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元・結婚情報誌編集者も思わず泣いた。二人の新郎を寿ぐ披露宴ムービー〜たった5分で多幸感100%の物語〜

映画祭で、披露宴ムービーを、流すの?

何かの間違いだと思いました。もし本当だったら世も末だと。
しかし、映画祭のフライヤーには、確かに書いてありました。
「結婚式披露宴ムービー(5分)」と。
その映画祭とは、札幌LGBTQ映画祭2022。2022年9月に開催していました。

私はかつて結婚情報誌の編集者兼ライターをやっていました。
なのでこのテの結婚式やら披露宴やらの動画は、ひと様よりいくぶん多く観ている自負があります。
ちょっとやそっとじゃ、心が動くこともありません。
寂しいですが、職業病の後遺症でしょうか。食傷気味と言えます。
まして、会ったこともないカップルのムービーなんて。

なのですが。これは、映画祭で上映されるとのこと。
札幌まで行くことはできないけれど、俄然興味が湧いてきました。この披露宴ムービーとやらに。
フライヤーによると、ムービーの制作者らしき二人はYoutubeでチャンネルをもってるらしい。探したらスグに行き着きました。それがこちら。

で、観た感想です。

か、感動しました・・・。

これはれっきとした映画だと、私は思いました。
ジャンルは”人生”でしょうか。
敵はいない。ピンチも悲劇も起きない。ただただひたすら幸せなだけの5分間。
でも。
いろんなことを二人で、みんなで乗り越えてきたんだろうな、と感じさせる行間のある作品。

ええ。落涙しましたとも。
両腕の毛穴がスタンディングオベーション。つまり鳥肌総立ちで、爽やかに泣きました。
・・・それも、かなりの序盤で。
「こうした動画には食傷気味」などと斜に構えていた自分が情けない。
イキッたボクサーが1ラウンドで返り討ちKO、の構図ですね。

会ったこともない他人様の披露宴ムービーを、妄想だけでうんぬん語るのは失礼千万(というか、どうかしてる)だとは承知のうえで、感想をどうしても書きたくなりました。なので、ここに記しておきたいと思います。
だって。それくらい素晴らしい作品だったから。

(なおプライバシーに配慮して、主役お二人以外の列席者はキャプションに含まず、あるいはボカシを入れてます。もし何か運命の悪戯でお二人の目にとまってしまったら・・・。勝手に書いたりキャプッたりしてゴメンなさい。ご指摘あり次第すぐに削除します)

開始18秒で「あぁもうダメ・・・(涙)」。印象に残るのは、二人の新郎と祝福者たちの”目の語らい”

ムービーはもちろん、二人の新郎が主役。結婚式・披露宴当日を記録したものです。
両家顔合わせがあって、入場して、友人・同僚の挨拶があって、衣装替えして、指輪交換して、宣誓して、みんなに祝福されながら退場。
セレモニーとしての構成は、いたってオーソドックスなものでした。

なのですが。ひとつ、私がほほ〜となったところがあります。
それは、当日朝の様子や、控室でのシーンがないところ。
つまり、二人しか知らないような、閉じられたオフショットがないのです。
(今の若い方には当たり前のことだったりするのかもですが)
門出を祝う記念すべき日ですから、普通は人情として盛り込みたくなるんじゃないでしょうか。
でも、それがない。

そのかわり、常に親族や来賓に対して視線を向けた構成にみえました。
それだけ二人がみなさんを大切にしているという証でもあります。

もちろん主軸は新郎二人ですし、当日の進行に沿って展開していくのですが、
カメラは丁寧に、程よい距離感で、親族・来賓の顔を捉えていきます。
そして、その人たちに微笑み返したり、泣き返したりする二人の様子も。
交わる視線がフワリと浮き彫りに見えてきそうなほど、目と目で語り合っている。

つまり。この披露宴ムービーは披露宴を映し取ったものではなく、
そこに集った祝福者たちとの想いの交信を映し取ったものなんだな、と理解しました。
羨ましい信頼関係、とでもいいましょうか。

だからでしょうか。みんなよく泣く。
主役の二人、泣く。
友だち、泣く。
同僚、泣く。
ご両親、意外と泣かない。
結婚式や披露宴ってそういう場なのですが、それにしても皆さんよく泣く。

もちろんそれは自然なことで、微笑ましくもよくある風景なのですが。
ゲイカップルであるという事情を一本の補助線にすると、涙の背景に想像が膨らみます。
今日この日を迎えるまでに、どんな紆余曲折や苦節があったか。また、笑いや喜び、勇気があったのか。
今だから笑顔で語れること。
今思い出しても、やっぱり泣けてくること。でも、今日は嬉し涙になったこと。
「もう、おめでとうとしか言いようがないよ!」
万感の思いを込めて、とはこういうことなのでしょう(ま、妄想なんですけどね)。


そして私がノックアウトされたのは、開始18秒。早っ。
お互いの親族に、自分の家族を紹介をするシーンです。
「あーーもうダメだこりゃーーー」
はい。もうここで涙腺崩壊。鼻詰まり。

普通の親族紹介でした。いたって普通の。
でもその普通が、というか普通こそが、いいのです。
ご両親やご親族が、とても素敵な表情で挨拶をしている様子が
胸に迫ってきちゃって、ダーーーーーーーっと。
もう大人なんだから、そんなに泣いちゃダメってくらい泣きました。

結婚情報誌の編集者してましたなどとうそぶかなくても、
ある程度の歳を重ねて、いろんな結婚式に出るとわかってきます。
ときどきあるのです。ご両家の親御さんが欠けている披露宴。
両親に祝福されない結婚。
みんながみんな軋轢やわだかまりを解消して当日を迎えられるとは限らない、というのを知っています。
だから
「あーーーーーよかった〜〜〜〜。そこ大事だからーーーーー」
と。なぜか観てるこっちがホッとしたといいましょうか。

