#570 「AIとAIが取引する経済」と独禁法
昨年末12月31日の日経新聞コラムを読んで考えたことを、メモ。
1、どんな記事?
5面のオピニオン面(?)にあった、本社コメンテーター中山淳史さんが書かれた「AIとAIが取引する経済」というコラムです。
2、AIとAIが取引する世界?
AIの発達に関してさまざまなことが言われますが、一番先に具体的かつマスでやってくることってもしかしたらAIエージェントかも知れませんね。
チャットGPTなんかは能動的に使いにいかなければいけないサービスですが、AIエージェントって、普段使っているスマホで何かを買おうとかした時に、今だと価格比較サイトや評判などを検索して、なんて工程を、無料で簡単に肩代わりしますよ(その分、過去の購買履歴や嗜好などのデータ集められて、加えて売る側からのアフリエイト収益ですぐにでもペイしてしまいそうな気がします)、手間なく最もよい選択肢を提示しますよ、というサービスでしょう。
もし普及したら、それこそ普段から何でも相談しちゃう(あるいは、相談前に「これ、そろそろ欲しいんじゃない?」と提案してくる)世界が来るのではないでしょうか?
個人的には全部のデータを渡すのは気持ち悪い気もしますが、そういうのを気にしない方々からしてみると、どっかで一気に広まってもおかしくない気もします。
特に、「間違いたくない」という心理がとても強いような気がして、だからこそ、新NISAはある特定のファンドに集中したり、比較サイトのランキング上位商品が圧倒的な売れ筋になったり、ということが起こっているのでしょうから、AIエージェント、広まりそうです。
それにしても、松下幸之助さんのAIと話してみたい、という方が個人的には強いですが…
3、独占禁止法上の問題?
で、この記事自体はこのような読まれ方をされるのを期待しているモノだとは思ったのですが、個人的に興味を持ったのはちょっと別のところにあります。
それは、「AIとAIが取引した場合の独占禁止法上の問題」です。
「AtoA」取引が進むと、お互いに値段が一つの大きな決定要素になります。で、お互いとんでもないリサーチ能力がありますから、何が起こるかといえば、価格競争、ではなく、価格の収斂が起こるのではないでしょうか?
つまり、エージェント側はベストな提案をするために、常にあらゆるサイトの価格をチェックし、最安値のサイトを探します。 ECサイト側も競合サイトの価格を調べ安くすると相手も同じロジックで価格競争になるので、同じに揃えようとします(利益を最大化するというロジックも入っているので)。
となると、価格カルテル(談合)と同じような状況が起こるわけです。
もちろん、申し合わせて同じ価格にしたわけではありませんので、問題ない、といえますが…
では、当事者であるAI(chat GPT)に聞いてみましょう。
…10個も論点が出てきましたね。
「談合の自動化」って…
あとは、AIエージェント、という観点では、契約行為を事後に自分の意図したものでなかった、ということで契約者が取り消したい場合、どういう取扱いとなるのか、というのも興味があります(クーリングオフ期間中ならいいのでしょうが)。
4、まとめ
いかがでしたでしょうか?
AIが進むと仕事がどうなる、という観点は気になるのでよく話題となっているのをみますが、こうした価格の硬直性といった、地味ですけど実は実生活にはインパクトのある議論ってあまりされていない気がしています。
日経新聞の記事を読んで、気になっていたことでもあったのでメモしてみました。
個人的にはモノを買うのにあれこれ悩んでいる時が一番楽しいので、、とか思ったのですが、よく考えたら、そういうのは一部の嗜好品で、あまり興味がないけど買わないといけないようなものは、失敗のないモノを選んでくれるならそれはそれでありがたいかなぁ、と。
すくなくとも、松竹梅の選択肢をパパッと提示してくれるのはとっても便利かも知れません。
でも、今でもあちこちのサイトやお店を比較するのと同じように、AIエージェントも複数のエージェントにあちこちに聞いてみる、なんてことが起こるのでしょうか…
AIエージェントの比較サイトができたりして…
最後までお読みいただきありがとうございました。
例によって新聞記事から連想した個人的メモでしたが、どこか参考になるところがあれば嬉しいです。
本年もよろしくお願いいたします。