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分身ロボットカフェの帰り際、五歳の娘は「寂しい!」と言った
まさかロボットに心を掴まれるとは。しかも入口から。
手加減なしのオッサレ感。”スナック織姫”は大人も可。
テーブルサービスしてくれるロボットに興奮。のち感謝。
そこには、テクノロジーを凌駕するサービス精神がありました。
先日、分身ロボットカフェ、というところにいってみたお話。
場所は東京・新日本橋。”新”がつくとピンとこない。
ロボットがお給仕してくれるカフェがあるけど、いってみる?
もうそれだけで、5歳の娘はテンションが上がるわけです。
ロボットがお給仕、というパンチライン。
「ロボット?!行く行く!」
と興味津々の娘を連れて(妻は寝坊で欠席)、東京の新日本橋というところに向かいました。
正直、新日本橋といわれても、ピンとこない。日本橋なら多少知ってますが。
調べたら、日本橋三越のすぐそば。エントランスのライオンが貧乏人をガルルと脅す、あそこです。ま、三越前駅から歩くか、と。
ただ、その三越前駅っつーのが、私が知っていた街並みから変貌を遂げていました。
地下鉄の改札から地上で出ると
「え?ここどこ?」
「COREDOってなんだよ。出口間違った?」
「んんん?三越どこ?」
はい。迷子です。5歳児を連れた43歳児が、迷子。
だって、人がぜんっぜん街を歩いていないんだもの。
三越でお買い物するようなベテラン紳士・淑女の姿が、いっさい見えない。
感染者拡大中だからですかね。暑いからですかね。その両方かも。
人類滅亡後の街を思わせました。
当然の帰結として、娘はおむずがりになります。
「暑い」
「のどかわいた」
「まだ?」
「疲れた」
「おしっこしたい」
主語という概念がないがしろ。
こっちはスマホの地図アプリを見ながらなので、娘への目配りもおぼつかず。
ええいままよと娘を肩車して、えっちらおっちら向かったわけです。
初めての道ってのは、遠く感じるものですね。
お店につく頃には、親娘ともどもヘトヘト。とにかく水を一杯おくれ、と。ここはサハラ砂漠かと。
まさかロボットに心を掴まれるとは。しかも入口から。サービス精神の波状攻撃ここから始まります。
だったんですが。お店の入口から中を覗いた瞬間から
「あ、来てよかった。ここは正解。いや、成功」
と思いました。
それがこれ。
![](https://assets.st-note.com/img/1659098338249-M7JJZ7j1U1.jpg?width=1200)
そう。ロボットがお出迎え。まさにロボットカフェ。ちなみに「えっへんポーズ」というのもあります。
当然、娘は我先にとお店に駆け込んで行きました。
しかも。
「いらっしゃいませー」
しゃべった!
いや、ロボットだからしゃべるでしょ。
とは思いませんでした。何かが違う。
「握手もできるんですよー」
娘はおもむろに手を伸ばし、新人候補の選挙活動ばりに握手に応じます。
やっぱ、なんか違う!
人を喜ばせるコツを心得てらっしゃる。なんか、人たらしの香りがする!
ロボットだから、と、ロボットなのに、がいっぺんに。
ちなみに。このロボットのパイロットはイトさんという方でした。かなりの手練れです。
(あ。ロボットは、サービス精神拡張技術なんだ)
私が心を掴まれた瞬間でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1659098263974-OImxsxoq6N.jpg?width=1200)
お店のリーフレットが、こちら。
「すべての人に社会とつながり続ける選択を目指して」
もちろん、ロボットの向こうには操作している方(あらためてですが、パイロットと言います)がいらっしゃって、みなさんいろいろなお身体などの事情がある、というのは知っていました。
テクノロジーやロボットというインターフェースで、そういった課題をどう乗り越えようとしているのか。
とても興味があったのでやってきた、というのもありました。
しかし。なんかそういう理屈っぽいの、どうでもいいや。
軽々とびこえちゃった。
障害は、パイロットの皆さんのいち部分にすぎない。
そこしか見ないのでは、このお店はもったいない。エンジョイしよう。
はい。がっつりつながりましたよ、のっけから。親娘ともどもね。
店内は、手加減なしのオシャレ感。いや、オッサレ感。一人、デート、家族連れ、なんでもござれ。スナック”織姫”はナイトタイムに大人もお酒を楽しめる。
で。
このお店がすごいのは、ロボットだけで満足していないこと。
店内が、とにかくおしゃれ、すてき、雰囲気がいい。同じこと言ってる気もしますが。
しょうがない。こっちはふだんルノアールとドトールしか行かないんだから。
ロボットが看板になっている分、無機質になりすぎないよう、バランスをとるようにウッディで温かみのあるインテリアデザインに仕上げてる。んーここは落ち着ける。
なので、一人でパソコン叩いている人もいれば、デートと思しきカップルも。
でも、お客さんの半分くらいは、子ども連れのご家族でした。
客層バラッバラ。
でも、どのシーンでもしっくりくつろげる意匠が施されていたのが印象的です。
![](https://assets.st-note.com/img/1659108503518-KA7rV06LsA.jpg?width=1200)
写真にはおさまってないのですが、店内奥にはバーカウンターがあり、天井からはスナック織姫のネオンサイネージがぶらさがっています(確か)。
そして壁棚にはハードリカーの酒瓶がキラキラずらり。
スタッフの方に質問したら、スナックタイムを用意している日もあるとか。
ここでお酒飲んだら、ぜったい美味いし、楽しいだろうな、と。
ロボット、精密機械だけど。
Orihime席には、1卓1機ロボットがついてくれる。テーブルサービスに興奮。のち、パイロット・なおさんのサービス精神に感動。
見てこれ。
すごくない?
