初めまして、くろと申します
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、前頭斜走路について調べて、まとめたことをここに書き起こしていこうと思います。
まずは白質線維とは何かについて解説していきます
次は、何という白質線維があるのかを説明していきます。
ここから
前頭斜走路の
・接続
・機能
・障害
について軽く伝えていきます。
軽く、と言ったのは後述するためです。
前頭斜走路は、諸説ありますが
前補足運動野・補足運動野・中心前回下部を
下前頭回弁蓋部・三角部に接続する神経であることがわかります。
補足運動野は運動のプログラミング、下前頭回は言語の発話に関連していることから、障害されると言語障害などが出る可能性が考えられますね。
次は前頭斜走路の関与する機能についてです。
上記のスライドの通りたくさんありますね。
補足運動野は運動のプログラミングなので、発話のプログラミングが失敗して言葉が出てこない、出そうと思えない?(発語失行?)のような感じになるかもしれません。また、左半球は言語に特化していますが、右半球では抑制や音楽機能なども関わるのではないでしょうか。
次は、前頭斜走路の関連する疾患・障害・症状についてです。
原発性進行性失語症から小児の言語失行まで、多様にありますね。
一つ一つ説明していこうと思います。
原発性進行性失語症(PPA)について
これを見ると、単に一つの失語症ではないことが分かります。
・nfvPPA:言語理解は可能だが復唱ができない、顕著な言語失行がある
・svPPA:言語記憶、単語の意味理解が障害されている
・lvPPA:文の復唱は可能で、文法の間違いが多い
英語の図をなんとか翻訳しました
文法の間違いがあるかもしれませんが、
PPAは4種類に分類できます。
緊張する場では顕著な症状が出るようですね。
ここで、PPAに関する他の論文も参考にしてみましょう。
PPAの評価は難しそうですね。
ただやはり、前頭斜走路の変化と関連しているようです。
他には、超皮質性運動失語を振り返ってみます。
学生の頃が懐かしいです。
超皮質性運動失語は
言語理解・復唱共に良好なので、非流暢な失語となります。
次は、前頭斜走路の接続する、補足運動野、前補足運動野、下前頭回(三角部/弁蓋部)の機能について振り返ります。
まずは補足運動野です。
自発的な、行為の開始や、予期的姿勢調節(APA's)に関わるようですね。
次は補足運動野の障害についてです。
運動の開始や抑制の困難さや、無動症などの動作の開始障害に加え
強制把握などの抑制された反射の様なものが脱抑制する障害、
APA'sに関する姿勢障害にも関与しています。
また、運動を開始したい気持ちも減少する可能性があり、発話の減少もみられています。
次は前補足運動野についてです。
補足運動野と同じような機能に加え、眼球運動にも関わっていますね。
より高次な運動の調整を行っている印象があります。
次は下前頭回三角部の機能と障害についてです。
いわゆるブローカ野で、音韻認識や発語を行っています。
調べると文法処理や音韻解読にも携わっていたり、
四肢運動面の右手首の運動感覚と視覚の統合という難しい機能も担っています。
さらに他にも機能があり、言語翻訳や、構文の基礎にも関与しています。
また、パニック障害において皮質の減少が認められています。
まだまだ調べれば何か出てきそうですね。
今度は下前頭回仲間の弁蓋部さんです。
こちらは発話に関与する部分が強いですね。
また、命名がどこまでよくなるかの予測因子になるみたいです。
次は下前頭回弁蓋部の機能と障害です。
女性のインターネット使用と体積・灰白質に相関関係があるとあります。
このことは、論文をみたところ、男女ともにインターネット使用障害は灰白質の体積と負の相関がみられるとのことです。男性はインターネットをゲームに使う場合が多く障害場所が女性とは違い、女性はインターネットを主にコミュニケーションのために使うため、下前頭回弁蓋部と関連するのではないかとの報告です。
ASDで弁蓋部と社会的スケールとの関係に負の相関があることから、社会性にも必要不可欠な部位となっていますね。
次は、前頭斜走路の関連する機能について深堀していきます。
まずは前頭斜走路の側性化についてです。
左:言語機能、右:遂行機能、抑制機能 となっていますね。
tDCSによって流暢さが改善しているようですね。
tDCSとは、経頭蓋直流電気刺激法のことで頭皮上に貼り付けた電極に微弱な電流を流すことで身体や脳の機能に影響を与えるものです。
これは、効果が向上する報告、変化しない報告、低下する報告など様々です。今回は、流暢さに影響したいみたいですね。
次にFATがちゃんとあるのか、調べた解剖の研究です。
メキシコで行われました。
前補足運動野と補足運動野、弁蓋部、三角部など概ね一致していますね。
※腹側運動前野は他の神経束で詳細に調べました。(今回は忘れました。)
また、側性化はASDでもみられていますね。
ここでまたPPAがでてきました。
発語失行やPPAと関連しているようですね。
FATの損傷からみた場合、補足運動野の影響もあって発語の開始や自発性、非流暢性に関与しているようですね。
