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海外と日本のゲームを繋ぐ「ローカライズ」の重要性とその難しさ。&歴史に残るべきローカライズ作品紹介

少し前、ゲーム界隈であるローカライズ作品が話題になった。

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みんな大好き「among us」の日本語フォントがクソダサかった問題だ。
ゲームをやるに当たって文字を読む必要はほぼ確実に発生する行為であり、フォントがダサいとなんかこう…気持ちがちょっと削がれるのもわかる。
しかし我々が「日本語」という世界でも珍しく難しい言語を使っている以上、仕方ない面もあるということをこの記事では理論立てて解説していきたい。
この記事を読んだところでゲーム業界の翻訳が変わるわけではないが………翻訳家さんたちの苦労とかに触れてもらって、ローカライズに対する許容範囲が広がったり、逆にいつもやっているゲームがどれだけ頑張って翻訳してくれているかというところに目を向けてくれれば幸いである。

そもそも「日本語」は翻訳向けじゃない

表題の通り、そもそも日本語は翻訳向けじゃない。
なぜそう言い切れるのか?
まず一つ目に、「文字のバイト数が違う」ということが挙げられる。英語は1バイト文字なのに対し、日本語は2バイト文字。中国語やハングル文字なども2バイト文字である。そうすると何が起きるか。テキストボックスに文字が収まりきらなかったり、ものによってはそもそもプログラミングをし直さなければならなかったりするのだ。かなりの労力を必要とするだろう。

これだけでは終わらない。
二つ目は「そもそも言語が難しい」ことだ。日本語というのは世界でもトップレベルに難しい言語だとされており、文法も海外の方から見た場合めちゃくちゃな順番で並んでいる。しかも、一人称を表す英単語は「I」なのに対し日本語は「俺、僕、私、自分、儂、ワタクシ、うち、拙者、某・・・・・」と、無数に存在する。それを翻訳家のセンスと作品への理解力で決めるのは中々難しいところだ。さらに、主人公が女性か男性かを選べる作品だと「英語版だと同じセリフだけど、日本語に訳す場合は男性口調、女性口調に分けなければならない」ということもあり、難しさを加速させている。

そして最後にしてクソダサフォント問題のかなり大きな要因となっている三つ目、「字が多すぎる」。
そもそも英語は全体を通してA~Zまでで26字、そこに小文字や数字や記号を入れても合計100字ぐらいでおさまるだろう。海外ではフォントを世界観と併せて自作しているゲーム会社も多い。しかし、日本語はどうだろう。50字のひらがな、カタカナはまだいい。漢字である。途方もない量の漢字が存在するのである。と、なると、どうなるか?フォントのライセンス料も高くなり、それほど大きくない会社のローカライズはデフォルトでついてきているフォントを使うことになるのだ。
そうして出来上がったものが、違和感のあるフォント&機械翻訳のゲームである。

ここまで読んでもらえればわかると思う。悲しいが、仕方ない。
翻訳しづらい言語を使っている我々にも、責任はあるのだから…。

(とは言いつつも、最近はインディーでも作中の雰囲気を壊さないようなフォントを使ってある程度のクオリティを保った日本語版を出してくれるところはかなり多くなった気はする。)

歴史に残るべきローカライズゲーム

ここまでいろいろ日本語に翻訳する難しさを書いてきたが、当然素晴らしい翻訳が行われているゲームもたくさんある。というか最近はどこもかしこも翻訳を頑張ってくれているので私のような英語弱者としては感謝してもしきれないほどだ。
せっかくなので、わたしがゲームをプレイして特に気合が入っている、歴史に残るべきだと感じたローカライズが行われたゲームを複数上げていこうと思う。

Borderlandsシリーズ(ローカライズ:2K Japan)

ハイクオリティなローカライズ作品と言えばなにか?とゲーマーに聞いた場合、Borderlandsシリーズを上げる人は多いだろう。プレイした人ならわかると思うが、このゲームのローカライズではただ英語を日本語化するだけではなく、しっかりとローカライズを世界に落とし込んでいることが分かる。しかも吹き替えにもかなり力が入っている。作品のマスコットキャラであるクラップトラップの日本語吹き替えは本当に素晴らしい。ローカライズ前のうるささをそのまま日本に持ってきたかのようなキャラクターになっている。(誉め言葉)
本来のゲーム体験を損なわない翻訳作品の一つのランドマークと言えるだろう。

