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種、品種、交配、品種改良、固定種、ハイブリッド品種(F1品種・交配品種)とは何か

種(しゅ)とは何か
種の定義ついては現在、生物学の専門家でも意見が分かれている。そこで以下の文章では専門的な定義ではなく、農業に興味のある人を対象に、固定品種・交配品種・品種改良などの言葉をザックリと理解することを目的に整理する。

人類は古くから生物を虫・魚・鳥・草・苔などと名前を付けて大まかに分類してきた。その分類をより細かな特徴に注目して一定の集団に細分化した概念が”種”である。
具体的には「四本足で毛むくじゃら」という特徴を持った”獣”という大きな分類の中にも「ワンッ!・ニャー!・モー!」という鳴き声の違いがあり、それらにイヌ・ネコ・ウシと名付けることで、より細かく分けられる。しかも、この特徴は世代を越えて維持されることから、このような集団のことを種という。

品種とは何か
品種改良によって遺伝子の構成が替えられた集団のことで、同じ種に属す個体のうち
①何らかの特徴によって選抜された集団であり、
②その特徴が安定している(世代を超えて伝わる)集団であり、
③産業上、他と区別する意味のある集団である。

遺伝的に均一か雑ぱくかは問われないので、ソメイヨシノ(交雑によって作られた個体に由来するクローン)なども含まれるしF1品種も品種とみなされる。ただしF1品種から種子によって繁殖された子孫は、特徴が親と異なる(性質が安定しているとは言えない)ので”親と同じ品種”とは扱われないし、その子孫自体も品種ではない。

交配とは何か
両親の遺伝子をもった子供を得ることを目的におこなわれる有性生殖のこと。ときに、受粉や受精などの作業そものもを指している。よく似た言葉として”交雑”があるが、農業分野においては飼育・栽培者にとって予期しない異品種との交配を意味することが多い。品種改良を目的とする場合は、あえて遺伝子型の異なる両親を交配することもある。

品種改良とは何か
無自覚的に、あるいは意識的に動植物の遺伝的な特性を人間にとって望ましい形に改良すること。より魅力的な特性を持った個体が多く表れるように飼育・栽培している集団中の遺伝子の頻度を変えることである。

無自覚的にとは、例えば「多く実をつける個体と、少ししか実をつけない個体の混ざった麦の集団」があったとする。多く実をつける個体ほど集団内で確実に子孫を残せるので、世代交代を繰り返すたびに多くの実をつける遺伝子を持った麦の割合が高くなる。このように人間が意図しない形で集団内の遺伝子の構成が変わることがあるということ。意識的にとは、魅力的な個体を選び出して積極的に繁殖することで集団内の遺伝子の構成を変えようと試みることである。

固定種(固定品種)とは何か
品種改良によって作られた品種のうち、種子を使った繁殖(有性繁殖)をしても、その特徴が安定して子供に伝わる集団のことである。したがって、有性生殖をしたときに遺伝的な特性がバラけて不安定となる園芸種のバラやサツマイモ、種袋に”F1品種”と書かれているトウモロコシなどは固定種ではない。

ハイブリッド品種(F1品種・交配品種)とは何か
野生種や異なる品種を交配して作られた雑種由来の品種は、すべて広義のハイブリッド品種である。

例えば、現在栽培されているムギのほぼ全てが、古い時代に発生した野生麦の雑種が起源だと考えられているので「栽培種の麦=広義のハイブリッド品種」といえる。そのうえ、有性生殖をしても遺伝的な特性が安定しているので固定種でもある。

サツマイモ・チューリップ・サクラなどは品種改良の過程でさまざまな交配が行われているので、これも広義のハイブリッド品種である。しかし、麦と異なり有性生殖をすると親とは異なる子供が生まれることが多いので、こちらは固定種ではない。

F1品種とは狭義のハイブリット品種のことで「繁殖の度に野生種や異なる品種との交配が必要な品種」という意味である。とくに、交配した種子世代の特性が両親よりも優れる性質(雑種強勢)の利用を目的に生産される種子繁殖性品種のことである。交配品種ともいう。

「繁殖の度に野生種や異なる品種との交配が必要な品種」とはどういう意味か
トウモロコシのF1品種の繁殖を例にすると、主に次の5工程がある。
①優れた特性のある品種を交配して雑種集団を作る。
②雑種集団の中から優れた特性のある個体を選抜する。
③繁殖と選抜を何年も繰り返して、遺伝的に安定した固定種を作る。
④2つの固定種を交互に並べて育てる。
⑤母親(種子を実らせる株)にする品種の花粉が飛ぶ前に、その花を全て切り取る。
⑥父親にする品種の花粉が母親に受粉したのを確認して、父親品種を根元から刈り取る。
⑦母親品種の実から種子を収穫する。

このうち①②③は固定種を作る工程であり、④~⑦はF1品種の種子を作る工程である。「繁殖の度に野生種や異なる品種との交配が必要な品種」とは、この④~⑦の工程のことであり農家が栽培に使用するF1種子はこのようにして生産されているのです。

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