迷い込んだその先に〜本のひととき〜
「BAR追分」伊吹有喜
私の中で「伊吹有喜祭り」が開催中。
先月から「犬がいた季節」「今はちょっと、ついていないだけ」を読んでいる。
(感想記事は間に合ってません…)
読後が気持ちいい小説は繰り返し読みたくなるものだ。本書も1度目はさらっと流し読み、1週間後に再読した。
追分(おいわけ)は新宿の地名。地方都市だと思っていたので意外だった。地図で確認すると新宿伊勢丹のそばにちゃんと記載されている。「追分だんごの追分か!」と合点がいった。
きらびやかな街を少し外れると、時が止まったような懐かしい横丁が現れる。怪しげで雑多。引き返したくなるのと好奇心と半々だ。
案内人のようなしなやかな黒猫。鼻をくすぐるあたたかな匂い。視線のさき、横丁の行き止まりにあるのがBAR追分だ。昼間は食事やコーヒーを出すバール、夜はバーになる。
横丁の面々は個性豊かだ。でも迷い込んだ人を受け入れてくれる深い懐を持っている。
主役が次々に変わる短編連作集の作りだが、
BAR追分はいつもそこにある。
この台詞が力強い。
自分の気持ちがちゃんとそこにあるなら、納得して行動できるはず。決めるのも動くのも自分なのだから。
訪れる人、出ていく人。
BAR追分はその背中をそっと押し、見守っている。
続きもあるみたいなので読むつもり。