別にさ。結婚くらい、二人の勝手にしたらいいとは思うんですよ。
親であっても口出しや、少なくとも阻むようなことはすべきじゃないと。
でもね。なんかこの主役の二人、ちゃんと親御さんに愛されて育ってそうに見えて。
だとしたら、二人が心から喜べる披露宴になってほしいなと。
(もう妄想と親心とおせっかいとでゴチャゴチャになってきました)

このご両親・ご親族だって本当は、いろいろな思いが胸を去来されているのかもしれません。そうだとしても不思議ではないですよね。
どうやら新郎二人は2018年に福岡市パートナーシップを宣誓しているようですが、私が編集者をしていたのも福岡県でした。
なので、個人の理解・無理解はさておき、ある世代の九州社会に通底する”男らしさ”についても、なんとなく察することができます。

しかし。それをオクビにも感じさせない、二人の幸せを何よりも最上位に置いているような表情でした。
いや、もちろん他人が他所から見て感想言ってるだけですから、ご家庭でどのような経緯を重ねられてきたのかは、知るよしもありません。

だとしても。ウンウンと頷くような表情で息子夫夫を見守る父上の顔は、
私がこれまで見てきた親御さんたちの表情となんら変わることのない、
誇らしさと、安堵と、寂しさと、祈りがないまぜになった表情でした。
(ああ、書いててまた涙腺が・・・)
あの表情を撮れただけで、この映像は名作である。と言っても過言ではないと思います。

もうね。そんなシーンがそこかしこに、なんですよ。5分間。
たった5分で、多幸感100%ですよ。多幸感の間欠泉ですよ。
自分でも何言ってるかよくわからなくなってきましたが、ぜひみなさんにご覧いただきたい、とだけは自信をもって言い切れます。
ぜひご覧ください!


会場とプランナーのセンスがキラッキラ。この場、その人じゃなかったら、映画祭クオリティにならなかったはず。

どうでもいいようで、実はすごく大切なのですが、とにかく会場がおしゃれ!センスいい!
正直、これも効いてました。
もうね。動画の画面をキャプってるから、この美しさがややボケなのが歯がゆいやら、悔しいやらで。

この披露宴会場じゃなかったら、おそらく映画祭で上映するクオリティにならなかったかもしれません。
それくらい素敵な会場。画になるんです。

かつて福岡は洗練された披露宴会場の名産地でした。今もそうなのかもしれませんね。
あ。福岡で挙げたとは限らないか。

それと。ウエディングプランナーさん、やりがいあっただろうな、とも思いました。

いわずもがな、結婚式においてウエディングプランナーは重要。
映画でいえば、脚本・監督・演出・プロデューサーですから。
結婚式は百万円単位の買い物でもあります。
結婚式の成功は、ひとえにウエディングプランナーの腕にかかっているのです(ハズレの人だと、悲惨なことになりますよ・・・)。

まして。残念なことに、まだ日本では定着していない同性愛者同士の結婚式。
ウエディングプランナーに知性、感性、社会性、経済感覚、そしてホスピタリティが揃っていないとままならないだろうな、と。
となると、こりゃ腕っこきのプランナーさんだろうな、と。

とかいって、意外とスタンダードな進行で済んでたりして。
だといいんですけどね。
こういう披露宴が”ありきたり”になる日が、一日でも早く来るといいなと願うばかりです。

主役二人は、まさたろさんとパンたろさん。披露宴ムービーは彼らのYoutubeチャンネルから。

この披露宴ムービーの新郎たちは、まさたろさんとパンたろさんとおっしゃるみたいです。

映画祭のフライヤーには
「結婚の自由をすべての人に訴訟 九州原告」
「2018年福岡市パートナーシップを宣誓」
とありました。
ま、これ以上のプロフィール詮索は無粋、というか無礼、というか不謹慎ですね。
二人で、みんなで、いろんなことを乗り越えてきたであろうことは、想像に難くありません。
それで十分かと。

そしてお二人は、各種SNSの他にYouTubeでマサパンチャンネルというのをもってらっしゃいます。二人の日常を発信してるみたい。
披露宴ムービーも、そこから見つけてきました。
はい。幸せ泥棒ですね。すみません。

もしかすると、映画祭で上映されたのは、本稿で紹介した動画とは別のムービーかもしれません。映画祭用に再編集されたもの。というか、その可能性の方が高いですね。
ま、いっか。感動したし。

最後に

私にとって、セクシャルマイノリティの方の結婚式や披露宴といえば。
脊髄反射的に、ずれやまズレ子さんの「友人代表」という歌を思い出します。

恋心を抱きながら、友達の結婚を祝う歌。しかも友人代表として。
かなーり昔に聴いてからずーっと今まで好きなんですが、改めて音源を探したら2021年にYoutubeにあがってました。
改めて聴いたら、また泣けました。

"命や名前を共に生きることが どれほどに特別か 忘れないでください♪"

ほんとに特別なことだよな、と思ったり。
特別じゃなくなる日が来るといいな、とも思ったり。
時代は変わったのかな。いや、変わってないのかもな。
まさパンの二人は、両想いになれてよかったな、とかね。

いまこの原稿は新宿の、とある公園に臨むカフェで書いています。
本当にいろんなカップルがいますね。
幸せになるために結婚という制度があるのに、
その制度が誰かの幸福権を阻害しているって、やっぱおかしいよね。
特別じゃないカップルなんてないのにさ。
早くまさパンの二人みたいなカップルが普通になる日が来るといいな、と願ってやみません。

おわりです。最後まで妄想にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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