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(単話)栗鼠と手袋



村に貧乏な少女がいた。
彼女は毎日森へ入ると火種になりそうな樹木の皮や小枝などを採取して、それを村の商店に持っていき、僅かな豆と交換して貰う事で生きていた。

ある冬の日、少女は木のうろで眠る一匹のリスを見つける。
リスは自分の尻尾を抱えるようにして小さく縮こまり、その毛皮には穴から拭き晒す雪が固まってまるで毛玉の様に張り付いていた。

死んでいるのではないかとも思ったが、よく見ると微かに腹が上下している。

たった一匹で冬に耐えるそのひもじい姿を自分の境遇と重ね合わせたのか、少女は履いていた手袋を寝ているリスにソッと掛けてやった。

一組しか持っていない手袋、少女はこれからの冬を片方の手袋だけで過ごさなくてはならない。それは毎日森へと火種を拾いに来る少女にとっては大変な事でもあった。

「ぼろぼろで悪いけど、何も無いよりはきっと温かいわ」

しかし、少女は満足そうな笑顔で森を後にした。

良い事をした……と。

暫くして、温かさに目が覚めたリスは巣穴から出て見える景色に絶望する。

冬眠とは生きる為の防御本能、極寒の冬を乗り越える為に必要な行為である。
しかし、少女が被せた手袋の温もりによって、リスの身体は春が近いと勘違いしてしまった。

餌も無い、極寒の冬をリスは只々耐えなければならなくなったのだ。


貴方の優しさはちゃんと届いてますか?

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