3行日記 #156(鳩、お見舞い、三つ巴)
三月十日(日)、晴れ
啓蟄、桃始笑、ももはじめてさく、桃の花が咲き始める。
啓蟄、木筆畫空、もくひつくうにかく、モクレンの蕾が筆のように絵を画いている。
朝、テレビを見ていたら、ドキュメンタリーのなかで、私、鳩やってるんですよ、と言っていて、レース鳩、という言葉が耳に残ったのだが、あとで調べてみると、伝書鳩の帰巣本能で、目的地までの速さを競う大会があるらしい。
午前、部屋でくつろいでいると、妻からLINEがきた。ベランダ見てみて。窓を開けてのぞいてみると、遠くの地上に豆のようにちいさな、妻とチャックが見えた。
午後、おばあちゃんのお見舞いへ。面会は十五分までと決められていた。苺、ゆべし、磯じまんのりのりを渡して、共用スペースからお茶を汲んできた。新聞も買いに行こうと思ったがコンビニが休みだったので、共用の本棚を物色し、鬼平犯科帳の漫画を選んだ。おばあちゃんは漫画を初めて読むらしい。右手の指がむくんで動かしにくそうだったが、順調にいけば明日退院らしい。シャトレーゼでチョコバッキーとエクレア。酒屋さんにあった福井の梅干し。
夕方、チャックの散歩。妻がドーナツをつくるというので、チャックとふたりで散歩に行こうと外に出たが、妻がいないと勘づくと、前に進まなくなり家に猛ダッシュ。二回戻ったあと、しかたなく妻も一緒に行くことになった。北へ。あるのは知っていたが場所がわかっていなかった、昨年春にオープンした犬の店へ。看板犬も出迎えてくれた。鹿のジャーキーをおやつにいただいたが、じっくり噛んで味わうことなく一瞬で飲みこんでしまった。さらに歩いていると、いつぞやに出くわした、右目のまわりに灰色の痣のあるおばちゃんが、自転車に乗りながら話しかけてきた。前はマックから出てきたところだったが、きょうもこれから行くのだろうか。家の近くの路地で三匹の犬が遭遇した。三人そろうと、ポケモンみたいだった。一匹は十七歳になる老犬、もう一匹はうちの近くのコーギーだった。
夜、妻の実家からもらった牛肉を使って焼肉、素朴なドーナッツ。チャックの散歩はお義母さんが行ってくれた。