最近、読んだ本、読みかけの本【24年9月~10月】
久しぶりに読書ログを残してみよう。
9月~10月は、お風呂で読んでも(ぐっと集中して文字を追わなくとも)すーっと入ってくるような浸透圧を有している本を、好んで読んでいたように思う。今回は4冊をご紹介。
1.コルシア書店の仲間たち:須賀敦子
2.ヴェネツィアの宿:須賀敦子
このごろは、なんといっても須賀敦子さんのエッセイを読みまくっている。
僕が生まれた1990年に61歳にして作家デビュー、20代後半から40代に至る通算15年にわたるヨーロッパ生活の記憶を紐解きながら、美しい文章で当時の風景と感情を綴った作家だ。堰を切ったように、自身の大切な人との出会いを思い出すように、8年間でいくつかの作品を世に送り出し、1998年にこの世を去った。
須賀さんのエッセイに触れると、僕自身が大切にしたいと心から思える”何か”に出会えるような気になる。そう気づいてから、刊行順に本を手に入れてはゆっくりと読み進めている。
秋の朝や夕暮れ時にぴったりな一冊だと思うので、ポケットに文庫を入れてどこかお気に入りのカフェや公園で読んでみてほしい。
3.岡潔対談集:岡潔
読了(本に書かれたすべての文章を読み通すこと)をあまり重要視していないので、まだ読みかけの本も紹介してみたい。というより、対談集こそ、ふいに思い出したかのように、読みたい箇所から読みたいだけ読むにかぎる(と僕は思う)。そういう、ラフな読書を許容する器が対談集にはある。
本書は、数学者の岡潔さんが各界のトップランナーと、(いまよりも自由で荒っぽい言葉が許容された時代の空気を多分に含みながら)思うまま語り合った記録だ。
なによりメンバーが凄い(司馬遼太郎さん、井上靖さん、時実利彦さん、山本健吉さんの4名)。そして個人的に好きなポイントは、対話が絶妙にかみ合ってなかったり、対談者がちょっと困ってたりする様子もそのままテキストで表現してくれているところだ。まるでその場にお邪魔させてもらって話に耳を傾けているような気分になる。
4.詩と散策:ハン・ジョンウォン/著、 橋本智保/訳
以前、自作のZineを仕入れていただいた「電燈」という本屋のサイトをうろうろしながら、ふと目について購入した一冊。
表紙の冬っぽい静けさに惹かれたのと、「散策」という言葉が気になった。歩くこと(や散歩)は、僕の探求テーマの一つだからだ。さらにそこに「詩」と付いている。これは読んでみたい、と一目ぼれで購入した。
正直、まだ最初の2つのエッセイしか読んでいない。でも、きっとこの本を好きになる予感があった。最初のエッセイの一行目を紹介する。
うん、この一節だけで、十分いい。なじみのある実用的な言葉の連なりにすぎないはずなのに、不思議なイメージと感覚を連れてきてくれる。一人ではいけない場所に手を引いてくれるようなかんじ。
こういう本に出会ったら、読みながら「立ち止まる」ことを大事にしたい。
なんなら、一度ページを閉じてもよい。さーっと言葉の表面をすべるように読むのではなく、「そこになにかある」と思えたら、思い切って止まる。そうやって、味わいながら読んでいきたい一冊。たぶん、これからはこの本にぴったりの季節だろう。
🐈
本について書くのは、たのしい。
また来月も気が向けば書いてみたい。
【おしらせ】
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