BioShockシリーズ(ローカライズ:2K Japan)

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これもまた素晴らしい。とくに一作目の翻訳が素晴らしい。何かを言うとネタバレになってしまうかもしれないので深くは語らないが、物語の根幹にかかわる部分のセリフを、あのような形で翻訳したのは美しい意訳だと私は思っている。あとインフィニットのブッカーとエリザベスの吹き替えも本当にカッコイイ。ブッカー・デュイットの強さと弱さが同居しているような声も、エリザベスの芯の強さを感じるセリフも、素晴らしい吹き替えで聞くことができる。
以下の記事で少しバイオショックインフィニットの翻訳に触れている。

The Last of Usシリーズ(ローカライズ:SIE)

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2020年に最新作が発売されたラスアスシリーズも、素晴らしいローカライズを誇っている。声優さんの演技も相まって、世界の悲惨さ、救いのなさを肌で感じることができる。
何と言ってもジョエルとエリーの掛け合いが良すぎる………。(Bioshock Infiniteと構図はほぼ一緒、だがそれがいい。酸いも甘いも経験しているおじさんと未熟な少女がお互いに成長していくストーリーはいつ見ても最高になってしまう。)

アンチャーテッドシリーズ(ローカライズ:SIE)

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トレジャーハンターであるネイサン・ドレイクが、世界中の財宝を探し回るゲーム。「やべやべやべやべやべ!」ってすぐ言う。吹き替えの質はかなり高く、登場人物同士の掛け合いには思わず笑ってしまうシーンも多々ある。(海外のジョークって翻訳するの難しそうなのに、しっかりと笑わせてくるのは流石)
グラフィックもかなり良く、かなり作り込まれた街を破壊しながら駆け抜けるだけで終わってしまうシーンはあまりに贅沢で衝撃を受けた。

Ghost of tsushima(ローカライズ:SIE)

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2020年キラータイトルのひとつ。元寇後の対馬を舞台にした純和製のゲームのように見えるが、実の所は海外の「Sucker Punch」というスタジオが作ったゲームだ。しかし、海外産とは思えないほど「日本」を表したゲームとなっている。翻訳もしかりで、ただ英語を日本語に翻訳するのではなく、時代背景やキャラクターの思想などを反映してローカライズしたというのだからさすがだ…となる。詳しくは以下の記事で書かれているので見てほしい。一時期Twitterでも流行った「誉れ」という言葉にも触れている。

HITMAN(ローカライズ:スクウェア・エニックス)

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このゲームもなかなかイカれている。基本的には暗殺以外何でもできるバーコードハゲことエージェント47がターゲットを様々な方法で暗殺していくゲームなのだが、その手段の多彩さが魅力である。そして、その多彩な暗殺方法を行う際の音声が全て日本語吹き替えになっているのだ。これは本当にすごい。誰と話しても、どんな手段をとっても日本語で反応が返ってくるのである。おそらくかなりの量の吹き替えが行われたと思われる。ドラマーになったり、ダンスゲームをやったり、占い師になったりしているバーコードハゲに対して日本語でツッコミが入るのはなかなか楽しい。それゆえに、2では日本語吹き替えが無くなってしまったのが残念。コストの問題があったんだろうなぁ…って思ってる(間違いなく採算とれねぇな…と思った)
最後に一つ!1作目はマップに北海道があるぞ!!エセ忍者になって手裏剣でターゲットを殺せるのはHITMANだけ!
(PC版だと日本語パックをDLCとしてDLしなければならないため、ちょっとめんどくさい)

VA-11 Hall-A(ローカライズ:武藤陽生さん)

