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君想ふ あの日


寝惚け眼だったのでしょうか
またも打ち損じてしまったのです

大切なあなたの大切な仕事に 
とんでもないお荷物を増やしてしまいました
まさかこれが虫の知らせとも知らずに

それでもあなたは怒りもせずに
いいよ分かったよの一言だけ残し
いつものように沢山の人の
沢山の宝が詰まった鞄を担ぎ上げ
いつもの街へと出掛けて行きました

電話が鳴りました
私が取りました
頭の中は真っ白でした
気が付けば棒読みのまま上司の前に居ました

大切なあなたは死んでしまいました
悪い人から沢山の人の
沢山の宝が詰まった鞄を守って
私の大切なあなたは死んでしまいました

私は階段の踊り場で
只々泣き叫ぶことしかできませんでした

眠って起きた記憶もないまま
私は今日もいつもの場所で
いつものように送り過ごしていました

本当を言えば昨日はずっと眠り続けて
可笑しな夢でも見ていたのだと
思っていたかったのです

めくるめく間もないままに
私の大切なあなたは細長い木箱に
身を変えていました

それを見つめたまま動けない私に
横風がすっと通り過ぎて
肩まで伸ばした髪だけが
ただ揺れていました

間もなく夢を見ました
いつもあなたが居た部屋の中で
私だけ一人ぽつりと立ちすくんでいました

よく来たね僕はほらこんなに元気だよと
話しかけているみたいに
まるでブロマイドのような満面の笑顔の
あなたの写真が飾ってあるのでした

大切なあなたはきっと
今は辛くはないのですね


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