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奇妙な味の短編

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奇妙な味の短編を集めてしまった。
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#不条理

ただいま

親がいなくなって家は僕のものになった。

だからか扉が勝手に開くようになった。閉めてもまた勝手に開く。
どの引き出しにも隙間が空くようになった。押しても押してもまた勝手に隙間が出来ている。
家中にとても隙間が多い。
数えようとしたけど、こんなには数えられはしない。
数えられないほど隙間が多いということは、すべてが見えるようになって、すべてが見られるようになったということなんだろうか?

これでは何

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『誰』

脳が欠陥品と判明したので良品に交換して貰うことにした。
配送も終わったのであとは待つだけ。
これで仕事のミスも、無駄にざわつく不安感もなくなる。薬の量も減らせるかもしれない。
出ていった妻子も戻ってきてくれるかもしれない。
仕事も辞めなくて済むかもしれない。
何もかもに我慢してうつ向いているだけの生活もやめられるかもしれない。

僕は玄関まで椅子を持ってきて座って待つことにした。

それにしても

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いるいない人

 いない人を呼ぶのは不可能なのでいる人を呼んだ。
 いない人が来た。
 いない人はいなかったので「いないからね、僕は」と言った。
「いないですよね、あなたは」
「ええ、いるはずがありません」
「いる人を呼びたいのですが…」
「ええ、いる人を呼んでください」
「いない人がまた来ませんか?」
「いない人がいるんですか?」
「いない人が言うセリフではないです」
「いない人が言うべきセリフとはなんですか?

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水回川頭鳥咥私

カラカラカラと水車が回って川底で頭を打った。
これで仕事が捗るかもしれないとオフィスでキーボードを打つ。
お客さんが全員戻って来た。
半裸である。
悲しそうだ。
見たことない悲しさだ。
でも川底はとても涼しい。
私に服は必要だ。
ダウンジャケットを重ね着する。
このオフィスはクーラーを効かせ過ぎている。
まるで冬のようだ。
この国は冬を殺したのにそれはおかしい。
お客さんは全員風邪を引いたまま帰っ

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呑み殺し

地下室の母親探して私は土を呑み込んでいく。
呑んでも呑んでも見つからぬところが母親らしいが素直な子供のままの私はいつまでも呑み込んでいける。
あらかた呑み込んだところでさらに呑み込んでいける。
土だけを呑み込んだところで見つからないのか?と首の角度を変え地下と地上も呑み込んでいく。
軽い町から重い星まで喰らったところで母親吐き出した。

バラバラだったけど母は母だ。

愛してる。

美味しい。

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