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【読書メモ】劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか(山口周)【#92】その1

この本は、かなり過去に読んでいたのですが、最近の弊社の凋落っぷりを見ていると読み返さなくてはいけない!と思い、再読です。

まず、著者の山口さんも書いていますが「オッサン」という言葉の定義が大切です。単なる中高年のオジサンを指しているのではなく、次の4つのような行動様式・思考様式を持った人を指しています。
1. 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2. 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3. 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
4. よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
ということです。

こういう人はたくさんいます。というか、起業家のようなバリバリやっている人たちや、優秀な一部の経営者以外の中高年なんて、ほとんどがこういう人なんじゃないでしょうか。

第1章 なぜオッサンは劣化したのか ー失われた「大きなモノガタリ」

山口さんは、現在の50代、60代の「オッサン」たちが劣化した原因は、「大きなモノガタリ」の喪失以前に社会適応してしまった「最後の世代」だと指摘しています。「大きなモノガタリ」というのは、いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせるという幻想のことです。これは、「社会のシステム」に乗っかってさえいれば、豊かで幸福な人生が送れるという幻想です。20代という、人格のOSを確立する重要な時期をそのような幻想の中で過ごしてしまった結果です。

さらに、この世代は70年代に20代だった「教養世代」と90年代以降に現れた「実学世代」の狭間でもありました。「知的真空の時代」です。教養もなく、だからといって経営学や会計などの実学も学んでいない知的に空白の世代とういことです。ストイックに読書や思索を繰り返し、教養を身に付けるよりも、何も考えずに「大きなモノガタリ」にうまく乗った方がずっと大きなお金を享受できる時代だったこともネガティブに働きました。

そして、「教養世代」が引退して、社会システムの上層部を「知的真空世代」が独占し、「実学世代」がまだその年齢に達していないという構造が現在の社会です。社会構造はそれでも良かったのですが、ここで大きな問題が起きます。それは、「システムというのは必ず劣化する」ということです。そのため、システムを批判的に考察して、改変修正をする人が必要なのですが、上層部を「オッサン」が占めてしまっているために、そのような教養やマインドセットを持った人がほとんどいない状態に陥っています。

山口さんは「アート・サイエンス・クラフトのバランス」が重要だと言います。ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出す「アート」、アートを実現化するため体系的な分析を行う「サイエンス」、以上の2つを現実化し実行するための「クラフト」です。しかし、教養(アート)を持っていた70年代に社会人になった世代は引退し、サイエンスを担う90年代に社会人になった実学世代はまだ上層部には入れておらず、結局「アート」にも「サイエンス」にも弱いオッサンたちが実権を担っているのが現状です。

第2章 劣化は必然

オッサンの劣化の理屈は分かりました。2章では、「組織のリーダーは構造的、宿命的に経時劣化する」ことが書かれています。まず、前提として重要なのが、人の能力は正規分布ではなくパレート分布しているということです。

正規分布であれば二流の人物が一番数が多くなりますが、実際の社会では三流が圧倒的に多いとうことです。そして、数がパワーとなる現代の市場や組織において、構造的に大きな権力を得るのは大量にいる三流から支持される二流だということです。

二流の人間は、三流から支持されるものの、自分のメッキが剥がれて、誰が一流なのか露呈するのを恐れます。なので、二流の人間が社会的な権力を手に入れると、一流の人間を抹殺しようとします。二流の人間は一流を恐れるので、自分よりレベルが低く、扱いやすい三流の人間を重用するようになります。

二流のリーダーが引退するとさらに酷いことが起きます。二流に媚びてきた三流のフォロワーが次のリーダーになります。そうすると、さらにレベルの低い三流のフォロワーで周辺を固めます。そういう組織はビジョンもなく、モラルは崩壊して、シニシズム(冷笑主義)とニヒリズム(虚無主義)が蔓延した組織になります。こうなると自浄作用が働かなくなるため、組織の劣化は不可逆的に進行して、世代が代わるごとに劣化が進みます。

たとえ気を付けていても必ず一定の割合で人選のエラーというのは起こります。その際に、厳しいフィルターを潜り抜けて組織に入ってくるのは三流である確率が最も高くなります。

