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奇妙な味の短編

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奇妙な味の短編を集めてしまった。
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#超短編小説

静かな安心

バラバラになった夫はもう怖くなかったので夕食を作ってあげることにした。
また失敗して焦がしてしまった。
お前には時間の感覚もないのかと怒られてばかりだった。
殴られてばかりだった。
でも、もうあの手では殴れないよね。
今では浴室で静かにしている。
静かにしている夫のことは今でも好きみたい。

必ず当たる先生の数字

「さっきあの先生に8と言われたんだけどなんだったんだろ?」
「言われたんだ?」
「うん。あの先生時々数字だけ口にするのなんなんだろね」
「知らなかったの?」
「なに?」
「受験が成功する生徒の数よ。先月は9だったわ」
「私…」
「必ず当たるから怖いのよね」

時がなければ

「時間が怖くなりました」
「なにもかもが時間の通りに流されて殺されていきます」
「私たちはみな一緒の犠牲者だと知りました」
「時間の対義語は空間であるとも知りました」
「知ってしまったので」

そう言った彼女は空間に逃げ込んだ。

時の流れはなくなり彼女は静止したまま死となんら変わりのない物体と化した。

教えなくてよかった

昨日の夜電話くれた?

深夜に知らない番号からメッセージ入っていたからさ。

あまりに小さくぼそぼそ言ってたんで聞き取れなくて、もしかしたらそうかなと思ったけど。

えっ、前から掛け続けていたの?

五年も前からずっと?

手当たり次第にずっと?

080から090から続く番号をずっと?

へぇ、君らしいね。


#眠れない夜に

戻ってこれない少年たち

戻ってこれない少年たち

優しい夜だった。

僕らにふさわしくない夜だった。

あんなにも優しくされたら僕らも優しくなれそうだった。

でもだめだった。

また狩りを始めるしかなかった。