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とんちゃんってひと。

とんちゃんは、わたしの旦那さん。
とんちゃんの「とん」は、
とんかつが好きだからと
わたしのお父さん代わりだから
オトンの「とん」でとんちゃん。

とんちゃんは、わたしより10さい下で
わたしの方がうんと年上なのに
とんちゃんは悟りを拓いたお坊さんみたいなことをいう。
そうかと思うとけっこう短気で
いぬの手が顔に当たったら、
「何すんだ!このヤロー」と怒ってた。

わたしは、しっかりしているようで
そうでもなくて
いつも食べているものをこぼす。

気をつけて、気をつけて、
気をつけているのに、
この前もアイスをこぼして白いシャツに
チョコレート色のシミをつけた。
それで毎日いろいろこぼすから
毎回とんちゃんに「気をつけてね」と
言われるけれど、やっぱりこぼした。

とんちゃんはお魚をきれいに食べられる。
わたしは、お魚があまり好きではなくて
とくにお頭は苦手だから、
とんちゃんにあげてしまう。

とんちゃんは、バリバリお頭も食べる。
とんちゃんはゴーヤの苦いのは苦手だけど
お魚のハラワタは、「苦いのか旨いんだ」と
いって美味しそうに食べる。

わたしは、とんちゃんが好きすぎて
ごはんを食べている時、
とんちゃんが夢中で食べている姿を
気づかれないようにこっそり見るのが好きだ。
気づかれたら負けなような気がするから
気づかれないようにほんの数十秒間
見てないフリをして見る。

この前とんちゃんが保険に入るという。
保険は、とんちゃんが万が一
先に死んじゃっても働けないわたしが働かないでも生きていけるように毎月10万円が
支払われるのだという。

とんちゃんちは、長生きな家系で
わたしんちの家系はそこまで長生きじゃないし、年上なこととか、病気がちなこととか
考えるとわたしのほうが先に死んじゃいそうなものなんだけど、
たよれる家族がいないわたしに
とんちゃんの考えた愛のかたちらしい。

わたしはとんちゃんのシャツに
アイロンを掛けて、塩とお砂糖を
少しにする。

今年もあと少し。
とんちゃん、あのね。
来年も再来年もその十年後も
二十年後も
うーんとおじいちゃんとおばあちゃんに
なって、とんちゃんもこぼしたりするようになっても90さいくらいまで
いっしょに暮らすって決めてるんだよ。

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