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120年の歴史を刻む造り酒屋を、現代の暮らしに蘇らせる[古民家リノベーション]

書き手:矢野 陽子(クラス 代表)
今回の記事は古民家リノベーションがテーマ。私の視点で、改修のウラガワをお届けします📝

造り酒屋を営んでいた、築120年の古民家をリノベーションしました。

建物は、商いの場所であった表土間と、家族の生活スペースが通り土間でつながる伝統的な町家建築です。

家族の想いを紡ぐ、古民家再生プロジェクト

まずは、どんな風にリノベーションしたかをご紹介しましょう。

広い土間。美しい建具。梁や柱などの木組みや天井は古材をそのまま活用し、往時の佇まいを再現しています。

美しい日本庭園を臨む縁側は、老朽化の進んでいた床を無垢材「あずみの松」に張り替えるとともに、窓ガラスをペアガラスに入れ替えるなど断熱施工を実施。床下にも断熱材を入れました。

キッチンや水まわりは使い勝手を優先し大幅に変更。ステンレスのL字造作キッチンにタイルのあしらい、タモ無垢材の造作カウンターなど異素材を巧みに組み合わせて、ほかにはないオリジナルの空間に仕上げました。
既製品にはない、オーダーメイドならではのお気に入り空間です。

キッチンの隣の和室は現代の暮らしに合わせてフローリングに張り替え、LDKを構成。洗面台や浴室も木材をふんだんに取り入れ、和モダンな趣を感じる空間へとアップデートしました。

この素敵な古民家は、私の同級生のお母さんの実家。築120年という長い歴史を持つ造り酒屋で、かつては地域の人々の暮らしを支えてきた大切な場所でした。

しかし、年月の経過とともに建物は傾き、老朽化も進んでいたため、解体するか、建て替えるかという選択肢が検討されていたんです。

でも同級生とそのお母さんは、「この価値ある建物を残したい」という強い想いがあり、「どうしようか」と相談を受けたのが数年前。

周りの人からは「お金もかかるし、解体して管理のしやすい小さな建物にしたら」とか「更地にしたほうがいい」という意見もあり、周囲の大工さんや設計士さんに相談するも「古民家を直すってすごく大変なこと」で「費用もかかるだろうし」と言われ、頭を抱えていたようです。

その話に「なるほどなるほど」って言って、「とりあえず、調べてみようか」っていうのが、始まりでした。

古民家リノベーションに必要な耐震補強って?

実際に調べてみたところ、やっぱり建物が道側に傾いているんです。なにせ120年も建っている建物なので、地盤の問題もあるでしょうし、面している通りでは大きなトラックが通ったりと振動も結構すごい。長い時間をかけて少しずつ傾いてきていたんです。

それと、やっぱり古い建物なので地震対策も心配。かといって、合板をバンバン貼って直すということはしたくない。

単に古い家を新築のように蘇らせるのではなく、長年培われてきた日本の伝統技術を活かし、現代の暮らしに合った空間を提案する

そんな古民家リノベーションをするために、まずは、伝統工法に強い構造設計士の先生による調査を実施し、建物の状態を詳細に確認しました。

建物に使われている部材や組み上げ方を全て一つ一つ点検。構造がどうなっているか、どの程度劣化しているかなど、状態をチェックします。

その結果、120年という歴史を感じさせないほど良好な状態であることが判明。

耐震性能も耐震等級1相当で、適切な補強によって安全な住空間を実現できることが確認できました。

伝統工法で建てられた古民家の「耐震の考え方」はいろいろありますが、現代の基準に当てはめてしまうと、ほとんど満たすことはできません。なぜなら当時の建て方と現代の基準では、考え方のベースが違うから。

ただ、今回のように伝統工法でも適切な調査をすれば、十分、安心して住み続けられるための判断材料が得られます。

緩めて引っ張って、元の姿に復元

ではいざ、どうやって傾きを直そうかということになるわけですが、今回のケースでは、伝統的な曳家技術を応用した方法を採用しました。

曳家というのは、建物を解体せずにそのまま移動させる技術のこと。
足場を立てて引っ張るだけじゃなくって、家の傾きを直したりもできる技術です。

ただ現代において曳家をするのは、多くの場合、文化財や公共事業。つまり、莫大な費用がかかるんです。

そこで今回はその引っ張る技術を応用し、伝統工法に強い仲間の大工さんの力を借りて着工しました。

伝統工法で建てられた古民家は、木の柱の間に竹で小舞を編み、そこに土壁をつけて、表面に漆喰を塗っているケースが主です。つまり、土さえとってしまえば、動かすことができます。

作業中の壁の左側は、四隅だけ土を落として、再度仕上げをしたことが分かる

ただ、土壁の土って、半年ぐらい発酵させたりしないといけない。土作りにも費用も時間もかかる。

なので、柱や床に隣接している壁の四隅だけ土を落として、若干、柱や梁などの構造が動く状態に。
そこにいろんな調整をかけながら引っ張って、正しい位置で固定して、ある程度の時間が経ってから土で固めて、という具合に慎重に傾きを解消していきました。

平行を確認しながらワイヤーで引っ張り、慎重に傾きを解消

同時に屋根も修繕。重厚な本瓦葺の屋根は、軽量な瓦に葺き替え、下地板も修繕することで、建物の負担を軽減しました。

こうして無事に、傾きの修正を実現できました。

古民家を「売りたい、買いたい、住み続けたい」人が相談できる場所

実は今、このお家はクラスでお借りして、モデルハウスとして活用しています。

同級生の彼女もそうでしたが、私達の年代はちょうど家を引き継いだり相続したり、あらゆる問題に直面する世代。

ゆくゆく自分たちが受け継がないといけないものがあるという人はもちろん、自分たちには必要ないけど、大切に住んでくれる人に古民家を売りたいという人。そして、古民家に住んでみたいという人。

そんな人たちが、ちょっと相談に来られる場所になればいいなという思いで、モデルハウスを運営しています。

「この良い建物を、良さをそのままに残したい」

クラスではその思いをしっかりと叶えるために、安心して住める、快適に暮らせる家づくりを提案しています。

ぜひ一度、モデルハウスにご来場いただき、古民家リノベーションの可能性を体感してください。

▼モデルハウスにお越しください🏠

▼KURASUについて


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