やかにして行けば、きっと物事は上手く行く。最近しかめっ面ばかりの俺も、笑って行こう。