弊社で言うと、先代がおそらく二流だったのだと思われます。それ以前の話を聞いても、かろうじて二流で繋いできた組織でしたが、先代から今の世代に移るときにエラーが起きました。その後は、周囲の二流を遠ざけて、三流で固めるプロセスを近くで見ることができて、とても勉強になっています。どんな人が上層部に集まったかというと
A氏:バレバレのカツラをかぶって周囲を固まらせている。プライドが高く絶対にミスを認めない。7年ほど前に違法なことを告発されたが、権力を手放さずにイエスマンだけで周囲を固めている。とにかくなんでも隠蔽する。経営センスはなく、先代の遺産を食い潰した後は年商が下がり続けている。批判されるのが嫌いで、反省をしないので、年々会社の状況が悪くなっていっている。仕事中に1日4回のウォーキングと、昼寝は欠かさない。昔から会社の備品を持って帰ることでも有名なので、パソコンのアプリがない時はAさんの家にあるよというのがネタになっていたことも。
B氏:お金大好き老人。定年退職年齢を徐々に上げて、役員報酬をもらい続ける。実際に人を育てたことはないけれど、十年ぶりに現れた優秀な若手は自分の愛弟子と周囲に言って憚らない。部下がデータの改竄をしていたが、管理責任を問われると困るので、これは転記ミスだと言い張って無かったことに。
C氏:自分が定年になるまでは余計な仕事は増やさないで、新しいことはしないで、と実際に部下に言ってしまう。コロナ前は、何かと理由をつけて女性社員だけ連れて飲みに行く恒例のセクハラ飲み会を主催していた。男性の部下からはスケベ親父と呼ばれている。
D氏:部下には、これからの世代のために、今の社長とは刺し違えてでも引き摺り下ろす!と言うこと十年。特に何も変わっていないし、むしろ三流の権力が盤石になっている。動いている様子もない。大きな害も無いが、1ミリも利益もない。ただいるだけ。報酬を払っている分マイナスだと思われる。
E氏:歩きタバコは禁止だけど路上喫煙は禁止されていないと言い張って、会社の前の道路で路上喫煙を続けている(敷地内は喫煙禁止)。過去に仕事をサボりすぎて2回降格になったのに、役員に欠員が出たときに優秀なイエスマンとして抜擢された。とにかく言い訳ばかりで実績もなく、成し遂げたプロジェクトもない。出社して、タバコ吸って、帰るだけ。
F氏:この人も仕事ができない。平社員だった頃に、普通の人が6か月から1年で終えるプロジェクトをサボり続けて、3年かけてようやく終わらせるという伝説を樹立した。E氏に比べたら、終わらせただけましだけれども、低レベルな争いすぎて周りをうんざりさせる。その後もただダラダラと仕事をこなしていただけなのに、定年になるタイミングで、イエスマンとして役員に抜擢された。
G氏:唯一まともな人物。外資系でかなり上まで行った人物で、役員報酬は必要ないから国内の業界を支えたいということで、微々たる報酬で仕事に取り組んでいる。最初はやる気があってさまざまな改善案を提案していたが、途中から「あいつらには何言っても変わらない・・・」と言い始めて、辞めたいけど辞めさせてもらいない状態に。安くで一票取るために重要な人物。
H氏:おそらく弊社史上最低な人物。当時の部長が脳梗塞で倒れたため、急遽部長を任命された。部長の立場を使って、横領を繰り返し、おそらく年間300万円くらいの交際費をポケットに。同行していない人との会食代や、謎の手書きの領収証や、送っているのかどうかはっきりしない商品券の領収証が大量に見つかって、かなり疑われたけれど、社長が任命責任を問われるのを恐れて最終的に無かったことに。頭が悪いので上には常に完全なイエスマンで、部下には横柄に接する。僕のような知識があって反論するような人にはとても丁寧に接する。定年後、急に役員として再登場。これからの交際費の大盤振る舞いが見ものなので楽しみな人物。

誰1人として人望がある人がいないのが残念です。もしかすると、誰からも尊敬されていないから権力にしがみつく傾向が強いのかもしれません。飲み会で、自慢話をする人や、過去の栄光を語る人が嫌われるという話をよく聞きますが、弊社のオッサンは総じて自慢話と過去の栄光話しかしません。いつも、またか〜って思うし、こちらとしては聞き苦しさしかないのですが、それに気付いていないのも特徴かもしれません。馬鹿にされていることを感じ取れないのは、弊社のオッサンだけの特徴なのでしょうか・・・

本に戻ると、2章の結論としては、「組織の自浄作用で一流のリーダーを返り咲かせることは難しい」となっています。ではどうするか。一度ガラガラポンしてリーダーシップの刷新を行う革命が大事です。その時間は約80年だそうです。

後15年くらいで100年社史を編纂し始めることになると思われるので、今が80年くらいです。山口さんに言わせると、一流が作り上げた組織が劣化してダメな組織になる、ちょうど組織をぶっ壊すには良い時期のようです。もし今後も生き延びて100年まで続くようなら、社史の中にうまく「過去を振り返る」や「未来のために過去の反省を」というような記事をガッツリ書きたいと密かに楽しみにしています。特に違法が疑われる行為は、できる限り写真や録音を集めているのも活用したいです。

長くなったので、第3章以降は次の記事で。

おわり


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クロネコ@太極拳から学ぶ会
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