道徳なんて犬に食わせろ。

僕は教員を目指していたんだけれど、
能力・評価教育に対して反抗的意識があって、
知識を詰め込む現行の教育に疑問があった。

僕が勉強が苦手になって、成績が落ちて、
そんなにいい大学に行けなかった反動として、
そう思うのかもと反省することも多々あった。
(母校は私学の中高一貫で、僕は特待生だった)

しかし、教育実習で母校に行きわかったのは、
少なくとも僕の感じたことは間違ってなくて、
私学の教員はサラリーマンで、生徒を人よりも
成績と自身の成果(評価対象)として見ている。
(もちろんそんな人間だけでは無いけれど)

ここでは受験教育に特化した教員でなければ、
社会人も経験せずに教えられることなどない。
僕はそう思ってまずは就職する事にした。

教育実習では、僕は全く偉そうに振る舞って、
中高時代の(当人にとっては)深刻な無力感を、
大人になればいい思い出になると慰める、
僕が1番嫌いな人間になっていたと反省した。
僕は昔の僕が欲した教員になりたかった。

僕はやっぱり阿呆(若干ADHD的?)なので、
「御社が第1志望です」というセリフを、
1社にしか言えねえなぁと思ったので、
面白そうな1社だけに言うことにした。
だから、本当に1社だけ受けて、採用された。
(このバカ正直さは世渡り的に賢くないよなぁ)

ただその結果として1年で休職しているわけで、
結局、社会なんてのは学校教育の延長だった。
社会というか会社組織という方が正しいかも。

僕の上司は団塊ジュニアと、ロスジェネ世代の
2人だったけれど、どちらも悪い人ではない。
ただ、どちらとも考えが合わなかった。

会社は資本を投下して価値を増やす組織だ。
それは重々承知の上だが、ただ増やせばいい
わけじゃないし、客が金を払えばそれでいいのかと言うのも根本的に僕には疑問だった。

ただロスジェネ上司は「すぐに出る利益」と「自分の評価」の為に、他者を平気で使い潰すことができて、自分の稼ぎと子供の為ならば、どこまでも狡猾になれる種類の人間だった。

人によって舐めたり食ったような態度を取り、
また担いだり調子よく振る舞うことができた。
(あと新人教育に興味がなく、自分が教えたことで新人が責められた時は知らん振りをする。)

別にそれは生物として1つも間違っていなくて、
「勝ち組」「負け組」とか「負け犬」みたいな
そんな言葉が似合うザ競争社会の大人だった。
小粋な冗談のつもりか、よく人をバカにするがロスジェネ世代はそれで生き抜いてきたのだ。だから彼らは彼らで正しく生きている。

団塊ジュニア上司は、快活で上昇思考だった。
能天気とも取れるが、昭和型の考えを拭い、
新しい考えや流行を採り入れようとしていた。

けれども根はやっぱり昭和型で、飲み会の幹事だとか接待だとか、熱血や滑稽が好きだった。
彼らにとって、「新しい考え」は「トレンド」でしかなくて、資本主義ではみんな幸せだ。

その団塊ジュニアとロスジェネは相性がいい。
ロスジェネはチャラチャラと上手く立ち回ることができるから、団塊ジュニアはとても気持ちよく仕事ができるし、結果もついてくる。
その下にいるのはたまったものではないが。

(僕は絲山秋子の小説を好んで読むが、
「御社のチャラ男」はまさにこんな話だ。)

僕もなんだかんだ真面目だから、自分なりに
頑張って食い付いて行こうとしたが、(甘い採点の可能性を断っておく)人を人でないように扱ったり、直近の利益を先行させて後々に明らかな無茶な労働や負債を回したり、すぐに改善すべき在庫管理を今期の数字に影響させないために見て見ぬふりをする事に耐えられなかった。

そもそもこの高度資本主義経済に、未来はあるのかとか、子供のことを考えるなら、稼ぐのもいいが根本的に考えることがあるだろうとか、そういう事を考える僕は異質でしか無かった。
道徳や倫理では競争社会で飯は食えないのだ。

そんなこんなで休職し色々と考える日々だが、
この3ヶ月ほどは会社のおかげで生きている。
全くありがたく虫のいい話だと思う。

食事をする気力も用意する意欲も湧かず、
死にそうになると実家に帰るのだが、
そうすると建築業界で働く団塊ジュニア上司、
もとい僕の父親が、食べたい物を聞いてくる。 
(親父は無愛想で母との関係も冷めていて、寂しい様子であくせく働き、僕が帰ると少し喜ぶ。)

僕は、反発していた親父が大きなビルを建てて稼いだお金で、普段は食わない良い肉を食い、
若干失調気味の栄養を蓄えさせて頂くのだ。
(その代わりとして父親のご機嫌をとる。)

「野火」とか「ひかりごけ」の事を考えて、
道徳なんて犬に食わせろ。と思いながら。

利己的でいられるのもある種の才能だなぁ。

僕は宮沢賢治のようになりたいのだろうか。
牧師とか僧侶のほうが向いているのかなぁ。
兎に角まだ復職の見たては立てれそうにない。




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