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そっとそこに〜本のひととき〜

「病と障害と、傍らにあった本。」
齋藤陽道・頭木弘樹・岩崎航・三角みづ紀・田代一倫・和島香太郎・坂口恭平・鈴木大介・與那覇潤・森まゆみ・丸山正樹・川口有美子  里山社


以前どこかで目にしていた本。
図書館で見つけて借りてきた。
「病」も「障害」も身近なテーマ。
さまざまな病や障害と向き合った12人が
自らの体験を交えつつ、渦中で手に取った本について語っている。

この中で知っていたのは聴覚障害者の齋藤陽道さんと、カフカの評論と翻訳を行っている頭木弘樹さん。詩人の三角みづ紀さんは同じ病を抱えているので本も読んだことがあった。

5つのセクションに分かれている。

本を知る
本が導く
本が読めない
本と病と暮らしと
本と、傍らに

目次より


これを見ても、本との距離感はいろいろだ。
体調や気分にもよる。

私が病気を抱えたのは22歳だった。
入院は長期にわたり、安静が必要だったから
お見舞いは本が定番だった。
(当時はスマホもなかった)

病気や障害に向き合うにはパワーが要る。
そもそも簡単に受容できない。
狭いベッドの上で悶々と不安を抱え、
現実逃避するように本を読んでいた気がする。
お見舞いの本では足りず、病棟の本棚に足を運び、めぼしい本を読み尽くすと他の病棟までこっそり出張した。
読む本のジャンルが広がったのは入院がきっかけだ。

具体的に本が何かしてくれたわけではない。
でも傍らにあった本から、私は何かを受け取っていた。
読みたい本がある。読める気力がある。
私が今生きている世界は、一部でしかない。

印象に残った箇所を紹介する。

ろう学校に入学し、手話と出会ったことが大きな転機となった。
自分の意志で選んだことばを発することができる。自分のことばが相手に伝わっている。
相手のことばも、わかる。
ことばが、循環している!

齋藤陽道

おそらく、ひとびとが考える以上に、日々は尊い。ひどく眩しい。それを気づかせてくれたのは、触れてきたあらゆる物語だ。
人生の重要な地点で、明るみを示してくれた。それぞれの本との出会いがわたしをここまで導いた。きっとこのさきも、導かれていく。

三角みづ紀

生きることに全力で集中していても必ず死は訪れる。だからこそ安心して死ぬまでただ生きればよいのだ。死ぬまで自分を大事にすればよいということなのだ。

川口有美子

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