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読書感想文 「顔のないポートレート」
借りた5冊のうちの3冊目の本。
「顔のないポートレート」
著者: ウィリアム・ベイヤー
訳者: 高橋 恭美子 (たはかし くみこ)
この本を手に取ったのは、自分の趣味である「写真」について書いてあるとタイトルから想像したからだ。
物語はまず、ポートレートを撮れなくなったある写真家が美しい被写体に出会うところから始まる。
最初は、甘く切ないラブ・ストーリーが描かれているように見える。
ところが、彼女はある日突然姿を消してしまう。
彼女が隠していたことが判明されていくに連れて物語は進む。
主人公の写真家は親友を巻き込み、事件に深く関わって行く。
正直な感想を言おう。
ミステリアスな部分は読んでいて続きを知りたくなる。
キャラクターそれぞれが持つ考えやユニークさが詰まっているのと同時に、
とても人間的で邪悪で暴力的な部分は感情的に書かれている。
死の恐怖や裏切り、嘘の連発がどれだけ人を混乱されるかが伝わる。
はっきり言って、凄く好きな部類の物語ではなかったが、写真を撮ることが誰かにとって凄く意味のあることであると言うことを実感できた。
本の中で自分が重要だと思った言葉。
「カメラというのはひとつの探知機である。われわれは自分が知っているものを撮りながら、同時に知らないものも撮っている。被写体にカメラをむけながら、わたしはいつも問いかけている。ときには写真が答えになることもあり、そこからわたしは教訓を得る。」
リゼット・モデル
「わたしは写真を手にして眺めながら立っていた。わたしの見たかぎりではなんの意味もない写真だった。なにか意味があるはずだった。なぜ意味があるのかはわからなかった。だが、わたしはずっと写真を見つづけていた。そして、しばらくしてから、小さなことが間違っているのに気がついた。きわめて小さなことだが、決定的なことだった。」
レイモンド・チャンドラー「高い窓」
「写真がうまく撮れないのは観察が足りないからである。撮影者は被写体の一部でなければならない。」
ロバート・キャパ
「写真によって罪を暴き、有罪を宣告する・・・・・・
それは写真家の仕事だろうか。」
ヴァルター・ベンジャミン
「ほかの写真と同様、その写真を見てもキムのことは何もわからない。なにひとつ。わかるのはジェフリー・バーネットという人間のことだけだ。彼が自分も非常な男になれることを知った瞬間がそこにあった。
それはどんな写真についても言えることではないか。わたしはそう思いはじめている。たしかに写真を見れば被写体についていろいろなことがわかる。けれども、もっとよく観察すれば、そしてそれが自分の撮った写真であれば、そこから自分自身についても多くのことがわかるだろう。」
「写真をものにする方法はふたつしかない。イメージに合うものを求めて世界中を旅するか、自分でそれをつくるか。」
ジェフリー・バーネット