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海士町の伝統食。こじょうゆ糀を仕込む。こじょうゆ味噌が出来るまで I 海士町#3

こじょうゆ味噌は
醤油と味噌の二つの味を合わせ持つ、海士に伝わる代表的な郷土食。隠岐には醤油蔵がなく、本土との交流がない時代から各家庭で作られてきた万能調味料

私が来島してすぐ。
近所のおじいちゃんがこじょうゆ味噌ときゅうりを持って来てくれた。
「きゅうりに付けて食べてみなさい。」
小麦感の残るざらざらとした舌触り、強い塩味が印象的だった。

ナスとピーマンの炒め物に入れたり、焼きなすに塗ったり、ごはんにこじょうゆ味噌を乗せて朝ごはんにしたり。焼おにぎりに塗っても美味しいんだそう。

ただ、こじょうゆ味噌の原料である「こじょうゆ糀(ばな)」を作れる人が減ったため、伝統が存続の危機に瀕しているそうだ。
こじょうゆ糀の製造は、一昨年はJAが、去年は海士物産が担当したが、採算が合わず継続できなかった。

ここで立ち上がったのが、今でも家庭で「糀」を作り続けているという上田さんと、色々なことに積極的で楽しく暖かく迎え入れてくれる扇谷さん。こじょうゆ組合いを作って、どうにか継承していこうとしているという。
そんなお二人に迎えられて、私たち島体験生・島留学生4人が、こじょうゆ糀づくりのお手伝いに行きました。


こじょうゆ味噌とは

小麦、大豆、米、塩といった醤油や味噌とほぼ同じ材料を使用し、通常ならすり潰してしまう大豆や小麦の食感をそのまま残した、醤油と味噌の中間のような発酵食品

お盆を過ぎて暑さの落ち着くような時期になると、商店に売られる「こじょうゆ糀(こじょうゆばな)」を購入し、各家庭で調味料を加えて仕込むのが一般的です。

水飴を多く入れる甘めの家庭や、酒を多く入れる家庭、水飴を入れずに塩辛く仕上げる家庭など、各家庭ごとの味が代々受け継がれているそうです。
ちなみに、近所のおじいちゃんはこじょうゆ味噌をシェアハウスに持ってきてくれますが、そのレシピは秘伝だそう!笑

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いざ、こじょうゆ糀を作る① 「蒸す」

まずは、小麦と米を木箱に詰め、それを蒸し器で蒸す作業

扇谷さんと上田さんで、材料の分量を事前に測っておいてくださいました。
まず小麦を入れて、その上に米(普通米ともち米のMIX)を入れて、写真のように布をかぶせて準備完了。

私的には、蒸す作業がほんとに大変でした。
部屋の中は外よりも蒸し暑く、結構な時間を必要とします。
しかも、手間がかかるんです。

これが蒸し器。

この写真のように4段の木箱を重ねるんですが、一番下(蒸気が当たりやすい部分)のもので蒸し時間は1時間ほど。それが出来上がったら、上から順番に別の場所に下ろし、一番下を取り出す。そうしたら、また積み重ねていき、先ほど下から二番目にあったものが一番下に来るようにする。
いわゆる観覧車方式です。(伝わってますか?笑)

合計16箱あったので、ひたすらその繰り返し。

そして何より、この木箱を積み下ろしする時に、下から出ている強力蒸気が手や腕に直撃しないように瞬息で行います。木箱は小麦と米がぎっしりでとても重いので2人で連携プレーも大切です。
私のシェアメイトで、毎日ふすまを挟んで隣の部屋で寝ているまっちゃんとやった時は、日頃のチームワークがばちばちに活かされてました。笑

私はこれをやっている途中で火傷しました(とほほ…。)
それまで通りのやり方でやっていただけなのに、蒸気にあたる時間がほんの少し長かったから。緊張する作業でした。

心と体に染みまくる美味しい休憩

作業が半分くらい進んだところで…。
扇谷さんが用意してきてくださった「まき」と「きゅうりwithこじょう味噌」をいただきました。「まき」は、まきの粉をつかって作った、甘くて美味しいあんこが入った団子。こっちでは有名らしい。

蒸し器で、こじょうゆ味噌の材料を蒸すのと一緒に蒸しておいた、出来立て熱々の「まき」

いざ、こじょうゆ糀を作る② 「全て入れて混ぜる」

蒸したものは、一度外へ出て反対側の建物まで運びます。
そこを歩く時が一種のクールダウン。蒸す場所が暑すぎるので外気ですら涼しく感じました。8月第2週目だというのに。

蒸し器から上がったばかりの小麦&米を、しゃもじでかき混ぜながら冷まします。
ある程度冷めたら、そこにひきわり大豆を入れて混ぜます。

大豆は前日に炒っておいてくださいました。

そうしたら、ここがポイント。写真にある種麹菌(中身は青大豆きな粉のような黄緑色の粉)を混ぜます。

これが糀の元となる菌🦠
すべての材料が加わったところで、全部が均等になるまで、また混ぜます。

そしてそれを、バットに分けて薄く並べて機械に格納。使った機械は育苗機といって、一定の温度に保ちながら苗を作るための機械です。
70枚くらいあったような。ひたすら同じ作業なので、仲間の存在と根気が必要でした。

これで完成。30度にして一晩寝かせます。

いざ、こじょうゆ糀を作る③ 「そして翌日」

次の集合は翌日の9:00。1枚ずつ出して、手でかき混ぜて、また格納することの繰り返し。
なんとなんと…。菌が活発になり、糀が発酵したため、この小麦&米&大豆たちが、動いていました…!この感動伝われ〜!

これ、動いてたんです!

こじょうゆ糀の完成!こじょうゆ味噌を仕込む!

よく見ると、薄緑色のもしゃもしゃがまとわりついている状態。きれいに菌が付いて、こじょうゆ糀が完成しました。1日でこんなにまとわりつくなんて、菌の力すごいなあ。

完成したこじょうゆ糀。最初よりパサパサしている。

私のシェアハウスでは、この後、いつもよくしてくれる近所のおじいちゃんに教わりながら、こじょうゆ味噌を仕込みました。

いつも通りのわいわいがやがや。教わったり指摘されたり!笑

材料はこんな感じ。

1日1回混ぜることを繰り返して、15日間ほど。徐々に茶色くなり湿り気が出てきたような。味も、しょっぱさからまろやかさへと変化。小麦の舌触りも幾分やわらかくなりました。

これは初期の頃。
これは後半戦。

おわりに

こじょうゆ味噌が完成しましたー!
私のシェアハウスでも15日くらい経った頃から食べ始めています。
王道のきゅうり味噌はもちろん、焼きおにぎりもしたいなあ。ハヤシライスも美味しいって聞いたし…。まだまだ夢は膨らみます。

工程はそれほど難しくないけれど、出荷がゴールだったので、どうしても量が多くなる。そんな時は、多くの人の手を借りながら、わいわいも兼ねてやるのが一番ですね。みんなでやったからあっという間でした。

ちなみに近所のおじいちゃんは、JAでこじょうゆ糀を買って、本土に住んでいる友人や親戚に送るそう。私たちが作ったものがJAに並んでいるということが感慨深かった…!

伝統的な文化は、誰かがやらなければ廃れていってしまう。海士町にしかないこの文化を、こうやって引き継ぎたいと思う人がいて、実際にいまだに愛される文化であることが素敵だなと思います。私が何年後かに戻ってきたときにも、こじょうゆ味噌は健全でありますように。

扇谷さんや上田さんと出会うこともでき、嬉しかったです。
とても貴重な経験をさせてくださり、ありがとうございました。

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