![](https://assets.st-note.com/img/1659109491788-39h7C3EfZk.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1659109476330-qitykpqdJq.jpg?width=1200)
さいしょはグー!じゃんけんぽん、ですよ!
実はこの日、思い立った当日に分身ロボットカフェに行ったんです。
混んでると困るので、予約して。
Orihime席という、1つのテーブルにロボットが1機ついてくれるというサービスつきの。
正直、想像がつかなかったんですよね。ロボットがついてくれるテーブルというものが。
ま、せいぜいメニューをとってくれたりするんだろうな、程度。
だったんですが。
はい。想像通り、想像を超えてきました。
Orihime席のロボットは、自己紹介とかだけじゃない。オーダーの仕方、おすすめメニューの紹介もしてくれます。
そしてご飯が来るまで、いっしょにおしゃべりしてくれるのです
この日われわれの席についてくれたのは、なおさんというパイロット。
パイロットというか、もはや機長のサービス精神が、5歳の娘を惹きつけまくるわけですよ。
だって、ごはんが来るまで飽きさせないようにって、ジャンケンとかしてくれるんですよ?しかも、最初はグーですよ?
さらに。ロボットは手と首が動きます。なので、あっち向いてホイもしてくれました。
まー。娘がもう一回もう一回とせがむせがむ。
さっきまでの暑さバテはどこへやら。たのしくってしょうがない。
ロボの首もげるっつーの。
![](https://assets.st-note.com/img/1659098302591-5hITpkFiz0.jpg?width=1200)
ちなみにこの一枚は、なんらかの理由でなお機長がよろこんでいるところ。なんで喜んでいたかは忘れました笑。
たぶん、娘が喜んだことに喜んでくれた、みたいな感じだったと思います。
で。こちらがご飯を食べているときは(ご飯が美味くて撮るの忘れた。ほかにも撮るの忘れてるのたくさん。コーヒー淹れてくれるロボとか)、そっと席を外す、いや、スイッチをオフにする気遣いも。
ロボットはコンパクトでかわいいのですが、その向こうには細やかに気遣いできるちゃんとした大人がいました。渋い。
![](https://assets.st-note.com/img/1659098329171-hi9MpLSYhJ.jpg?width=1200)
こちらのロボットは、ジュースとお水をテーブルに運んでくれました。そこもロボットがやってくれます(こちらのパイロットの方はさとこさん。沖縄から遠隔操作をされてました。すげーーーー)
そう!これ!ロボットがやってくれる、わかりやすーい未来感!
ここもやっぱり、5歳の娘がテンション爆上がりポイントでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1659098321103-XaApJGwBtb.jpg?width=1200)
パイロットさん同士は、連携もします。なお機長は
「あ。そのロボットは、上から撮ると可愛いですよ」
「さとこさん、ちょっと止まって、上向いたげて」
などのやりとりも。
こちらはその時撮らせてもらった、ロボットの上目遣いです。
この後、興がのった娘は、まあまあ高いデザートを頼みやがり。
おいしいおいしいと貪り食っておりました(そりゃさぞかし美味かろうよ)。
場違いな親子に付き合ってくれたなお機長は、帰り際までいろいろなサービスをしてくれて。
その多くは、画像や通信をフルに使って、知恵と思いやりをこれでもかとこめてくれたもの。
その間、ずっと娘はロボットの目を見つめ続けていました(実はロボットの仏ボクロがカメラです)。
その目の中にいるはずの誰かの姿を、見出だそうとするように。
5歳の娘に「寂しい。また来る」と言わせた分身ロボットカフェ。まちがいなく夏の思い出。
ロボットのスイッチがOFFになる時、娘が言いました。
「寂しい。また来る」
ふと周囲を見ると、隣の席も、後ろの席も、よく見るとその向こうも子ども連れの家族でした。
そしてどの子も、ロボットとのやりとりを楽しんでいました。いや、パイロットとのやりとりを。
やっぱり、ロボットはサービス精神の拡張技術なのだな、と。
帰りの地下鉄で(駅まではやっぱり肩車)、娘にロボットとパイロットさんたちの話をしました。
いろんな人がいること。
テクノロジーのこと。
未来のことと人間のこと。
娘は
「今度は、すーちゃんとせっちゃんとあーちゃんと、みんなでくる」
と。
うん。またこよう。パイロットのみなさんも喜んでくれるんじゃないかな。
未来は、みんなが集まる場所から始まる。
そこに君もいてほしいし、テクノロジーはそれを広げてくれるってことも、知っておいてほしい。その先には、きっと人がいることも。出会いがあることも。
今度は、ママも連れてこよう。
寝坊ぶっこいてたとしても、叩き起こして。
なんて企みながら。
・・・叩き返されて終わりだろうけど。