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コンテスト応募作品

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noteでのコンテストに応募した作品をまとめました
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凡人上等!

凡人上等!

タワマン最上階に住んでない。

バカンスを過ごす別荘もない。

超売れっ子作家でもない。

特殊機関の捜査員でもない。

大富豪と恋に落ちてもいない。

「いつもの」で通じる行きつけの店もない。

マルチリンガルじゃない。

バズってない。

あれ?おかしいな。

地方在住、2児の母、パート勤務。イボに白髪に老眼にと、加齢現象と奮闘するアフラフィフの日常。かつての私はこの現実を見てがっかりするだろ

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あなたにこの命を丸ごとあげる

あなたにこの命を丸ごとあげる

2022年春。最愛の母が亡くなった。
享年72歳。

『多系統萎縮症』という進行性の難病だった。

発症したのがいつなのかは明確ではない。うっかり落とす、転ぶが続いた末、ようやく診断がついたのは東日本大震災の2年ほど前だった。

こどもらが巣立ち、孫にも恵まれた。金持ちではないが、老夫婦が人生の新たなステージを謳歌するには十分な豊かさがあった。ご褒美人生の始まり始まり〜っ!

そんな時に病魔が襲っ

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キミはどう生きる?

キミはどう生きる?

私にとって『未来を思い描く』ということは、我が子らを含めた次の世代の幸福を願うこと。

そう願う時、届けたい言葉がある。

***

2人の息子は共にテニス少年であった。

テニスの試合は基本セルフジャッジ。フォルトやイン、アウトなど、審判を立てずスポーツマンシップに則りプレーヤー同士でジャッジする。

小学生の頃、このジャッジをめぐり納得のいかぬまま負けた息子。試合後「相手のズルで負けた!」と癇

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うたかた古書店 第一章『創作大賞2024』

うたかた古書店 第一章『創作大賞2024』

プロローグ

『その古書店』は住所不定。

いつ、どこで開店するのか、誰も知らない。

名前すらない『その古書店』の蔵書はたった1冊。

都市伝説のようにそう語られる。

今日もどこかで『その古書店』の扉のカウベルが静かに響く。

カランコロン

蓮見結子の書

暑い!暑い!!暑いっ!!!

春休みが終わったばかりだというのに、ここ宮城でも連日続く夏日。

首筋を滴り落ちる汗を拭いながら、ギラつく

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うたかた古書店 第二章上田百合子編『創作大賞2024』

うたかた古書店 第二章上田百合子編『創作大賞2024』

上田百合子の記憶

「80歳になっても、いっしょにここのあんみつを食べませんか?」

上野の老舗甘味処。あんみつを食す最後の儀式、杏をスプーンで運び今まさに…というところだった。大きく口を開けたまま固まる。

正面には、そんなわたしのまぬけ面など目に入らないほど緊張した面持ちの上田孝太郎が、握りしめた拳を膝に、息をするのも忘れてわたしを凝視している。

この状況で杏を口に入れるか器に戻すかしばし悩

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うたかた古書店 第二章白玉編『創作大賞2024』

うたかた古書店 第二章白玉編『創作大賞2024』

白玉の記憶

ママの手はいつもガサガサしてる。でも、とってもあったかい。

ゴロゴロ。

ママはよくギターを弾いて歌う。ママの低い澄んだ歌声が好き。

ゴロゴロ。

ママはテレビの前で、よく笑ってよく泣く。

ボクはママが大好き。

だってママがボクに名前をくれた。

ママがボクをカゾクにしてくれた。

ボクには3匹の兄弟がいた。オッパイの下で丸まってた同じ匂いのする兄弟たち。

ある朝目が覚めた

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うたかた古書店 最終章『創作大賞2024』

うたかた古書店 最終章『創作大賞2024』

最終章

そっと本を閉じる。

溢れる涙は止まらない。母を亡くした悲しみ。何もできなかった後悔。父への罪悪感。全部、心の奥に無理矢理押し込んで見ないふりをしていた。

母が何より大切にしてきた家族なのに。今のわたしたちを見たら、どれほど心を痛めることだろう。このままでいいはずがない。

もしかしたら、母がここへ導いてくれたのかもしれない。「いつまで意地を張るつもり?世話がやけるわ。」なんて言いなが

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短編小説・朗読劇シナリオ『月の記憶』

短編小説・朗読劇シナリオ『月の記憶』

あらすじこれは100億年以上にわたる一途な恋の物語。遥かなる宇宙のとある銀河。数多の生命をその内に宿し、育み、青く輝く惑星。時に激しく、時に儚く、彼女はその命の光を揺るぎなく輝かせる。ボクはそんな彼女の傍らを公転しながら、静かにその生涯を見つめ続けた。

キミを抱きしめたい。ほんの少しでいい、キミの柔らかな大気に触れたい。でも、それは決して叶うことのない願いだった。

プロローグ

はじまりは「ち

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『創作大賞2024』47歳、まだ何者でもないワタシ物語

『創作大賞2024』47歳、まだ何者でもないワタシ物語

プロローグ47歳、二児の母、パート。

この物語の主人公ワタシは実に平凡な主婦である。しかし、この平凡な主婦は未だに己の可能性を信じて疑わない。自分は黄金色に輝く花の種を秘めているのだと。

なにかがある。
どこかにある。
いつかはくる。

そう。つまりはまだ何もない。何者でもない。そんなワタシの悪あがき物語、ここに始まる。

ワタシ紹介<性質>

・熱しやすく冷めやすい
・七転び八起き 時々 七

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