若竹七海 「錆びた滑車」読書感想
こんにちは、ジニーです。
9月になって、朝夕はだいぶ涼しくなってきましたね。
日中はまだ暑いものの、読書には向いた気候になってきているような気がします。
読書の秋、まさにそういう雰囲気になってきた感じですね。
今回、読書感想を書くのは、若竹七海さんの「錆びた滑車」です。
大好きな葉村晶シリーズです。
シリーズ第6弾、そして2冊目の長編作品です。
■まずは、いつものように簡単なシリーズの紹介
クールでニヒルで口が悪い。
自分が納得できるまで真相を追いかけてしまうため、トラブルに巻き込まれることも数知れず。
友達と言える人数も少なく、周囲にいるのはクセのある人間ばかり。
プロフィールからすでに一筋縄に行かない感じですが、世界一ハードラックな女探偵でおなじみの葉村晶。
(クールで~ここまでがテンプレです)
今回は2冊目の長編ということで、またもや謎がややこしくこんがらがって、そんでもって、例によって葉村晶も満身創痍になってしまう作品です。
シリーズの一つ前にあたる「静かな炎天」の時からそうでなのですが、女探偵葉村晶は、いまは大きな探偵事務所に所属しておらず。
バイトとして働いているミステリ書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>の2回に店長が気まぐれで構えた<シロクマ探偵事務所>に所属しています。
所属探偵は葉村晶ひとり。
本屋の店長にすこぶるこき使われながら、探偵業を行っています。
■安定のハードラック、でもそれがなきゃ葉村晶じゃない!
小さな探偵事務所なので客らしい客なんてほとんどおらず、昔所属していた探偵事務所のツテも使いながら仕事をこなしています。
今回も、とある優雅なおばあさまの素行調査を行っていました。
なんてことない素行調査のはずでしたが・・・。
痴話げんかの末に階段から落ちてくるおばあさま二人に押しつぶされて頭から出血したり、その痴話げんかの仲裁に入ったり、おばあさまの孫と3人で暮らすことになったり、火災にあったり、留置所に放り込まれたり・・・。
相も変わらずハードラックのオンパレード。
特に序盤の頭からの出血は、あまりに痛々しくて、一瞬読むのをやめようかと感じるほどでした。
葉村晶、いい加減に厄払いに行った方がいいのではないかと感じるほどです。
まあ、本人は神様も信じていなければ、厄なんてものも信じていないでしょうから厄払いになんて何のメリットも感じていなさそうですが。
結局、なんでもない素行調査だった依頼は、いろいろな出来事が複雑に絡まりあうことで幾重にも重なった方結びのようなミステリーが出来上がっていきます。
普通の探偵なら、めんどくさすぎてとっとと事件から降りてしまいそうですが、そこは葉村晶。
真相を知らないと気が済まない性分です。
ぼろぼろの満身創痍で事件を追いかけていきます。
ここまでシリーズを読み込んでいくと、
葉村晶がどんなひどい目に合うのかを、どこか期待してしまっている自分が
いることに気づきます。
どたばたし始めてきてから、ようやく本調子になってきた感じに思えてくるのです。
ほんとごめん、葉村さんw
■執念にも感じる真相を知ることへの執着心。小さな嘘が重なり見えなくなったしまった真実は何だったのか?
しかし、最後にはなんやかんやちゃんと真相に到着するので、そのあたりはご安心ください。
やきもきしますし、本当に複雑になりすぎて「なんの事件だったっけ?」なんて頭には手長浮かぶ瞬間もありますが、根気強く読んでいってほしいです。
根気強く読み続けていくうちに、ひねた物言いの、怪我の絶えない女探偵のことがなんかだんだん好きになってきますから。
今回は概要についての話が中心になってしましました。
内容としては、切ない系の物語だと僕は感じています。
「悪いうさぎ」のようなイヤミスな感じではないので、こちらの方が読みやすいという方もいるかもしれませんね。
登場人物の多くが何かしらの嘘をついています。
全く物語と関係ない嘘もありますが、小さな嘘が重なり合って、「そこにあった事実」が見えなくなっている状態。
そこを一つずつ紐解かれていくような、じっくりと真相に近づく高揚感を味わうことができる作品です。
おなじく張り巡らされた伏線の数々。
それらが回収されていく様子も、ミステリーとしての醍醐味を味わえる内容だと感じます。
是非、この癖になる女探偵のあきらめない姿を応援しつつ、心奪われてみてはいかがでしょうか?
これまでの葉村晶シリーズの記事も是非ごらんください。
(別のブログで書いたものもありますが、ご容赦ください)