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世界の欠片

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ショートショートを公開します。
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2015年6月の記事一覧

『世界の欠片』もくじ

【作品紹介】[フィクション]

pixivに移転しました。
いずれこちらは削除します。

ショートショート集。

色んな世界の欠片たちを集めました。
不思議な世界観を目指しています。
ちょっとゾクっとしてもらえたら嬉しいです。

【水中藤】にて友人二人に朗読をしてもらっています。

よければこちらにもお越しください。

小説の長さについて

【もくじ】わすれたもの

ナイフ

夢であいましょう

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わすれたもの

[ショートショート]

 いつもと変わらない、けれど好きな音楽を聴きながら、いつもと同じ道を無心に歩く。そうすればいつものように気がついた頃にはマンションの前。それがいつも通りの生活。越してからほぼ毎日変わらず同じ日々。とはいえ、越してきて半年から一年しか経ってはいないはず。けれどどのくらい経つのか、はっきりとは覚えていない。ただ、もっとずっと前からここにいる気もしているのは何故だろう。
 ごくご

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ナイフ

[ショートショート]

 あれは夢だったのでしょうか?
 大学に向かう列車の中。
 私は二人と二人、向かい合わせで四人座れるボックス席に座っていました。私の席は通路側の進行方向を向いた席。彼女は斜め向かいのちょうど日光が当たる席。
 色は青白く、目鼻立ちははっきりとし、少し伏し目がちに本を読んでいたその目は鋭く、瞳は何をも映すことのないかのような漆黒で。
 私は彼女を一目見た時から何故か、ナイフの

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夢であいましょう

[ショートショート]

 それは家に帰る列車の中、窓を背にして二列向かい合わせになった席の真ん中が私の特等席でした。

 ある日疲れ果てていた私はいつものように目を瞑っていました。車両には私一人しかいなかったため、周りを気にする必要もなく、気づかぬうちに眠ってしまっていたのです。
 ふと目を覚ますと、辺りは真っ暗になっていました。しかしそれは、単純に日が暮れた暗さではありません。もしそうであるなら

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レモン

[掌編]

 初恋は叶わない。そんな話を聞いたのはいつだったろうか。レモンに例えられるそれは、甘酸っぱいものらしい。
 遊園地ではしゃぐ君にカメラを向ける僕。きっと二人は恋人同士に見えただろう。
 モデルを目指す彼女と、カメラマンを目指す僕。利害関係の一致というやつだ。いつだって二人で歩いている僕らを噂する友人たちに、問いただされては苦笑いで否定する。胸の奥が痛むのなんて気が付かないふりでやり過ご

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美少女感謝祭

[掌編]

 青から赤に変わる空を仰いで息を吐く。公園に響く五時のサイレンが、懐かしい歌を記憶の向こうから運んできた。
 思い出すのは彼女の笑顔とその声、名前を呼ぶ綺麗な形の唇。
 皆が噂するクラスメイトと付き合い始めたと、告白した時にはずいぶんと羨ましがられたものだ。友人たちにからかわれながらふと見た彼女は、目が合っただけで顔を赤くして。こっちまで恥ずかしくなって俯いた。
 勉強の出来た彼女と同

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