2歳下の弟について語りたい
2025年春。桜前線が北上する頃、私は58歳になった。窓の外には、若葉が芽吹き、新しい生命の息吹を感じさせる。暦の上では、4月のこの時季は、どこか心がざわつく。実弟の十三回忌を迎えるのだ。
2歳下の弟との年齢差は、まるで双子のように感じられるほど近かった。同じ小学校、中学校、高等学校へと進学し、学校生活でも喜怒哀楽を分かち合ってきた。
まさか、弟が私よりも先にこの世を去るとは、夢にも思っていなかった。
2011年夏に胃がんと診断され、わずか半年の闘病の末、彼は静かに息を引き取った。
あの日、病院の白い壁を見つめながら、私は未来への希望を失いかけた。残された家族は、深い悲しみに包まれ、日常を送ることさえ困難だった。しかし、時が経つにつれ、私たちは少しずつ前へと歩み始めた。
弟のいない日々は、寂しさで満たされていた。しかし、同時に、彼の分まで生きていかなければという使命感も芽生えてきた。
弟は、大学では観光学を学び、旅行が大好きだった。特に地方の古い町並みや、歴史ある建造物をめぐるのが彼の喜びだった。彼は、私にたくさんの美しい風景や美味しい食べ物を教えてくれた。彼の代わりに、私もまた、旧くて新しい場所を訪れ、彼の分までその素晴らしさを味わいたいと思うようになった。
十三回忌を迎え、私は改めて、弟の生きた証を大切にしたいと強く思う。彼の好きな場所を訪れ、彼の言葉を心に刻みながら、新しい発見をしていく。それは、私にとっての心の慰めであり、彼とのつながりを深めるための大切な行為なのだ。
この13年間、私は、弟の死後の世界を生きてきた。それは、全く想像していなかった未来だった。しかし、その中で、私は多くのことを学び、成長することができ、積極的な転職にチャレンジすることで未来に向かって歩みを進めることができた。
弟よ、あなたと私の間に、私の心はあります。
そして、スマートフォンに残る写真を見るとき、あなたのことを誰かに語りたくなります。