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インディーゲームのローカライズの見本となるべき作品。会話が主なゲームなので、ローカライズは大変だったと思うが、すんなりとはいってくる文章となっているのは本当にすごい。世界観に合わせたフォントを使っているのも最高。
会話の内容がハードな下ネタだったりすることが多く、翻訳家さんのセンスとボキャブラリーがかなり問われる作品だったにもかかわらず、原作の雰囲気を壊さずに翻訳していただいたことには感謝しかない…。

ウィッチャー3(ローカライズ:スパイク・チュンソフト)

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翻訳された大作ゲームの中でも正直ぶっちぎりのクオリティのローカライズを誇るんじゃなんじゃないかと思う作品。作中に存在するあらゆるものが翻訳されているが、原作の雰囲気を全く壊していないのが凄すぎる。しかもその大量の翻訳を行いつつ海外と同時発売を達成したという狂気に片足突っ込んでるような作品。主人公、ゲラルトの日本語吹き替えはハマリ役すぎて海外のゲーマーが日本語吹き替えでプレイするほどだったという。下のリンクからこのゲームの翻訳を手掛けた本間覚さんのインタビューを読むことができるのでぜひ読んでみてほしい。


Cyberpunk2077(ローカライズ:スパイク・チュンソフト)

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発売されてから現在まで、家に帰ったらこれしかやってないと言っても過言ではないほどハマってしまった作品。日本における最強の翻訳家である本間覚さんと西尾勇輝さんの2人がタッグを組んで翻訳を行っているので、現在までに発売されたゲームの中ではトップもトップ、最高品質のローカライズだと言える。ゲーム内に出てくるあらゆるものが翻訳されており、アイテム説明、他人のメモ、TV、インターネットサイト…などなど、圧倒的情報量を誇る文章を全て翻訳してしまったというのだからとんでもない。しかも、作品の原作となっている「cyberpunk2.0.2.0」の内容を踏まえて翻訳してくれているので、世界に対する違和感も一切無く、日本語しかわからなくてもどっぷりとナイトシティに頭まで浸かることが出来る。
余談だが、下記の記事によると作中に出てくる英単語は洋書の指輪物語とホビットを全て合わせた文章より多く、音声として流すと19日半ほどかけてやっと流し終わる量だったらしい。
この量のローカライズが行われて原作のゲームと変わらない体験をさせてもらえるなんて、本当にいい時代に生まれたな…と思う。


愛のなせる技、素晴らしい有志翻訳

翻訳されたゲームの中には、公式に日本語がサポートされていないゲームもある。そこで有志翻訳である。
有志翻訳とは何か?簡単に説明すると、ゲームの公式ではサポートしていない言語に対して、様々な方が仕事ではなく個人的に翻訳したものである。完全に趣味や布教の領域であり、お金も出ていないので本当に有志翻訳を行ってくれるゲーマーの方々には頭が上がらない。現在は共同で有志翻訳を行う方々も多く見られ、グーグルスプレッドシートなどを共有して作業を行っているのをよく目にする気がする。
ここでは、日本ゲーム業界に爪痕を残したレベルの有志翻訳作品について数点紹介しようと思う。

A Short Hike(翻訳者:yupikaさん)

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ゆったりと時間が流れる島で都会の波にもまれて疲れた鳥が、山の頂上を目指す作品。優しいグラフィックと個性豊かな島の住民たち。彼らと話をしながら、悩みを解決したり、素晴らしい景色にぼーっとしたり、魚を釣ったり…。というような、まさに優しい作品である。このゲームには現在、公式の日本語翻訳が存在しているが、追加されたのは去年の9月末あたりだった。
それまではyupikaさんに作成していただいた有志翻訳のみだったのだが、これのクオリティがかなり高かった。公式の翻訳と言われても信じる。作中の住民たちの言い回しフォントの柔らかさ、どれをとっても素晴らしい翻訳であり、この作品は私の記憶に強く残った。
下にyupikaさんのnoteを貼っておくので、ぜひ見てスキしてくれ…。
最後の文章が「ああ、この人は本当にゲームが好きなんだなぁ…」と感じられてとても好きです。

Doki Doki Literature Club!(翻訳者:有志翻訳者の方々)

