暮らすように歩きたい〜本のひととき〜
「またいつか歩きたい町 私の町並み紀行」森まゆみ
ページをめくりながら心が踊った。
町歩きが好きだ。人通りは少なくていい。お店巡りではなく、その町の暮らしの気配を感じるのがいい。軒先の植木鉢とか町内掲示板とか。
メインの通りから猫のように、路地にスイッと迷い込むのもいい。
本書に紹介されているのは国内の古い町だ。古いけれど、さびれてはいない。住民たちが力を合わせ守っている。
すべてが昔のまま…とはいかないけれど、手を入れたり、時代に沿うようにして共存してきた。そこには町への愛情がある。
国には伝建という制度があるそうだ。
伝建(デンケン)伝統的建造物群保存地区の略。歴史ある町並みを残す制度。市区町村が指定し、文化庁に申し出る
建物単体ではなく町並み。「面」だ。
歴史や暮らしの気配を感じながら、いつまでも歩ける町があって欲しい。
失くしたら戻らない、町の記憶を残すための方法のひとつかもしれない。
12の町は以下のとおり。
増田(秋田県)
気仙沼(宮城県)
新潟(新潟県)
城端(富山県)
信濃追分(長野県)
塩屋(兵庫県)
尾道(広島県)
石見銀山(島根県)
内子(愛媛県)
八女(福岡県)
臼杵(大分県)
外海(長崎県)
私が訪れた町もいくつか登場した。
大好きな尾道。千光寺から眺めた瀬戸内の眺め。口絵写真が美しくて旅心をかき立てられた。 ひたすら歩いた坂の町。それだけで満たされたっけ。街の空気が心地良かった。
塩屋。行ったことはないけれど印象深い地名。「この場所だけは彼氏と来るなよと」歌った場所がどこなのか見てみたい。
町が生き続けるのは、そこに暮らす人々のおかげだ。大切な想いを汲みながら町歩きができる日を心待ちにしている。