次はSMA症候群についてです。
運動のプログラミングを司るので、あらゆる運動、開始の障害が起きます。
脳腫瘍の手術等でFATを完全に切断した場合、永続的なSMA症候群を呈する場合もあるようです。ただ、有意差はありません。
FATと言語機能についてですが、数多く(この画像以上)の論文で言語流暢性に関与することがしめされています。
SLFとも言語について関わっているようですね。
SLFにも下前頭回に繋がる線維があった気がします。(後のnoteにて)
流暢性に関与するため吃音とも関連していますね。
電気刺激で錯語と発話停止を誘発することから、適切な音韻選択と発話開始に関与すると思われます。
なんとアルツハイマー病のFATのFA値が視空間認知機能と正の相関を示して、構成失行に関連しているようです。これはMMSEの最終問題の減点や手の形の模倣ができないことに関連していそうですね。
他には、USNのボクセル研究にて、視空間注意障害に影響しているようです。右のFATでしょうか。
また、前頭葉の腫瘍でFATが減少するとROCFの得点低下がみられるそうです。視空間注意→視覚記憶に影響していそうですね。
FATは遂行機能やその構成要素のワーキングメモリにも影響していますね。
また、抑制にも強く関わっているようですね。
exFATというのはより前方のFATという意味です。
ボクセル研究においてはワーキングメモリと相関しています。前の知見とも一致していますね。
なんと右が注意、流暢さに関与し、左では観察されなかったともありますね。脳腫瘍だと何か違うのかもしれませんが、n数によりそうですね。
右FATの129人の追跡により実行機能障害と関連していることも示されています。前の知見とも一致ですね。
流動性知能との間にも重要な関連性があるようです。たしかに、流暢性などに関与するので損傷で流暢に知識を出せなくなるかもしれないですね。
次は、心の理論(ToM)という機能の研究です。
心の理論というのは、サリーアン課題が有名ですね。
他人視点の行動や気持ちの推測みたいな感じです。
FATと下前頭回がこのToMに関わっているようですね。
脳卒中の損傷においても心に関するテストの低下とも関連しているので、精神機能面とも関与するかもしれません。
次は聴覚と音楽機能についてです。
言語にも関与していることから聴覚ネットワークにも関与しているようですね。
また、音楽の創造性にSMAやIFGが関与することから、連携としてFATが重要になってくる可能性がありますね。
FAT損傷は失音にも関与するようですね。
次は精神障害についてです。
他の線維も絡めながらですが、病態失認にも関連することが示されています。
また、抑うつやベックうつ検査との相関もみられ、精神障害にも関与しているようです。
FATの損傷の報告では、一過性でかつ症状がないという意見もありますが、
何らかの言語障害が生じる(文の生成、流暢性)可能性が高いですね。
一過性か長期的かに関しては、上記論文に13%が有意差はないが長期的に症状がみられているので、絶対とは言い切れないところかもしれません。
続いて損傷についてですが、SMAだけでも単語検索が困難になることがあるようです。
また、手術の1か月後でも流暢性スコアとの相関があるため、超長期的な予後はわからないにしても、数か月という単位の長期であれば障害は持続する可能性がありますね。
3つ目の論文では、様々な部位の脳病変で、視覚性注意、覚醒、抑制に有意に多くの障害が残ると述べています。
このことから、FATは一過性の場合もあれば、長期的な障害になる可能性が考えられます。さらに他の線維や部位と一緒に損傷することがあると長期化しやすいのかもしれません。
今度はセイリエンスネットワーク(Salience Network : SN)についてです。
今注目を浴びつつあるネットワークについてですね。
脳は常にネットワークとして複数同時に働いていると言われています。
この論文内では
・デフォルトモードネットワーク:安静時のネットワーク、空想や内省
・セイリエンスセットワーク:顕著な刺激に対する反応、ネットワークの切り替え
・ワーキングメモリネットワーク/実行機能ネットワーク:ワーキングメモリや多くの高次認知課題遂行に際して重要な役割を果たす
この3つが出ていますね。
中でもセイリエンスネットワークに注目していて、FATが半分程度を形成して、その役割を促進する線維である可能性を述べています。
次は吃音との関係です。
吃音患者の検査において、FATの平均拡散量(MD値)が増加し、それが流暢さと相関関係にあることが報告されています。
これは一年間治療をしても白質線維に変化を示さないことも報告されています。吃音自体は良くなるかもしれませんが、FAT等の線維には変化がないようですね。
最後はワーキングメモリについてです。
特に高齢者のFATがワーキングメモリと関連しているようですね。
高齢になると白質のFA値は下がっていくと思うので、脳全体が関わってる可能性もありますね。
いかがだったでしょうか。
今回は前頭斜走路を主役にして話してみました。
疑問点や間違いがある場合はコメントでお知らせください。
また、相談でも雑談でも構いません!
では、次はまた違う白質線維の説明でお会いしましょう!