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このゲームの名前は聞いたことがあるかもしれない。よく実況が行われているイメージがある。
しかし実のところ、このゲームには公式の日本語が存在しないのだ。あまりにもすんなりとはいってくる日本語なので、もしかしたら日本のゲームだと勘違いしている人がいるかもしれない。まあゲーム制作者が「日本語から翻訳したかのような英語」で文章を作っていたらしいので間違いではないのだが…ちょっとややこしくはある。
なんせ、海外の制作者が「日本語から翻訳されたような英語」を意識して作った作品をまた改めて翻訳するのだ。難しいことは容易に想像できる。
しかし、有志翻訳の方々はそれをやってのけた。そのおかげで、今では日本語で文芸部の女の子達とイチャイチャ(?)することができるのである。感謝…


Helltaker(翻訳者:陽炎01型さん)

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VanRipperさん( https://twitter.com/vanripperart )が作った、地獄のかわいい女の子たちを死ぬ覚悟でナンパするゲーム。
BGMもゲームの難易度も非常にバランスよく作られている。しかし、何よりもこのゲームが優れている点…。それは、女の子の可愛さである。全キャラデザインが良すぎる。大変なことですよコイツは……どのキャラもかわいすぎて困ってしまう。しかし、このゲームも日本語がない。そこで翻訳を行ってくださったのが陽炎01型さん( https://twitter.com/kagerou01gata )。
英語版の女の子たちを可愛さ120%の状態で日本に届けてくれた。
そのおかげで6月ごろのインターネットではヘルテイカーブームが巻き起こり、いっぱいかわいいイラストが見れてとても嬉しかったことを覚えている。
なお、ゲーム自体はすぐ終わる作品であり、サクッと遊べるいい作品なのだがアフターサービスが充実しまくっている。ツイッターでVanRipperさんが、作中のキャラが出演している漫画を描いてくれており、それだけでもう感涙モノだが、陽炎01型さんがそれを日本語に翻訳してくれている。もうね、最高。本当にありがたいですね…。ゲームをクリアしても、まだまだ話は続いていくギャルゲー(?)として最高の作品なので、ぜひみんなも地獄で女の子をナンパしまくろう!
陽炎01型さんのnoteで今まで翻訳していただいたHelltaker漫画がまとめて読めるよ。


Undertale(翻訳者:有志翻訳者の方々)

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最後に上げる作品は、PCでゲームをしているなら確実に知っていると思われるほど有名なインディー作品、Undertaleである。この作品があらゆる面で素晴らしいのは今更言うことではないが、その素晴らしさを享受できたのにも、有志翻訳の方々の努力があったからだ。実はこのゲーム、発売されてから二年ほどの間は日本語が存在せず、有志翻訳が日本語でプレイする唯一の手段だった。しかし、この有志翻訳があったからこそ、Undertaleは世界から日本へ伝わり、誰もが知る名作となれたのだ。翻訳もかなり凝っていて、キャラ同士の掛け合いなどはプレイ中に翻訳だと感じさせないほど自然だった。
公式の日本語の配信開始と同時に配布が停止しており、現在は手に入れる手段が無くなっているが、配布が終了したときにTwitterのトレンドに入るほどの影響力を持って愛されていた有志翻訳を、私はこの作品以外に知らない。


最後にざっくりまとめ

海外でのみ注目されているゲームは多々ある。それを、日本語に翻訳してくれる方々のおかげで、日本語しか扱えない私でも、世界に無数に存在する素晴らしいゲームをプレイすることができる。そして、今日のインディーゲーム界隈は盛り上がっていけるのだ。

後半は長々と素晴らしい翻訳作品について書いていったが、最後に翻訳にかかわっているすべての方々に感謝の言葉を送り、そろそろこの記事を締めようと思う。


貴方たちのおかげで、私は今、楽しくゲームができています。ありがとう。


このゲームのローカライズもすげぇぜ!って作品あったらいつでも教えてください!待ってます…

あとがき:早く翻訳してほしい作品を乗せておく
(Disco ElysiumとHadesとRajiの翻訳はいつ出ますか…?)



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