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それぞれの源氏物語
世界最古の長編小説といわれる「源氏物語」。後世の文学、美術に大きな影響を与え、時代を超えて人々を惹きつけてきた。その「源氏物語」の現代語訳に多くの作家たちが挑んできた。
樋口一葉、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴、林真理子らによる現代語訳の魅力を紹介する特設展「それぞれの源氏物語」が2023年10月28日(土)から12月17日(日)まで山梨県立文学館(山梨県甲府市貢川1-5-35)にて開催される。
樋口一葉は中島歌子の主宰する歌塾・萩の舎で歌子の助教として「源氏物語」を講義し、「雨夜の品定め」などを得意とした。「源氏物語」をはじめとする王朝文学は、一葉の初期の小説のモチーフとなった。
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与謝野晶子は少女の頃から「源氏物語」に親しみ、生涯において三度の現代語訳を試みた。やさしいことばに訳された作品は、現代まで版を重ね読み続けられている。「晶子の現代語訳は、大正期以降、一般の人に広く浸透していくきっかけとなりました」と山梨県立文学館の中野和子(なかの・かずこ)学芸員は話した。
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谷崎潤一郎は1935(昭和10)年に「源氏物語」の現代語訳にとりかかり『潤一郎訳源氏物語』を刊行するが、最初の訳(1939年~1941年刊行)は時局の影響で削除や改変を強いられた。
中野学芸員は言う。「藤壺と光源氏の関係を描いた場面がカットされたのです。戦後、全面的に改稿し「新訳」「新新訳」として現代語訳を刊行したが、戦前にカットされた部分を補うなどにより原本の物語に沿った現代語訳になりました」。
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円地文子(えんちふみこ)は、「源氏物語」現代語訳に5年近くかけて取り組み、全10巻(1971-1973年 新潮社)を刊行した。序文には「現代の読者に出来るだけ気難しくない言葉で語りかけたい」とある。
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林真理子は、「源氏物語」の登場人物である六条御息所を語り手に、作品の章立てを大胆に変えて物語を再構築し、大長編恋愛小説として現代によみがえらせた。
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さらには、田辺聖子や瀬戸内寂聴といった人気作家も現代語訳を手がけており、広く読まれている。「独自の解釈で、読み手が受け取りやすいように物語を再現しています」と中野学芸員は語った。
「そして近年は林望『謹訳 源氏物語』(2010年~2013年)で、さらに理解しやすく「源氏物語」54帖すべてを読むことができます」と中野学芸員。「例えば、当時の住まいの状況や、出世すると変わっていく役職が本文中にかっこ書きで補われていて、自然な形で読ませています」。
会期中の11月11日(土)には、林望氏の講演会「『源氏物語』その面白さの秘密」を開催する。要申し込み。
開館時間は午前9時から午後5時まで(入室は午後4時半まで)。休館日は月曜日。ただし、11月20日は開館。翌21日(火)は閉館。常設展観覧料で見ることが出来る。一般330円、大学生220円。11月20日(月)県民の日は誰でも無料となる。
山梨県立文学館の公式サイトはhttps://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/
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