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『マーケティングとは「組織革命」である。』森岡毅著
USJの再建をリードされた森岡毅さんの書かれた本を読みました。
ちょっとマーケティングを勉強しよう、と思って買った本の中の1冊だったので、読んでみてびっくりだったのでメモ。
1、組織論>マーケティング
マーケティングで有名な方なので、マーケティングのことが学べるだろう、と思って読み始めると裏切られます。
なぜならほとんどが組織論と組織内でどう自分の意見を通していくかという内容だからです。
それは、森岡さんの強い思いが込められています。
V字回復したUSJでの経験を振り返ると、真っ先に頭をよぎるのは「ヒト」と「組織」がめちゃくちゃ大事だと言うことです。マーケティングのノウハウは重要ですが、そのノウハウを“実行できる組織“を同時に構築できなければ、業績を継続的に向上させることはできません。
実際、ビジネスで最重要な「ヒトと組織」の本質を理解できる本として本書を読むと、具体的な方法を組織や相手のタイプに分けて丁寧に、経験に基づく実例と共に詳しく解説していますので非常に参考になります。
また、その前段として、理想の組織を体に例えて論じているのですが、それも例えとして非常に分かりやすく腹落ちしやすい内容になっています。
ですので、今、担当者や中間管理職の立場で提案を通したり組織を変えたりするにはどうしたら良いか、という悩みを持つ方に最も役に立つ本と言えます。
2、本書の構成と概要
Ⅰ 組織に熱を込めろ! 〜「ヒト」の力を活かす組織づくりの本質〜
Ⅱ 社内マーケティングのススメ 〜「下」から提案を通す魔法のスキル〜
Ⅲ 成功者の発想に学べ! 〜起点となって世の中を変えた先駆者たち〜
の3部構成です。
Ⅰ 組織に熱を込めろ!は、
組織を活性化させる方法についてで、会社規模で見た組織運営という視点に留まらず、人間の本質を理解することでチームリーダーがそのチーム内の生産性を高まるにも役立つ内容です。
Ⅱ 社内マーケティングのススメは、
本書の最大のテーマでもある、1人の人間が下の立場から会社を動かすための方法を過去の筆者の経験なども交えながら具体的に書かれています。熱意を持ったアイディアをお持ちで会社を変えたい、変えられる、とお考えの方、そこまで行かずとも、上司の承認を取るのに苦労されている方にも役立つ内容です。
Ⅲ 成功者の発想に学べ!は、
ちょっと他とは毛色が違っておりまして、セブンイレブンを日本で最初に作った鈴木セブンアンドアイホールディングス名誉顧問、作詞家の秋元康さん、など4人の方と森岡さんとの対談記事です。
3、印象に残った点
第2章 マーケティング革命とは「組織革命」である。
マーケティングに限らず、策を立てるより実行する方が100倍難しい、とした上で、その解決策として、マーケティングだけでなく、商品開発、営業も内包する、「マーケティング・システム」を持つべきで、これにより、“作ったものを売る”から、“売れるものを作る”になるのだ、ということです。
実際、外資系ではこういった組織構造が多いです。
一方で、日本では「営業」という組織はアメリカでいう「sales」とは異なり、一部宣伝費などマーケティング的な予算や機能を持っていたり、商品開発部門も営業の意見を聞いたりしている場合があります。ともすると、マーケティング部は顧客調査なんかをやって、その分析結果を商品開発や営業に連携する、ということに留まっているケースが多いです。
森岡さんはこれがいけない、マーケティングが商品開発も営業もコントロールすべきだ、という主張です。
その前提となる結果責任もCMO(チーフマーケティングオフィサー)がとるべきで、とらないCMOはいらない、としています。
ここは、マーケティング部が機能していない企業に在籍していますので、大賛成です。一方で、CMOがカバーする範囲が広くなりますから本当に優秀な方にやっていただく必要があろうかと思います。
第3章 理想の組織とは「人体」である。
先にも述べましたが、組織を「人体」に例えて説明されていて分かりやすいです。
まず、人体では「感知→判断→行動」が超高速で行われていることを紹介し、これは組織で言えば、現場から正確な情報がすぐに上がり、経営も瞬時に対応を判断し、その判断がすぐに現場に伝わり対応するということになるので、人体は理想の組織だ、という説明があります。
これだけでもなるほど、なのですが、さらに脊髄反射(脳の判断を待たないで緊急対応をする)の例をあげ、
☑️ 内容によって意思決定権限が明確に委譲されている
☑️ その権限を自覚し、逃げずに権限を行使する
☑️ 百発百中で機能する
という点で、危機管理として素晴らしいとしています。
加えて、
☑️ 人体組織はそれぞれの役割が明確でお互いを支え合い、上下関係ではなく、明確な役割による共存関係で繋がっていること
☑️ 戦うべき共通の脅威は人体の外にある、という点でも『内ゲバ』がないこと
からも、理想の組織と言える点だと指摘しています。
確かに、権力争いとかしないですよね。人体は。
第6章 自分起点で会社を変える個人技
第6章から第10章までが第二部ですが、この第二部では下の立場から会社を変えていく、提案を通していくにはどうしたら良いか、を細かく説明されています。
読むと「そうそう」と思うことが多いとは言え、森岡さんの圧倒的なこれまでの「ぶつかり稽古」と対策をロジカルに考え続けたことが裏付けとしてありますので、非常に勉強になります。
その中で、第6章の
必要なのは自分に矢印を向ける覚悟
が印象に残りました。
原因は我にあり、ということで、下の立場から提案を上げる場合にうまく行かない原因で多いのは、自分の視点でしか物事を見れていない、自覚なしに視野が狭すぎることだ、と指摘しています。
長いのですが、私が耳が痛かった部分を引用します。
相手のことを深く考えないで相手を従わせることができるのは、強力な職務権限で人に何かを強制できる一握りの人だけです。下の立場から変えたい人は職務権限には頼れないので、別の強力な武器が要るのです。そう、我々には「スキル」が必要です。上の人よリも頭を使わなければ、「下の立場」から何かを変えることはできません。
にもかかわらず、視野が狭いだけならまだしも、もう少し悪いケースになると中には「わかってくれない」「会社は理解してくれない」と、すぐに大きな不満を抱えてしまう人がいます。まるで自分の提案を買う義務が上司や会社にあるかのように勘違いしているのでしょうか!?
4、まとめ
他にも印象に残ったことたくさんあるのですが、全部になってしまうので思い切って3つに絞りました。
マーケティングを勉強しようと間違って手にした本ですが、最近の私の問題意識ともぴったりだったために非常に面白く実践的な内容に思えました。
何より、文章から熱量が伝わってくるような感じがすごいです。
☑️ 中間管理職の方、社内資料や提案を作る立場の方
☑️ 会社は変わる必要があると思うが、どう提案していいか分からない方
☑️ 実践的な組織論に興味がある方
にお勧めします。
問題は、これ、買ってから3週間ぐらい積読だったんですよね…
もっと早くに手にとっていればよかったです。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
何かお役に立つことが少しでもあれば嬉しいです。